WBC世界フライ級タイトルマッチ 無念、内藤大助、王者・ポンサクレックは強かった… | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

2005 10 10 水道橋 後楽園ホール 祭日の水道橋駅前はとても静かで、しとしとと前日から降り続いた雨が街を湿らせていた。肌寒いほどだった。…が、会場は超満員!! 早くも熱い、汗が噴出す!!


内藤VSポンサク ホールにて

WBC世界フライ級王者 ポンサクレック・ウォンジョンカム 28歳 タイ 59戦57勝2敗 連続11度防衛中

左ボクサーファイター

WBC2位 現日本フライ級王者 内藤大助 北海道出身 31歳 27勝(19KO)1敗2分け 右ファイター

 

 もう散々語られたことだが、二人の対戦は今回が2度目となる。初対戦は内藤にとっての敵地での世界初挑戦。3年半も前に遡ることになる。


 …1R34秒KO負け


  

 内藤はその戦績において、破れたのはこの1敗だけである。因みにちょっと前に世界挑戦して残念ながら敗れた坂田健史とは引き分けであった。坂田もまた似たような境遇での「リベンジ」を果たすべく、先月、因縁のWBA王者・ロレンソ・パーラに再挑戦するも、再び退けられた…(過去記事参照)。しかし、内藤は「意外性」を武器にする男…、何が起こるかわからない…。その所以は上記の1R「最短」負けの記録保持者であり、逆に日本王座防衛「最短」記録保持者(1R24秒KO勝ち)なのだ。従って、自称・他称「最短男」として、ボクシング界では「威光」を放つ個性の際立つ存在である。

最短Tシャツ

…で、さっそく「最短Tシャツ」をHIGEGE91は購入。¥2500也。…ちょっと高い?…けど、あの「屈辱」を跳ね返そうと「闘い続ける」内藤の心意気を感じる1枚。高くない、高くない・・・。

 前座に王者ポンサクレックの実弟、アピワット・シットカノンサック(12戦8勝3KO4敗登場。対戦相手は日本ライト級4位・リッキー☆ツカモト(31歳)。…リッキーがアピワットを3R2分05秒で痛快にKO!!ヨッシャ!!

…因みにポンサクレック弟は根性のないタイプだった。

 

 …さて、予備カードの4回戦を挟み、いよいよメインイベント!!…と、ここでHIGEGE91はある現象を発見。なんと今日の前座試合、全て「青コーナー」が勝利しているではないか!?いい傾向だ。ふふふ…。こういうのを「予兆」と信じ、有り金をはたくギャンブル人間のことを「オカルト信者」…なんて言ったりするが、僕はまさに「オカリスティック野郎」と化し、背筋の震える緊張感に拳を握り締めていた。…ついに来た!! 世界奪取の瞬間に立ち会うのだ!!

ポンサク&内藤 国歌吹奏

 両選手入場。内藤大助は懐かしいC-C-Bの「ロマンティックが止まらない」で入場。大盛り上がりだ!!観客は味わいたいのだ。内藤がこの因縁の戦いを制し、内藤と一緒に「報われたい」のだ!!内藤は落ち着いているように見えた。リングに上がってのデモンストレーションの動きも良さそう。筋肉の漲ったからだが光っている…。よし。王者・ポンサクレックは、トップロープを跨いでリングイン。赤い毛糸の帽子をかぶってまるで「還暦」の爺ちゃんみたいだ。しかし、冷静だ。落ち着いている。軽く手を上げて観客に応える程度。…ここは彼にとっては敵地。こうなったら盛り上って内藤を援護しなくちゃ!!


