すごいぜっ!為朝さん!その三 | ひげブログ

ひげブログ

へっぽこ三線奏者、ひげまるの特にテーマ性の無いブログ

みんな聞いてくれぇぇぇぇぇっ!

今回の定期健康診断で、遂に、つ・い・にっ!

メタボ予備軍の汚名から脱却したぞぉぉぉっ!

一昨年、昨年と、

「あなたはメタボリックシンドローム予備群に該当します」

などと言う宣告を受けていたのだが、今回は、

「あなたはメタボリックシンドロームに該当しません

いやもうね、墨痕も鮮やかにこう明記されていたですよ!

データを見ると、中性脂肪の数値が劇的に改善されているわけですよ!

毎日黒烏龍茶を呑み続けた甲斐がありました(本当)!

脂肪に、どーーーーーん!!

…。


さて、前回、前々回と鎮西八郎源為朝について、彼が何者であるかと

言うことに触れてまいりましたが、そもそも為朝について書いたのは、

彼が沖縄と密接な関係があるからと言うことだったわけで、これから

いよいよ本題に入ろうというわけです。


$ひげブログ-舜天

舜天と言う人物がいます。

「中山世鑑」「中山世譜」と言った沖縄の正史に位置付けられている

書物に、"初代琉球国王"として記録されている人物です。

琉球国王、正しくは琉球国中山王と言う称号は、明に朝貢してその冊封を

受けた武寧が最初であり、沖縄を統一したのは尚巴志が最初なので、

舜天が初代国王と言うのは、いささか強引なのですが、未だ統一されて

いない時分の地方の支配者のことを"按司(あじ=主あるじの意)"と言いま

してね、舜天は浦添の按司だったわけです。


$ひげブログ-源為朝15

そしてなんとこの舜天の父親と言うのが、誰あろう、源為朝だというの

です!


保元の乱に敗北し、伊豆大島に配流が決まった為朝が途中暴風雨に会い、

沖縄に漂着し、土地の豪族大里按司の妹に入り婿して生まれた子供が舜天

だというわけです。

舜天は15歳で浦添按司の座に就き、琉球開闢以来中山王の地位にあった

天孫氏に謀反してその座を奪った利勇を討ち滅ぼし、22歳で諸侯の推挙を

得て中山王の座に就いたというんですね。


$ひげブログ-源為朝16

いやもうこの時点でいろいろと突っ込みどころ満載なんですけどね、

舜天の父親である為朝さんはどうしちゃったのかって言いますとね、

舜天が生まれると、オラの役目は終わったとばかりにとっとと大和に

帰っちゃってるんですよ。

しかも流刑地である伊豆大島に今度はちゃんと到着しましたぜという

具合で、後は前回語りましたように、伊豆諸島で大暴れして討伐を

受けてその一生に幕を閉じたというわけなんですけどね…。


おかしいじゃないですか?

あのすごい為朝さんらしからぬ行動ですよこれは。

考えても見てください。少年の頃、素行不良をとがめられて九州に

追いやられた時、彼は九州で大暴れしてその大半を支配下に置いたん

ですよ。

伊豆大島でもそうです。伊豆七島を征服したじゃありませんか。

なのに沖縄ではなぜ、それこそ自らが琉球の支配者たるべく立ち上がら

なかったんでしょうか?

九州でも、伊豆大島でも為朝は土地の豪族に婿入りして、その豪族の

武力を原資に暴れたわけです。

沖縄でも大里按司に婿入りしたのですから、流れとしては

「今日からこの俺様が琉球の主である」

と言って島尻、中頭、やんばるをたちまちその支配下に置くべきで

しょう。

なのに種馬としての役割だけで大和に帰されてしまうなんて…。

らしくないぜ、為朝さん!



$ひげブログ-左御紋

…とまぁお判りのように為朝さんは本当は沖縄になんか行っちゃ

いないんです。

琉球の御主、第二尚氏がちょっと為朝さんの名前を借りただけなん

ですね。

なぜなら尚氏は清和源氏を名乗りたかったからなんです。

第二尚氏は舜天の子孫と称していたので、舜天に源氏の血を入れた

かったんですね。


尚氏の家紋、沖縄では"左御紋(ふぃじゃいぐむん)"と呼ばれている

左三つ巴紋は八幡宮の神紋です。八幡宮は日本で一番多い神社です

から、皆さんの家の近所にも八幡宮はあるでしょう。

今度お祭りの季節に確認してください。提灯に必ずこの左三つ巴紋

が描かれているはずです。

そして八幡宮と言えば源氏の氏神です。


さらに手の込んだことに1690年以降、尚氏に連なる一門の男子は

すべて名前に"朝"の一文字を付けることにしています。

為朝の"朝"を受け継いでいると言いたいわけですよ。

平敷屋朝敏玉城朝薫宜湾朝保、みんな名乗りに"朝"が付くわけで

すが、系図座っていう役所が出来ましてね、そこで寄って集って、

ずっと過去に遡って尚一族のご先祖様、一人残らず名前を変えて

しまうというワイルドなことまでしているんですよ!

