「間髪」を「かんぱつ」と読んでよいか | さようならを言う前に

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昨日の記事「今さら読めないって言いにくいやつだ……。

意外と悩ませてくる漢字7選」「間髪」の読み方を、

「かんぱつ」ではなく「かんはつ」が正解と言う風

に書きました。

ブロ友さんからのコメントで、いまは

「かんぱつ」も認めている辞書もあるというので、
早速調べてみました。

 



「間髪(かんぱつ)をいれず」という読み方は……
 
適切 28.6%
不適切 31.6%
本来は違うが許容範囲 39.7%


このように、「間髪をいれず」の間髪を「かんぱつ」

と言うことについて、「不適切」と答えたのは

3割強でした。

 

「許容範囲」も含めると「かんぱつ」が多数派ともいえ

ますが、今のところ辞書では「かんぱつ」を認めるのは

少数派で、「かん、はつを~」と読むのが適切と

いえるでしょう。


出題のきっかけは、安倍晋三首相が3月14日の

記者会見冒頭発言で「今後も機動的に、必要かつ十分な

経済財政政策を間髪(かんぱつ)を入れずに

講じます」と述べたこと。

各報道機関でキーワードとして取り上げられました。

この慣用句は中国の「文選(もんぜん)」や

「説苑(ぜいえん)」に出てくる「間に髪を容(い)れず」

からきています。

 

髪の毛一本入れる余地もないくらい切迫している状況

を表し、「すぐに」という意味になりました。

だから「間」で区切り「髪」は「はつ」と読むのが

正しいとされます。
 

辞書では、たとえば「岩波国語辞典」第8版は

「かんはつをいれず」で見出しを立て「『間髪』を

『かんぱつ』と読むのは誤り」と明記しています。

また、言葉の変化を敏感に反映させる方針の

「三省堂国語辞典」第7版でも、「かんぱつ」は
「あやまった言い方」と記しています。

しかし、首相だけではなくこの言い方はかなり

広がっているのではないでしょうか。

 

以前、「読めますか」のクイズとして出題した

ところ、52%が「かんぱつをいれず」を選びました。

当サイトを訪れるのはある程度言葉に関心がある人

が多いであろうことを勘案すると、実態はもっと

「ぱ」と読んでいる人が多いのではと想像されます。

ツイッターの投稿で知ったのですが、いま大人気の

漫画「鬼滅の刃」1巻でも「間髪入れず」に
「かんぱつ」のルビがありました。

辞書でも、多少の変化があります。

「明鏡国語辞典」では、2002年の初版で「『かんぱつ』と
続けていうのは誤り」と注がありました。

それが10年の第2版ではこうなりました。「『間髪』
を一語化して『かんぱつ』と言うのは本来は誤り。

正しくは『かん、はつをいれず』と切る」。

「本来は」というところが現状の「かんぱつ」の
広がりをうかがわせます。

 

そして「日本国語大辞典」第2版では「かんぱつを容

(い)れず」を「『かん(間)に髪を容れず』に同じ」

という説明で載せています。

しかし、今のところ「かんぱつ」を見出しに立てる

辞書は広辞苑7版など少数。


それも、本来誤りであることを前提にして「間」の

ところにある「間(かん)髪(はつ)を容れず」へと

誘導するための仕掛けとして見出し語にしている

とも思えます。

だから、例えば広辞苑が「かんぱつ」という独立

した語を認めたと解するのはいささか早計といえる

かもしれません。

 

ただ、引く人の利便性を考えるなら、岩波国語辞典8版

がそうしているように「かんはつをいれず」を

見出しにする方が理にかなっています。

「かんぱつ」のルビ 許容は尚早
でも、辞書がいかに工夫して「かん、はつをいれず」

を推奨しても、「かんぱつ」への流れを
覆すのは難しいかもしれません。

もしかしたら、今回の首相の発言が一つの例になって、

今後出る辞書には「かんぱつ」を誤りと
する辞書がなくなっていくかもしれません。

しかし今のところは、少なからぬ辞書が誤りとして

いる以上、「かん、はつを」と発音するのが
適切といえます。

 

校閲としても、首相発言とは関係なく、今後も

ルビに「かんぱつ」と付いた原稿があれば「かんはつ」

に直さなければなりません。



 

ちなみにこの記事を書くために「かんはつ」と

入力しても「間髪」は出てこなくて、「かんぱつ」
と入れたら「間髪」がでました^~~~~

 

実は私も「正解」を知ったのはブログを始めて数年

たった時です。ずっと「ぱ」だと思っていました。

 

 

 

 

 

     

読んでくれてありがとう~枠はheeさん、動く画像はmakokomaさんから