 国歌吹奏。目を閉じる。…勝ってくれ、「運命の神様」よ、出会い頭の事故だけは勘弁してくれよ…。


ポンサクVS内藤 ついに決戦開始


 R1 カーン!!…距離を置いたのは内藤だった。なにせ鬼門の1R34秒までは要注意だ。それを越えれば心がさらに冷静になれる。きっちりとガードを固めて内藤に詰め寄る王者に対し、内藤は早い踏み込みでそのガードを叩く。不意に内藤の「右」が入るも、王者は冷静に打ち返す。…34秒は経過した。よし。…が、ポイントを気にしない「強行突破」を宣言していた内藤ではあったが、ここは出方を探る。…2度目の対戦とはいっても、前回はたったの34秒しか戦っていないのだ。ある意味「初対戦」…。甲乙つけがたい内容。しかし、王者は「的確」だった。内藤の大きなパンチに対して、きっちり打ち終わりに入れていたように見えたし、大外からトリッキーに振り込む内藤に対しても王者のリードは当たっていた。…リーチも身長も内藤が上回っているはずなのだが、ぜんぜん小さく見えない…ぐ…。でも、おまけでこのRは内藤だ。10-9(…が、微妙だった)

 

 R2 内藤が積極的に踏み込む。そして、必殺の「右ストレート」を叩き込み、連打を見舞おうとするも、王者は冷静に対応。距離が縮まった途端、ショートを連打、さらにアッパーカットを突き上げる。内藤は頭を低くして、フェイントのボディーフック、右ストレートで対抗…。あまりに内藤の突っ込みが深かったのか?ここで早くもバッティングが発生!! …あ、内藤の右瞼がパックリ…。ぎゃぁ、ホラー映画並の出血に会場もどよめく…。ああ、なんでだよ、辛いじゃないか、もう視界半分失ってしまった。…と、ここでレフリーが王者・ポンサクレックに「減点1」の裁定(…よっぽど傷が酷かったから、きっとすぐに減点したんだと思う)。…内藤は棒立ちにはならないまでも、かなり「有効打」を貰ってしまった。減点はあったが、攻勢点が王者についてしまった。これは「理不尽」だが、互角の9-9…?

 

 R3 内藤は不気味な笑顔を作りながら、不意にガードを下ろして王者を挑発。・・・顔の右半分は血だらけなのだ。きっと相当深いに違いない。それでも内藤は踏み込み、右を突き刺す。…それはヒットするも、逆に王者の追撃に合い、コンビネーションに発展しづらい。…しかし、ポンサクレックはなんとバランスのいい王者なのだろうか?その存在感が脅威であった。ガードを固めて、にじり寄り、相手を待ち構えて連打。接近戦でも攻勢を発揮。その有効打の「的確さ」は半端ではなかった。…今年初め、小松則幸が確か5RTKOされたはずだが、なんとなくその恐ろしさが見えてくる。ぶれない、揺れない、曲がらない…。内藤はフェイントを多用しながら中間距離から踏み込み、チャンスと見るや連打しようともくろむも、回転の早い王者の硬い拳に跳ね返される…って印象だ。「攻防一体」の完成度の高さを見て、HIGEGE91は恐ろしくなってしまった。内藤のパンチは当たるが、効かない(…ように見えた)し、下がらない。まいった。内藤は「視界」を半分失っているし、きつい展開…。ポンサクレック10-9

 

 R4 このR、内藤の「意地」が光ったRだった。距離を保つことを余儀なくされた内藤なりに、闘いきった。中間距離から踏み込んでのアウトインアウトをまっとう。大きな有効打を浴びることなく攻勢点を獲得したように思う。接近戦でも追撃を紙一重ながらかわし切り、より多くのパンチを叩き込んだ。…しかし、右目が見えないはずだ。だって、あんなに激しい出血滅多に見ないもの…。これが世界タイトルマッチじゃなかったら、とっくに「ストップ」な傷なのかもしれない…。 内藤10-9

 

 R5 6 …先の4Rでペースを掴みかけたかに見えた内藤であったが、王者の重圧の前に腰の入りきらない攻撃しか出来ない印象。一方の王者は体制を崩すことなく的確なクリーンヒットを内藤に打ち込み、その手数でも上回る。内藤は体制を崩しながらのトリッキーなボディー攻撃に、いきなり踏み込んでの右…と、単発は決まるが、有効打を浴びる数は圧倒的に多い。さらに酷くなって行く出血…。王者は「負傷判定」を見越してか、より積極的に攻めてくる。内藤は本来望んでいた「真っ向勝負」をしようと試みるも、足を止めての打ち合いにまで突っ込みきれない。跳ね返される、つき返される…って印象。チクショー!! …どうしたらいいんだ。僕は内藤のほうがパンチ力では相当上回っているものだ…と思っていたが、どうやらそれは逆のようだった。やはり、ぶれない王者のパンチはどれも腰が乗っていて、打ちぬけているように見えた。そうか、まともに戦わせてもらえない。こちらの戦術が殺されて行く…。内藤はもう血だるまだ。あああ…。ポンサクレック10-9

