「石井×三垣」「木村×洋介山」「野中×新井」を振り返る… | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

昨晩は貯まりに貯まった「タイトルマッチ」の録画をまとめて真夜中に観ました(流し見はしていたのですが)…


日本ライト級タイトルマッチ


チャンピオンの石井一太郎選手が挑戦者同級3位の三垣選手に9R開始直後にタオル投入によるTKO負けとなり、王座陥落したわけですが、前のRのダウンシーンは実に衝撃的でありました…


三垣選手はアマチュア経験も豊富で、そのボクシングはワンツーの綺麗な正統派でありました… さらに、そのテクニックは離れて良し、接近して良し…であり、言うなれば「無駄のない」ボクシング、という印象が僕にはありました…


チャンピオンの石井選手、僕には決して悪くは見えなかった…が、空転が目立ち、強気に強打を打ち込むも、しかし、距離で破れ、打ち合いでも破れてしまった…


しかし、石井選手が日本ライト級において、なくてはならない存在であり、チャンピオンになってからの急激な進化は他の追随を許さぬレベルに達していることも事実であります…


石井選手には是非復帰していただき、もっともっと凄いKOシーンを見せていただきたい… 


そして、新チャンピオンとなった三垣選手、本当に強かった… あのパワフル強打の石井選手を全く恐れることなく真っ向勝負を果たし、これに打ち勝って手に入れたチャンピオンベルトの価値は相当に重い… どんどん防衛していただきたい、と思いますね… 


日本スーパーライト級タイトルマッチ


こちらも衝撃の「番狂わせ」となった… 


チャンピオンの木村勇登選手はこのタイトルを連続13度防衛中の「チャンピオンの中のチャンピオン」… その変則サウスポーを武器にその防衛の殆どをKOで成し遂げていて、昨年はWBA世界王座にも挑戦、残念ながら判定負けを喫したものの、そのモチベーションは衰えることを知らず、このタイトルをKO防衛して再起を果たしている…


これに挑んだのが「2代目洋介山」… 同級1位の小野寺洋介山選手でありました… 小野寺選手と言えば、その手数と前進が最大の武器であるいわゆるラッシャーファイタータイプ… 技術とか、テクニックとか、一発で相手を倒す強打とか、なんだかそういうものとは掛け離れた印象があるが、しかし、打ち始めたら止まらないそのボクシングは相手を窒息させてしまうほどの強烈を秘めていますねぇ…


試合開始直後、この両者がグローブを交えた瞬間から、何か、「異変」が感じられたような気がしますね…


勇猛果敢に強打のサウスポーに襲い掛かった洋介山選手、距離を潰して木村選手を後退させ、クリーンヒットを量産… 2Rには連打から大きな右を木村選手に打ち込み、これに膝を揺らした木村選手をさらに追い込むとコーナーに詰めて連打爆発!! 木村選手、堪らずなりふり構わずクリンチに逃げるも、これをレフェリーが割いてダウンを宣告… テレビ解説に拠れば、これは11年ぶりのダウンであり、前のダウンは日本ライト級タイトルマッチで、あのリック吉村さんから喫したものだと言う…


試合は消耗戦の様相を呈して行くも、洋介山選手のラッシングとコンビネーションが有効ポイントを奪ってゆく… これに対して木村選手は強烈なボディーブローを打ち込み続けるも、しかし、打たれたらすぐに打ち返す洋介山選手の気迫にジリジリ…と後退してしまう…


国内無敵…と多くのボクシングファンが評価した木村選手の「間合い」が壊され、距離を潰し、身体を振り続け、そして、息が詰まるほどパンチを放ち続けた洋介山選手がこの名チャンピオンをその座から引き摺り下ろしたわけですが、その判定採点は「大差」であった…


