『もし負けるようなことがあっても、決して息子や妻の前では倒れない…』 OPBF王者・升田陥落 | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

麗しのラウンドガール  

 

 …色気の無いこのブログで、初登場の女性は、『彼女』である。 


 僕はこのラウンドガールのお姉さんが1番好きだ。多分、きっとモテナイボクシングファンの憧れであるだろうと思い、切ない気持ちでここに掲載させていただく(…私、HIGEGE91を筆頭に、とほほ)。男臭くてどうしようもないこの世界にあって、彼女たちの存在は素晴らしい。さらにがんばって欲しい。


 …いや、そんなに感謝しなくてもいいですよ、そうですか?そうですよね、やっぱり『嬉しいですか?』 はい、いえいえ、どういたしまして…。


升田VS嘉陽 ホール

2005 12 12 後楽園ホール


 OPBF・ライトフライ級王者、升田貴久が初防衛に失敗した。身長リーチで勝る升田に分があるか、そう予想していたHIGEGE91であったが、挑戦者・同級7位の嘉陽宗嗣の猛攻の前に、3-0の判定負けで屈した。公式の結果は以下の通りである。

 118-113 118-112 117-112 因みにhigege91の採点では、117-113であった。


 これは『妥当』である。


『もし負けるようなことがあっても、決して息子や妻の前では倒れない…』 

 

 この記事に挙げた、タイトルの言葉はパンフレットに掲載されていた「前王者・升田貴久」の言葉である。


 僕はこれを読んでグッと来たのであるが、皆さんはどうだったろうか?愛するもののために闘う言葉である。ボクサーは恐らく、誰にもそういう「存在」あるいは、それに「近しい誰か」のために戦っている。もちろん自分の為もあろうが、それだけではないはず…。


 出だしから、升田は捌けなかった。嘉陽のパンチの重さにドキッとしたのか、その連打の速さを警戒したのか?とにかく『王者らしく』ドーンとはいけなかった。一方の嘉陽は挑戦者らしく、前へ前へと進んだ。手数で勝る升田であったが、いかんせん、パンチの重さが違うのは明白であったような気がする。距離も中途半端になってしまい、接近されるとしがみつく展開が序盤から見える。

 升田VS嘉陽

 中盤、嘉陽の連打が王者を襲う。そのボディー打ちの凄まじさと言ったら「半端ではない」。両腕で高速の如く連打し、それは7連8連…なんてのはザラであった。さらにその中から上へも拳が飛んでくるのだから升田は生きた心地がしなかったのではないか?被弾数も蓄積し、動きが鈍くなってきた升田に対し、嘉陽の動きは鈍るどころかさらにキレが増してゆく。前・OPBF王者 山口に負けたときは後半スタミナ切れをして敗れた…みたいな記事を読んでいたからいつ落ちてくるかな?…と思っていたら、とんでもない。タフ、無尽蔵のスタミナ、力のこもった手数、もう升田が倒されるのも「時間の問題」に見えた。

 終盤、R10辺りには、升田は「倒れる」と思ってみていた。距離を奪われたアウトボクサーほど「悲しい存在」はない。ああ、翼をもがれた鳥…のようだ。やがては『落下』するのだ。そして大地に叩きつけられてしまうのだ…。

 嘉陽の連打は尋常ではない。まるで「マシンガン」である。そのボディーから顔面への連打は10連打であった。升田の膝から力が抜けた…、と思いきや、升田も打って出る。死に物狂いで打ち返す。


 升田もまた、凄まじかった。倒れてもおかしくない状態で、打ち返す。倒れるものか、倒れるものか…。


 これには感動した。その執念気迫はまさに『王者の意地』。その背中の向こうで唇をかみ締める息子と奥さんの姿が浮かぶ…。


 ああ、しかし、悲しいかな、その升田のパンチは拳が握りきれていないような、1激必殺のエネルギーは残されていなかったように見えた。


 倒れる。もう倒される、無理だ、ま、升田ァ…。

升田VS嘉陽

 最終12Rのゴングがなった瞬間、嘉陽が具志堅会長と抱き合った。升田は赤コーナーでうなだれていた。


 負けた。


 初防衛失敗。よじ登った世界ランク・WBC4位の肩書きも一緒に消えた。


 …が、それにしても、嘉陽の連打は凄い。これは近年稀にみる『速攻連打』である。これだけまとめて打ち続けられて、それも最終12Rまで落ちないのだからただ事ではない。

嘉陽新チャンピオン

 …新王者誕生!!この小さな身体の中には『凄い爆発エネルギー』が秘められているのだ。おめでとう。


 升田よ、残念だった。…が、よくぞ倒れなかった。観ているこっちが勝手に「倒れるものだ」と思い込んでしまうような内容だったが、最後まで振るい続けたパンチと気迫は忘れない。今後も期待している。本当に君の意地と根性にはたくさんの人たちが感動したと思う。


 …で、気になるセミファイナル、スーパーフライ級10回戦、相澤国之VSチャッチャイ・シンワンチャ-。


 チャッチャイは1970年生まれの35歳!!…だが元フライ級王者で、現役世界ランカーWBC3位!!

