村井秀夫刺殺事件の真相を追って -41ページ目

村井秀夫刺殺事件の真相を追って

村井秀夫は何故殺されたのか?徐裕行とは何者なのか?
オウム真理教や在日闇社会の謎を追跡します。
当時のマスコミ・警察・司法の問題点も検証していきます。
(2018年7月6日、麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚らの死刑執行。特別企画実施中。)



先手を切ったのは端本だ。いきなり坂本弁護士の体へ馬乗りになり、続けざまに頬を殴りつけた。

弁護士は鼻血を出しながら命乞いをしてきた。
坂本弁護士「金か、金だけはやる。命だけは…」

上半身を起こそうとする弁護士の後ろに岡崎が回り込み首を絞めた。その間、早川は足を強く押さえた。激しい抵抗に早川はふっとび、後ろのふすまが外れた。

中川は傍らで、龍彦ちゃんの命を奪った。

村井は都子さんの方へ飛びかかった。新実も馬乗りになって押さえ込むのを手伝った。村井と早川はとっさに首を絞めようとした。が、激しい抵抗にあい、村井は手の小指の第一関節を激しく噛まれた。肉の一部が食いちぎられ、大量の血が広範囲に飛び散った。端本が得意の空手で都子さんの腹に蹴りを入れ、動きを封じ込めた。

中川「絞める場所が違う!首の脇をしめないと」

村井「分らん、あんたやってくれ」
思わずぼろが出た。

村井の頼みを聞いて中川が都子さんの首を絞めた。

都子さん「何でもあげる…」

朦朧とした様子でつぶやくと、都子さんは絶命した。

「早く注射を打て!」
中川は弁護士の方を向くと、体に塩化カリウムを注射させた。
腕だか尻だかも分らない。夢中で針を突き刺した。

命乞いが無意味だと気付き、岡崎の髪や耳を掴んで抵抗していた弁護士は、頸部を絞め付けと注射の毒でとうとう力つきた。


村井の目に地獄絵図が広がっていた。



事後、畳に飛び散った村井の血を 岡崎が浴室にあったタオルで拭き取り、はずれたふすまを直した。

他のメンバーは遺体は布団で包んで運び、荷台に載せた。
途中で早川が村井のカツラに気付き、拾って車内へ放り込んだ。

後始末を終えた岡崎が降りてきた。早川はイライラしていた。
坂本宅を出発して間もなく、村井は富士山総本部にいる麻原に連絡を入れ、結果を報告した。麻原は村井に午前7時頃に総本部へ戻ってくるよう指示した。


車は坂本弁護士一家の亡骸を乗せたまま総本部へ到着した。石井久子の肩に手をかけた麻原が、一行を出迎えた。

麻原「よくやった。ごくろう」

サティアンビルの4階にある麻原の部屋で、詳しい報告が行われた。その最中、村井は麻原の耳元に口を近づけ何事かささやいた。それを聞いて麻原は声を上げた。

麻原「何?カツラを落としたって?戻って取らなければならないのか」

早川がすかさず、村井が落としたカツラは自分が拾って来た、と述べた。麻原は安堵した。

麻原「さすがティローパ。お前は、前世からマンジュシュリーの欠点を補う役割だった。これからもマンジュシュリーを補佐してくれ」

早川「それが…」

村井と早川は手袋をし忘れたことを聞くと、麻原の顔が曇った。


麻原「大丈夫か?」

早川「うーん、大丈夫だと思うんですが…」

坂本家の遺体は護摩壇で処分しようと岡崎が提案した。
真島と田口の件で実証済みだ。

麻原「3体もの遺体を焼くような火力をあげれば、すぐに消防車が来る。ドラム缶に入れて、遠くの山に入れろ」

村井「動物が掘り返すとまずいと思います」

麻原「3m程掘れば大丈夫だ。雪の深い所がいいゾ」

村井「北アルプスはいかがでしょう」

麻原「そうだな。遺体はドラム缶に詰めろ」

早川「ただ、三人一組一緒に埋めると、もし発見されたら大事になる。三人を別々の場所に埋めておけば、全て発見されたとしても、所轄の警察が違うからお互いの連絡もないだろうし、捜査が進まないでしょう」

