たまには「ロック野郎」にならなくちゃ… 初秋の夕暮れに、あまりに切ないこの1枚… | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

リチャード・マニュエル

『ウィスパリング・パインズ~ライブ~』

「Whispering Pines~Live At The Gateway,Saugerties,NY」

ウィスパリング・パインズ リチャード・マニュエル   

1.グロウ・トゥー・オールド

2.我が心のジョージア
3.インストゥルメンタル 1(ジャズ)
4.ロッキー越えて
5.ユー・ドント・ノウ・ミー
6.キング・ハーベスト
7.アイ・シャル・ビー・リリースト
8.ザ・シェイプ・アイム・イン
9.インストゥルメンタル 2(ピアノ)

















10.ミス・オーティス・リグレッツ
11.クレイジー・ママ
12.シー・ノウズ
13.ハード・タイムズ
14.チェスト・フィーバー
15.ウイスパリング・パインズ
16.怒りの涙
17.ロッキー越えて(オルタネイト・ヴァージョン)
18.我が心のジョージア(オルタネイト・ヴァージョン)






1986年に首吊り自殺したザ・バンドのヴォーカリスト、リチャード・マニュエル(享年42歳)の貴重な85年ライヴ音源…。ウッドストックの小さなクラブでの演奏、エレピの弾き語りだ。 かつての盟友、リック・ダンコやジム・ウィーダーも途中で参加してくる。ちょっと前に、1999年にリック・ダンゴ(享年56歳)も他界してしまったな…。

ザ・バンド 写真ではドラム担当・リチャードマニュエル

 

 ザ・バンド…。このシンプルな名前の『ロックバンド』は特殊だ。土着的で、陽気で、切なくて、屈折していて、ひねくれていて、とてもやさしい…。普遍的なブルースミュージック、カントリーミュージックがその根幹に流れているわけだが、全てはザ・バンド流に昇華されている。けして綻びない、聞き飽きることのない深い味わいは類を見ない。

 …最も有名なのは映画「イージー・ライダー」(デニス・ホッパー監督作品)の挿入歌『ザ・ウェイト』であろうか…。その他には「クリプル・クリーク」か…。でも、シングル曲の殆どがスマッシュヒット止まりで、有名なわりには日本では特に地味な存在である…。

 

 僕はココしばらく車で終日走りっぱなしだ。「風景」「背景」を探している。従って、車に積んだ「CDコレクション」を赤信号になるたびに眺めてはチョイスする。

…で、今日の夕方聴いたのがこの1枚だった。

 

 さて、リチャード・マニュエルはザ・バンドのピアニストであり、リードボーカリストであった。…と、言ってもザ・バンドは特殊なグループで、ドラム兼リードボーカルのレヴォン・ヘルム、先にも出てきたベースギター兼リードボーカルのリック・ダンゴ…と、曲によってメインボーカルが変わるのが特徴の一つ。その声を聞き分けるのはけっこう注意して聞き込まないと難しいかもしれない…。その中でもHIGEGE91の心が揺り動かされるのは特にこのリチャード・マニュエルなのだ…。リチャードは酒、麻薬?に溺れてしまったようだ。心の弱い、人騒がせな、儚くて、優しすぎる男…。そんな印象が付きまとう。それはザ・バンドの伝記映画

『ラスト・ワルツ』(マーティン・スコセッシ監督作品)を観れば分かる。

ザ・ラストワルツ

…1960年代を語る上で、欠かせないこの1本。それはロックの時代の終焉を象徴する、ザ・バンドなりの回答であった。

…ジム・モリソンもジャニス・ジョプリンもジミ・ヘンドリックスもエルビスも死んじまった、ロックを死ぬまで続けるなんてそんなの無理さ、俺たちは降りるぜ… 

 ザ・バンドの中心人物、ロビー・ロバートソンが、そうキャメラに向かって呟く。チャック・ベリー、エルビス・プレスリーがロックンロールを世界的に広め、ボブ・ディランが、ビートルズが、ストーンズが先頭にたって「ロック」を芸術の領域にまで高め、そんな時代に駆け抜けたザ・バンドが1978年に解散した。映画を見る限り、ロビー・ロバートソンが独断的にザ・バンドの幕を降ろしちゃったんじゃないか…って印象を受ける。その他のメンバーはまだやりたそうに僕には見えた。…特に、リチャード・マニュエルの「酒」「薬?」に酔ったどうしようもないほど惨めに喋る姿が収録されているが、その「破滅的な」一面が垣間見ることが出来るわけだが、リチャードにとって「命」と同じ意味の存在であった「ザ・バンド」の消失が、彼を結果的に自殺に導いたのかもしれない…。結果的に心が弱すぎたリチャードだけに、その「嗄れ声」「掠れ声」はあまりにも切ない…。その儚さは震える水面の波紋のようである。あっという間に「消えて」ゆく…、でも、確かに広がって行く様はそこに、僕たちの心の中に残り続ける。

 

…それは、僕の知ってる「悲しみ」、「孤独」、「不安」、「恐怖」…と同じ温度で奏でられた「やさしい声」…。

 

  シゴトに行き詰まったとき、路肩に車をとめて、リチャードの陽気な声を聴く。その嗄れ声の向こうの「恐怖」と「孤独」を覗き見て、耳を澄ます…。 タバコを吸って、再びギアをドライブに入れる。そして、こう思う。

 

 …まだまだ、やれる。

 

 いきなり聴いても良さが分かりやすいとはいえない1枚かもしれない…。先ず、ザ・バンドの1stアルバム、衝撃の傑作「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」と、ロック史に輝く大傑作2ndアルバム「ザ・バンド」を聴いてからの方がその「切なさ」「美しさ」は理解しやすい。さらに「ラスト・ワルツ」を観て、どの『声』がリチャードなのかを識別できるようになってから、聴いたほうがその感慨深さは宇宙のように広がって行くはずだ。

 何の因果かこの世界に生れ落ちたってのに、この「リチャード・マニュエルの歌声」を聞かずに死ぬなんてもったいないぞ!!…と、HIGEGE91は切に思うのである。

『ザ・バンド」1st 「music_from_big_pink」  ザ・バンド1st 「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」

『ザ・バンド』2nd ザ・バンド2nd「ザ・バンド」

・・・どっちも色褪せない大傑作だぁ!! 墓場まで持ってくぞ!!

因みにHIGEGE91は上記写真の右から2番目、キーボード担当のガース・ハドソンと握手したことがある。

サインも貰った。ささやかな自慢である。

つづく