ベルトを巻いた新チャンピオンはその勝利者インタビューでこう答えた…


「僕はチャンピオンの中で一番弱いチャンピオンだから、もっともっと強くなれるよう頑張ります…」


そして、観客・支援者に向かって幾度も幾度も頭を下げた…


「木村選手は強かった… 何度も心を折られそうになった、でも、皆さんの声援が聞こえたから頑張り続けることができた…」


なんという清々しさであろうか…? そのラッシャーとしてのファイトスタイルからは想像も出来ないこの朴訥…


最高だ…


さて、前チャンピオンとなってしまった木村選手でありますが、自分を破った新チャンピオンの肩を抱いて、そのガッツと強さを笑顔で讃えたわけですが、こちらも最高であった… 木村選手、最後まで倒しにかかった… それは自分のボクシングを壊してまで、強引に打ち合いに出たように見えた… 過去最高のファイト、に僕には見えた… これほど「必死」な木村選手を見たのは初めてであったような気がする… その進退はまだわかりませんが、是非、再び後楽園ホールでその勇姿を見せていただきたい…と感じました。


日本スーパーウェルター級タイトルマッチ


チャンピオンの野中悠樹選手はサウスポーのスピーディーなボクサータイプ… 王座決定戦をKOで制して戴冠、初防衛も成功させ、これが2度目の防衛戦となる…


これに挑むは同級1位の新井恵一選手… 前の戦いはあの川崎タツキ選手でこれをKOで退けて1位の座に躍り出た三十路ボクサー… 右構えのボクサーファイター…


その立ち上がり、鋭いジャブワンツーが武器の野中選手に対し、距離を保ってその打ち終わりにカウンターを狙って右を打ち込んだ新井選手… その攻撃は単発が続くも、しかし、クリーンヒットを許さず、被弾はほとんどない… 


野中選手は前傾姿勢からフリッカージャブを放ち続けるも、これがなかなか当たらない… 両手を広げて挑発する場面も見られたが、新井選手は自分のペースを乱さない…


三十路ベテランボクサー同士の対決は、「間合い」と「フェイント」がパンチの数以上に交錯する神経戦の様相も呈していた…


試合が動いたのは4R… 両者がもみ合い、もつれたところで新井選手がマットに膝を突いた… が、必死にこれを「スリップ」であると訴えるも、レフェリーはダウンの裁定を下す… カウントが進む… が、新井選手、無理に憤ることをせず、これを冷静に受け止める… 僕はテレビの前で怒鳴っちゃいましたが、流石は新井選手… しかし、あのレフェリーはどこを見てるんじゃ、ぼけぇ… パンチなんか当たってへんやないか!! と、思わず言いたくなる場面でありました… 因みに僕は関東人なのですが、会場が大阪の試合だったのでこんな言い方で書いちゃいましたが、是非、「もっとちゃんと見ていただきたい」…!!! 


試合は距離感・主導権の奪い合いが続き、その勝負の行方はどちらに転ぶか解らない状況がつづく…


試合は7Rに突入… その1分過ぎに劇的な決着を迎える… 頭を下げてボディーを打ちに行った新井選手、その離れ際に突き刺さったのはチャンピオン野中選手の左フックであり、それは完璧にテンプルを打ち抜いた…


新井選手は背中から倒れこみ、宙を仰いだ…


脳は完全に揺れていた…


なんとか身体を起こして立ち上がるも、その足元は頼り無さそうだ… 


再開後、野中選手は左右連打を容赦なく打ち込み続け、新井選手は再び倒れてしまった… 


ここでTKOとなった…


僕は新井選手が大好きだったので非常に辛い内容となった… そういえば、いつかの日本ウェルター級タイトルマッチ、あの豪腕の大曲選手をKO寸前まで追い込んだあのタイトルマッチをみなさまは覚えてらっしゃるだろうか…?


あれこそ、まさにベルトに手をかけた試合…であった。


大曲選手を立っていることさえ耐えられない…ってほどの状態まで追い込みながらも、最後の最後に大逆転の一発に泣かされたいつかの新井選手を思い起こす…


残念であった…


そして、チャンピオンの野中選手は本当に鋭いパンチを打ちますねぇ… そして、なんと言っても長身で足もある… これは簡単には崩れませんね、その、かなりの充実はボクシングの成熟以上に、やはり、チャンピオンとしての意地とプライドが選手をさらに強くするのだ…とは改めて感じますねぇ…


次は東洋太平洋同級チャンピオンの飛天かずひこ選手と戦うそうだ… 過去に両者は戦っていて、その時は判定で飛天選手が勝利している…


しかし、わかりませんね、これはどうなるか…


非常に楽しみな一戦ですね…


御愛読感謝


つづく