一行はワゴン車、ブルーバード、ビックホーンの三台に分乗で出発した。




家族は別々の県に埋めることにした。
子供は湿地帯の方で埋めた。水がしみ出してきたので1mしか掘れなかった。枯れ葉や倒木を置いて、カモフラージュすることも忘れなかった。

作業を終えると、一行はすぐ出発した。村井は先導して国道8号沿いへ向かった。
サウナ店で食事を済ませ、新潟県能生町のドライブインに車を止め、仮眠を取った。

5日朝、村井は坂本弁護士を大毛無山に埋めることにした。
遺体の入ったワゴン車は新実が見張り、後の五人は埋め場所を探しに行った。
午後一時頃、山の頂上付近の道から少し入った所に決め、中川と端本に穴を掘らせるよう命じた。
村井たちは新実が待つドライブインへ戻った。途中、土産物屋でおいしそうなベニズワイガニが売っていたので、6匹入りの箱を2、3個買った。

夕方、現場に戻ると中川たちの作業はほとんど進んでなかったのを見て早川が叱りつけた。
その後、一行はその場でカニを食べることにした。

辺りは漆黒の闇。懐中電灯の明かりを手掛かりに、男たちは交代でひたすら地面を掘る。4、5時間してようやく穴を掘り終えた彼らは、底に弁護士の遺体を置いた。

岡崎は、近くで道路工事をやっていることが気になった。工事の範囲が広がれば、遺体を掘り起こされるのではないか。

「身元が分からないよう、歯形を潰そう」
村井がそう言うと、岡崎がツルハシを堤の顔をめがけて振り下ろした。しかし地面に突き刺さった。
村井は、傍らに落ちていた石で顔を殴りつけようとした。岡崎も、新実も一緒になって顔を傷つけようとしている。
見ていた早川は気分が悪くなった。
早川「やめた方がいい。どうせ歯が口の中に残るから、意味が無い」

村井は、都子さんの遺体を僧ヶ岳の山中に埋めることにした。海岸へ出るとツルハシとスコップを海の中へ放り込んだ。場所を移動しながら砂浜で座布団を燃やしたり、残りのドラム缶を海中へ捨てた。
早川は麻原に報告を入れると「今夜はみんなに食事をさせて、温泉に泊まってよい」と許可が出た。近くの片山津温泉のホテルに2人1組でバラバラに泊まることにした。村井は岡崎と一緒に泊まった。

翌7日、今度は犯行に使った車を沈め、作業服を燃やす場所を探し求めた。
村井が「あそこがいい」という場所は景勝地ばかりで水か綺麗なので、車を沈めたりすればすぐに分ってしまう。

「瀬戸内海の大きな港で、水が濁った場所を探そう」一行は津山まで移動した。

翌日9日。
麻原「何やってんだ、いつまでかかっているんだ」
麻原は電話をしてきた早川に怒鳴りつけた。

「海が綺麗すぎて、何処に車を沈めたらいいか探しているんです」

「8日頃から坂本の同僚の弁護士たちがお前を探している。それから、誰か現場にプルシャを落とした者がいるのか」

「まさか…聞いてみます」

「私は自分のプルシャを持っています」「私もなくしていません」

中川がおずおずと申し出た。

中川「私かもしれません。プルシャをなくしています」

早川「中川がなくしたように言っています」

麻原「電話を中川に替われ」

そして相次いで電話口に出た中川、村井を叱りつけた。

麻原「ドジな3人はすぐに帰れっ!!」

中川だけでなく、現場に指紋を残した可能性のある村井、早川にも富士に戻るよう指示が出た。
11日。結局車の処分はしないまま岡崎たち3人も戻って来た。

麻原は、中川がプルシャを落としたこと、村井や早川が手袋をし忘れたミスを叱責した後、次のように言った。

麻原「真理を妨害することで得た金で養われている者も悪業を積んでいる」

続いて麻原は、石井久子に六法全書を持ってこさせ、殺人罪の条項を朗読させた。

石井「刑法一九九条 一人ヲ殺シタル者ハ無期又ハ3年以上ノ懲役二処スル」



麻原「三人殺したら死刑は間違いない。みんな同罪だ。死刑だな」

そう言う麻原の顔には、不気味な笑みが浮かんでいた。

村井は、襲撃時笑っていた中川のことが気になった。生半可な奴が真島や田口みたいに暴走されては大変だと思い、さっそく麻原に通達した。中川は独居房に1ヵ月間閉じ込められた。