相澤VSチャッチャイ

 …いやぁ、チャッチャイ強かった。亀田が闘った元世界王者・サマンとは大違いである。もちろん現役ランカーだし、あの勇利アルバチャコフから王座を奪取し、2度防衛、3度目にあのマニ-・パッキャオに8回KO負けするもそこから復帰、なんと19連勝(8KO)!!…だ、そうな。


 カマセ、ではない。


 しかし、日本のホープ、アマエリートの相澤も負けなしの9勝7KO1分け。日本も東洋も対戦が実現しそうも無い為、思い切って世界3位に挑んだわけだ。最短距離走破なるか!?


 序盤からチャッチャイの左ジャブに苦しむ相澤。見えないんだろうな…。ことごとく頭が跳ね上げられてしまう。しかし、相澤もボディーフックで対抗。リーチで勝るも、左の刺しあいでなぜか負けてる。ノーモーションなんだろうな。身体がぶれない、芯の通ったチャッチャイはピシピシと小気味良い。ジャブから右ストレート、そして、これが凄い、いきなり飛び出す「右アッパー」である。これは痺れた。これが世界を獲った男のアッパーカットかぁ!! 体制を崩すことなく淀みなく溢れるパンチのデパート状態のチャッチャイ。35歳ですか?マジですか?嘘でしょう!! 左リード浴びすぎ、相澤も当たるが単発ボディーと単発右ストレート。 

 1R おまけの互角 10-10

 2R チャッチャイ  10-9 

 3R チャッチャイ  10-8

 そうなのだ。相澤が体をつめ、懐に入った瞬間だった。チャッチャイの左ショートがまともに入ってダウン!!

 ダメージは?相澤立ち上がるも、そのRは距離を置いて回復を待つ展開。いやぁ、強い、チャッチャイ。

 さらにチャッチャイ、右アッパー4連、5連…と相澤の顎を跳ね上げる。凄い!! これは堪らん!!

 4R チャッチャイ 10-9 相澤、ヒッティングで瞼カット

 5R チャッチャイ 10-9 偶然のバッティングでチャッチャイ 瞼カット(激しい出血!!)

 相澤VSチャッチャイボディー打ち

 …と、中盤、ココへきてガクンと落ちたチャッチャイ。瞼の負傷も影響してか?果ては相澤のボディー打ちが効いてきたか、ここへきてスローダウン。チャンスだ!! 息を吹き返した相澤、連打で詰める。いけー!!よし、攻めきった。貰った。元世界王者とは言え、35歳だものナ。ここから逆転だ!!チャッチャイ、明らかに下がる。いける、倒せる!!

 6R 相澤10-9

 …引き寄せた流れを維持したい。…が、チャッチャイ、息を吹き返す。良く当たるジャブからボディー打ち、さらにアッパー3連打!! 相澤、堪えて打ち返すも見栄えがいいんだよな、チャチャイのアッパーって!!

 7R チャッチャイ 10-9

 8R 互角 双方決定打なし 10-10 

 積極的に攻める相澤、ポイントでは圧倒的不利。倒すしかない。…が、しぶといチャッチャイ、果敢に 打ち返してくる。さらにこれがまた的確。 クリーンなファイトで手数で押すチャッチャイ。いい選手だなぁ。

 9R チャッチャイ 10-9

 10R もはや倒すしかない相澤、世界ランカーは強かった!! …が、あきらめるな!! 双方、熾烈を極める打撃戦。ここは情にほだされたHIGEGE91、相澤 10-9


 …が、世界の壁は厚かった。チャッチャイのジャブ、5連アッパーは凄まじかった。


 HIGEGE91 の採点 93-98 でチャッチャイの勝ち


 …が、公式の採点はまるで違った。


 97-95 97-95 96-95 の3-0で勝者、相澤国之ー!!


 え?


 甲乙つけがたく、互角としたRを相澤10-9と振り分けたとして(…おまけの互角なのだが)、それで2ポイントそれぞれ増減したとして、それでも96-95でチャッチャイの勝ち…。


 おや?


 これで相澤の勝ちなら、ロレンソ・パーラに挑戦した坂田健史も勝ちジャン…。


 複雑極まりないHIGEGE91。隣のボクシング通おじさんと目を合わせて、互いに黙ってしまった。


 この判定がどのように扱われるのか?是非、皆さんの「意見」を拝聴したい。


  …手数 チャッチャイ …攻勢点 チャッチャイ …有効打 チャッチャイ 


 僕にはわかりません。1っ発の重い『有効打』が評価されての結果でしょうか?


 終盤確かに追い上げて盛り上げましたが、互角以上の明快さをもって相澤のRとして採点できる内容だったでしょうか?


 …ぐ、熱くなるな、HIGEGE91。これはタイトルマッチではないのだ。


 升田の試合は「妥当」であったが、セミファイナル、あの内容で3-0で相澤が勝ったので、メインのOPBFタイトルマッチも「升田」の勝ちになるかと思って結構ドキドキしていたのは僕だけであろうか?


  しかし、相澤には期待していただけに、勝ったのはいいが、素直に喜べないHIGEGE91。


 だが、相澤にはまだまだ強くなる可能性が広がっている。かなり良い経験にはなった。上記写真のボディーフックは凄まじかったし、かなり追い詰めたことは確かだが、「捌かれた」のも事実である。


 複雑な夜だ。


 升田の根性は最高だった。


 そして、ラウンドガールの『彼女』もまた、かなり『最高』であった。


 しつこい。


 御愛読感謝。


 つづく