 

 R7 …と、幾度も合ったことだが、バッティングがどうしても発生してしまう両者。内藤が頭を下げて激しく踏み込むためなのか? レフリーが流石にドクターチェックを挟む。 …ああ、ここで終わったら内藤の勝ちの芽は消えてしまう…。ぐ・・・。かろうじて再開するも、ドクターは人差し指を立てながら説明していた。…もう1度ドクターチェックになったらこの先はない…、そんな説明に見えた。…と、内藤もそれを理解してか、気合を入れなおす。「おっしゃー!!」


 …悔いの残らない試合がしたい、俺は限界まで行くんだ。強い、確かにこいつは俺よりも強いかもしれない。いや、強い。認めてやる。…だがな、俺はただじゃぁ終われネェんだ。…3年半も耐えてきたんだ。それにな、ボクシングってのは試合終了になるまで何が起こるかわからねぇんだ。…この「右」はお前をぶった押すために磨き続けてきたんだ。みんなの「願い」だって篭ってるんだ。…当ててやる、その憎たらしい顔面に、その完璧なボクシングをぶっ壊してやるぅ!!


 …と、それはHIGEGE91に聞こえた内藤の声であった。そして、終焉の予感を感じてか、王者・ポンサクレックも激しく打って出た。踏み込んで左右を振るう内藤に、なりふり構わず打ち返す王者。…ああ、ポンサクレックって、いいやつだなぁ…って正直HIGEGE91は思った。先のない内藤の「玉砕戦法」に真正面から受けて立つなんて、ああ、距離を置いも闘えるのに、あえて危険な距離での打ち合いに応じるなんて…。…しかし、根性で「心と身体」を支え続けた内藤であったが、王者の激しい重圧にコーナーに詰まってしまう。ドキッとする強打を被弾もした。…と、その激しい接近戦の最中、不意に両者の距離が離れた…。


 …バッティング。


 レフリーがドクターチェックをはさみ、ドクターは続行不可能を進言。レフリーの腕が大きく交錯される。


 …終わった。あの痛烈な1R34秒KO負けから、1270日目の今日、命懸けの戦いは終わった。


 HIGEGE91の採点 67-65 王者・ポンサクレックの勝ち

 公式の採点  3者共に 68-64で、WBC世界フライ級王者、ポンサクレック・ウォンジョンカム!!

ポンサクレック12度目の防衛成功


…ああ、2Rの「偶然のバッティング」による深い傷がこの試合の振り子を大きく狂わせた。しかし、万全の状態で仮に最終Rまでもつれたとして、地力に勝るポンサクレックの強さを覆すには、やはり、「1発」しかなかったように見えた。確かに内藤も充実した立ち上がりに見えたが、それ以上に王者のバランスの良さと、その完成度は抜き差しならない強さがあった。それは認めざるを得ない。


 …今の亀田では駄目だ、って、心底思った。もっと、さらに「パワー」と「厚み」がいる。足りない。亀田にはさらに「厚い」パンチと「厚い」身体を作ってもらいたい。…パーラよりもポンサクレックの方が多分強い。そんな気がしたが皆さんはどうだろうか?


 ああ、内藤大助よ。三十路の男よ。僕は君の「生き様」を見た。「肉を斬らせて骨を断つ」戦法…。観客も君と一緒に「生き死にの境界線」を目の当たりにしたぞ。最高にスリリングだった。その領域で戦った君の根性は語り継がれるはずだ。日本タイトルはまだ手元にあるわけだよね、今後をじっくり考えてながら、ゆっくり休んでください。ご苦労様、お疲れ様です。本当に、「感動」をありがとう…。


 …で、HIGEGE91は明日も後楽園ホールに行く。三十路ボクサー対決を見るためだ。同級生の現役ボクサー・33歳の戦う男、元・日本バンタム級1位・石川浩久を応援する為に、叫ぶつもりだ。

石川浩久ポスター


勝てよ、石川!!


つづく