西澤さん… 流石に堪えたよなぁ… 我々は何を望むべきか…? | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

西澤、ミトレフスキーを称えるの図

 中年の星がアクシデントに泣いた。ボクシング東洋太平洋スーパーミドル級王座決定戦が18日、東京・後楽園ホールで行われ、39歳9カ月の同級3位・西沢ヨシノリ(ヨネクラ)は偶然のバッティングによる額の腫れがひどく、試合は10回1分31秒でストップ。負傷判定の末、同級4位のピーター・ミトレフスキー(26=オーストラリア)に0―2の判定負けを喫し、日本ジム所属選手として自らが持つ最年長王座奪取記録(38歳3カ月)の更新はならなかった。これで3連敗。来年1月11日に迎える40歳の誕生日を前にして、ボクサー人生最大の試練と直面した。

 端正なマスクが別人のように変形した。偶然のバッティングの影響で、西沢の額はソフトボール大にまで腫れ上がった。右のまぶたもドス黒く変色。控室で床をじっと見つめたまま肩を落とした西沢は涙を流すことさえできず、声を絞り出すようにうめいた。

 「練習では全くそんなことはなかったが、試合で年齢を少し感じた。後半までいく予定でしっかり練習したけど切れがなかった。結果も伴わなかった」

 ラフファイトが得意な26歳に手を焼いた。1回こそ的確なボディーをヒットさせたものの、序盤から踏み込んでくる相手の頭を額でまともに受け止めた。中盤以降には左の額にも腫れが目立ち始めた。左ジャブで試合を組み立てられず、逆に左フックを被弾する場面が目立った。最後は右目を完全にふさがれ、レフェリーに試合を止められた。

 40歳を前にして泥沼の3連敗。これまで「自分は40歳がピークと考えて練習に取り組んでいる。まだ限界は見えていない」と繰り返してきた西沢も、この日はさすがに落胆の色が濃かった。20代半ばには8戦連続で勝てなかった(2分け6敗)こともあるが、もう若くはない。

 さすがに「今後のことはこれから考える」と覇気はなかった。19歳でボクシングを始め、38歳で世界初挑戦の夢を実現させた男が、窮地に立たされた。


 …と、ある。泥沼の3連敗…。やはり、現役続行は即決は出来ない様子だ。年明けに40歳の大台になるそうだが、限界を今回は感じ模様だ。

 僕の中の西澤さんと言えば、「苦笑い」だ。敵のクリーンヒットを浴びた後で、グッと堪えてニヤリと不敵に笑う。苦しいときにこそ、微笑む。なかなか出来るものではない。

西澤さんの試合後

 

男って言うのは、こういうものさ、諦めちゃ駄目さ、窮地にこそ、例えそれが「強がり」であっても、それを敵に見透かされてるとしても、そうしなくちゃならないものなのさ…


 上記の『声』は、僕が西澤さんの闘いから諭してもらった言葉だ。そんな「男の美学」を体現し続けてきた男は、この『退路のない窮地』に佇み、今、何を想うのか?

 闘ってくれとも、もう止めてくれとも言えない。もちろんがんばって欲しいのは山々だが、先日の試合は微妙だった。序盤こそキレのある連打、鋭いボディーブローでベテランの味だけでなく、ピークは40歳、まだまだこれから…って戦いが出来たが、中盤以降は正直メロメロだった。もちろん、あの腫れ上がりすぎた額のダメージがどのように作用したのか分からないが、僕は「事故」の危険性さえ感じた。正直、9Rあたりはもうストップした方が懸命だ…、と思った。でも、額の尋常ではないダメージによって体力が予想以上にスタミナを奪ってしまった…って見方も出来るし、不幸なバッティングさえなければ、別の結果が出ていた…とも言えるが、西澤さん自身が「年齢」的な限界を痛感しているとしたら、やはり「引退」した方がいいのだろう…と、思う。子供もいる。当然、奥さんもいる。「家庭」と「ボクサー」の兼業は厳しい。なにせ、「生死をかけての戦い」を職業とし続けるには、本人が「厳しい」と感じたならば止めるべきである。それは「危険」を超越して、「無謀」という言葉の方が相応しい。この際、後継者の育成、また、別の形で「ボクシング道」を追求して欲しい。


 …もちろん、現役続行を表明するならば応援はする。でも、辛いのも正直な気持ちだ。自分が求めた場所、世界の頂点には届かなかった。世界王者からダウンを奪うも、ベルトは奪えなかった…。でも、人々の心に勇気を与えたのは事実だし、その飽くなき挑戦者としての「誇り」と「執念」は確かに僕らの心に深く刻み込まれている。それはいつまでも鮮明で輝かしいものだ。


 …今後の発言に注目だ。がんばれ、中年の星・西澤ヨシノリ。


つづく