"羽地仕置"で薩摩に支配された琉球の立て直しに尽力した羽地朝秀

なんかは、生前の名乗りは"重家"だったのに、死んでから勝手に

朝秀に改名させられて、現在では完全に、完膚なきまでに羽地朝秀

ですから、もう徹底していますよ!


$ひげブログ-平氏2

なぜ、尚氏は清和源氏になりたかったんでしょうかね?

そりゃ大和中央の高貴な血筋としたいのはわかりますが、平氏じゃ

ダメなんですかね?

"南走平家"と言う言葉があるくらいで、平氏の落人伝説は、沖縄本島は

おろか宮古、八重山にまであるんですから、尚氏の血筋は平氏の公達が

逃れて沖縄に来たものであると言った方が、なにも伊豆大島に流罪と

なった為朝さんの行動スケジュールを曲げて、沖縄まで子づくりに

来てもらうよりずっと合理的
じゃないですか。


$ひげブログ-平氏1

それに平氏には為朝さんよりももっと恰好な人物が一人いるんですよ。

平維盛(たいらのこれもり)。

彼は平氏一門の中でもちょっと他のメンバーとは事情がありましてね、

屋島の合戦後、彼だけ一行から離脱して単独行動をとるんですけどね、

「玉葉」と言う書物に

「屋島から維盛卿が三十艘ほどを率いて南海へ去ったらしい…」

と書かれてあるんです。

どうですか?平維盛の方が筋道が立つじゃないですか?


…でも平維盛だと実はちょっと苦しいんですね。

まず平維盛は諸説あるものの、熊野で入水自殺したことになっています。

そして維盛が平家軍から離脱したのは1184年、平氏が壇ノ浦で滅ん

だのが翌1185年ですが、舜天の生年は1166年、諸侯の推挙を

受けて「中山王」になったのが1187年ですから、舜天の父親を

平維盛とするのは、無理があるわけです。


ただし、平維盛は舜天より5歳年長ですが、そのくらいの年齢差だっ

たら、舜天=平維盛、なんていう説を唱えるのもありかもれません。

30艘の船団って言えば結構な軍事力ですから、運天から上陸して、

本部を制圧し、そこを拠点に各地の按司たちをまとめていくなんて

いうことも考えられます。

やっぱり為朝さんよりも平氏でしょう!

$ひげブログ-蓮舫

平氏じゃダメなんですか?


$ひげブログ-琉球行列

尚氏が平氏でなく、源氏を選択したのには当然ながらワケがあるんですよ。

それは島津家です。

琉球を制圧し、真の支配者となった島津氏は、その初代、

惟宗忠久(これむねただひさ)が源頼朝の御落胤であるとして

清和源氏を称しています。

加えて源氏の長者は徳川家なわけです。

日本の支配者である徳川家、琉球の支配者である島津家と、わが尚家は

同じ門中ですよと言う、薩摩支配下で"琉球国"として生き抜いていかな

くてはならない苦肉の策
だったんじゃないでしょうかねぇ。

平氏じゃだめなんです。


$ひげブログ-小笠原海流

…で、なんで源氏は源氏でも為朝さんなのかってことですよ。

一つには、源氏っていうのは東国つながりの人がほとんどで、西国に

縁があるのが為朝さんくらいしかいないと言うのもあるでしょう。

しかし為朝の名前は意外と沖縄では古くから著名であったのではない

だろうか
と言う説もあるわけです。


この絵はウナギがどこで産卵して、どうやって日本に来ているのかを

解説した図なんですが、伊豆諸島からマリアナに向かって小笠原海流

と言う潮の流れがありまして、これが北赤道海流に替わってフィリピン

東海上を北上し、黒潮に乗っていけばその先に沖縄があるというのが

わかると思います。

伊豆諸島の人間はこの海流に乗って頻繁に沖縄に行っていたのではない

と言うことなんですね。

そして地元の人々に話をしたわけですよ。


「源為朝っていう源氏の御曹司が大島に配流されてきたんだけども、

いやー、強いのなんのって、あっという間にオラたちの親分になっちゃっ

てさ、そりゃもう大暴れよ!

結局追討されちまったけど、弓の腕が凄くてなぁ、たった一本で船一艘

沈めちまったんだぞ!

でも気前が良くって、いいやつだったんだよ…。」



アキサミヨー!

それを聞いた沖縄の人々、大和には源為朝と言う凄い男がいる、いや、

凄い男と言えば源為朝だ!

口々に噂し合って、大和と言えば源為朝!くらいスタンダードになって

しまっていたのかもしれません。

そしてそれがいつしか、

「為朝さんは沖縄に来たことあるらしい」

「実は浦添の大按司様のスー(親父)は為朝さんだって言うぞっ!」

「ダカラヨー!」



そんなわけで源為朝は琉球の御主のご先祖として今でも沖縄では特別の

存在になっているわけです。


ウナギのかば焼きを食べる時には為朝さんのことを思い出してください。

そして小さい声でそっと独り言してください。

「すごいぜっ!為朝さん!」


ぢゃっ、そーゆーことでっ!(・ω・)/