ボッカッチョ「名婦伝」(日向太郎 訳)メドゥサは実在した! | 色と祈りと歌うこと - Hidetake Yamakawa (山川英毅)

色と祈りと歌うこと - Hidetake Yamakawa (山川英毅)

自分自身の中に豊かにある深いものに触れて、元気や安らぎを得るのに「色と遊ぶこと」や「自分で歌う」ことが欠かせないない気がしています。
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東京大学の西洋古典の教授、日向太郎さんによるボッカッチョの「名婦伝」の日本語訳版が知泉書館から出版された!

 

 

ギリシャ神話の蛇の髪の毛、目を合わせると石になるメドゥサは、美しい瞳と髪の実在の人だったみたい!

 

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ボッカッチョといえば、私も世界史で代表作は「デカメロン」だとして題名を暗記したくらいの知識しかなかった。その他のボッカッチョの作品は日本語翻訳もほとんどないらしい。

 

この本は106人の女性の伝記集で、「偉大な女性の振る舞いを手本として示し,女性読者に美徳を学ばせることを目的として書かれた」ものとのこと。

 

古典ラテン語をかつて少しかじって勉強したものにとって、何よりもこの本の装丁と美しさとサイズに感動する!大きさは新書版のサイズなのだ。そして日向さんの翻訳に続いて、後半に原文のラテン語が付いている!主には英語しか外国語を学んだことがなかった状態で初めて学んだ古典語のラテン語の最初の印象は、英語以上に厳格・濃密に修飾関係や構文構造が保持されていて、あいまいさが極めて少ないこと。短い数行の文の中に凝集されている知がとにかく濃いい!という感じ?!!

なので、やはりこの凝集されている感のあるサイズが、重要なのだ。もちろん学習者としての持ち歩きの利便性もある。

 

 

いやはや、それにしてもこれだけのラテン語の内容を精緻にすべて訳され洗練された翻訳に彫琢して落とし込まれた日向さんの知性と作業にひたすら驚愕する。トマスなどの神学者、哲学者のラテン語に登場する語彙は、同じラテン語の文献でもボッカッチョの文学作品などにくらべたら実ははるかに少ない。古典文学の翻訳には計り知れない女性の生活や風俗、男女をめぐる様々な側面を持つ物語の叙述を含む極めて多様な語彙と表現を、一つの標準の解釈•翻訳として提示する作業が求められ、近代語の表現的、恣意的な翻訳作業とはかけはなれた、数学に近い精緻で統合的な知性を必要とするのだと思う。

 

 

(そう、日向さんは、中高のときには数学研究会に属し、学年でも最も数学の才能のある学生の一人だった!)

本当にこうした人類の叡智にかかわる言葉を世に残すこうした作業をされている日向さんの歩みと努力にはひたすら尊敬と讃嘆の思いしかありません!

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中味をちょっといくつか読んでいたら「ボルコスの娘、メドゥサ」は「驚嘆するべき美しさの持ち主であり、。。ほとんど超自然的な驚くべきことではあるけれど、可能な限り多くの男たちをして、自身を見るように駆り立てるのだった」「彼女には豊かな金髪が備わっており、その容貌の美しさは格別であり、均整が取れた高い身の丈を備えていた。しかし、彼女はとりわけ偉大にして甘美なる眼の力を持っており、彼女が慈悲深く見つめると、見つめられた者はほとんど動けなくなり、我を忘れるほどであった」とあった。

 

そして、この彼女の格別な魅力から、「詩的創作」が生まれ、羽の生えた馬ペガサスの誕生を含む、英雄ペルセウスが髪の毛が蛇のメドゥサと目をあわさず(目を合わすと石になってしまうから)に彼女の首を切り落とす神話が生まれたらしい。

 

本物のすごい魔力のような魅力をもったメドゥサがいて、そこから私が幼いころによんだギリシャ神話のメドゥサが生まれたってことだったのか!!

他にもどんな魅力的、怪物的?!な女性たちが紹介されているのだろうか?是非、色々読み進めてみたいと思います!

日向太郎さん、本当にすばらしいご本のご出版おめでとうございます!