青山「弁護士会が坂本親子を探しまわっています」

上祐「相手をしていると加熱するばかりです。ちょっと息抜きに海外活動ではくらくしてはどうでしょうか」

麻原「ヨーロッパでも回るか…」

11月21日、村井は麻原ら6人とドイツへ向かった。
犯行時、村井と早川は手袋をはめ忘れていた責任として、加熱したフライパンに指を押し当てて指紋を焼かされた。

ためらいがちな早川と比べて、真っ赤に熱せられた鉄板の前に村井は「グルのため!真理のため!」と叫ぶと、一気に指を押し付けた。

村井「グルのため!真理のため!グルのため!真理のため!」

早川「村井さん、凄いですねぇ…」

村井「グルのため!真理のため!」

鉄板はこびりついた指先の皮だらけになっていた。

翌月、日本に帰国した村井は、厚手の手袋をして帰国した。
国内に戻ってからは指紋を消す手術を受けた。




(画像:ドイツ・ボンから帰国した直後の村井。)


1989年11月3日午前8時頃。岡崎が弁護士である在家信者に電話をして坂本弁護士の住所を聞き出した。

麻原「そうか、分かったか。ほかの手段を使わなくて済んだな。よしこれで決まりだ。変装していくしかないな」

村井「スーツを買うなら幾らくらいかかるかな」
麻原の側で村井が言った。

麻原「五,六十万もあれば足りるだろう」

すぐに村井は富士山総本部のサティアンビルにある自室へ中川を呼ぶと、塩化カリウムの粉末を渡した。

村井「坂本弁護士の自宅がわかったぞ。これからいくぞ」

中川は村井の部屋の横にあるトイレの洗面台へ移り、塩化カリウムを飽和水溶液にすると、それを小瓶に移した。水溶液を注射にこめ、車で連れ去るさいに麻酔で眠らせるためだった。

村井は中川の他に早川、岡崎、新実、端本を集め、二台の車に分乗して東京へ向かった。一台は白いビックホーン、もう一台はシルバーのブルーバードである。注射器を取り寄せるため中川を下ろし、杉並道場へ向かわせた。村井たちは選挙事務所に使っていた杉並区の一軒家へ向かうと、そこで車を停めた。早川は部下の林泰男を呼び、2台の車に無線機を取り付ける作業をはじめた。
村井は端本は本屋に入った。横浜線磯子区の地図など、地図類ばかり10冊ほど買った。端本は、村井が代金を気にかける風もなくこれだけ買い物をしたのにびっくりした。その後村井と端本は2人だけで蕎麦屋へ入った。



村井は端本に天丼と蕎麦を奢った。教団では、月に1万5千円ほどの業財と呼ばれる小遣いを渡し、それを出来るだけ節約させて残りを返済する制度があった。それに慣れていた端本とって、村井の行動は奇異に見えた。

一行は荻窪のアジトで合流した。アジトにはカツラなどの変装道具があった。カツラは、村井と新実だけがつけた。
新実はアフロヘアのカツラをかぶりながら「パンチ、パンチ」とはしゃぐ。


村井はメンバーを新宿へ連れて行くと「変装用の服を揃えるように」と、一人一人10万円を渡した。皆安売りの店でさっさとスーツを買って車に集合した。しかし、端本だけは戻ってこない。端本はルミネでジャケット、ズボン、シャツ、ベルト、靴の品選びで夢中だった。

早川は遅れて来た端本を叱りつけた。

早川「いつまでかかってるんだ!だいたい、なんでそんな高い物を買ってくるんだ、すぐに捨てるのにもったいない!」

村井「まあまあ」

村井「まあいいじゃないですか。若い者には若い者の考えがあるんですから」



メンバーが車の中で着替えている際、中川は下着の胸の辺りに、そっとプルシャをつけた。

横浜の坂本宅へは、村井が道案内した。住宅街の一角を一方通行の道でぐるりと一周したところで、村井はビックホーンでメンバーに無線連絡をした。

村井「ここが坂本弁護士の自宅だ」

近くの駐車場の開いている所に、車を停めた。そこから坂本弁護士の自宅があるアパートが見えた。

村井「あそこだ!」
村井は指をさした。

地図で最寄り駅を探した。JR洋光台が近い。しかし、通勤路になりそうな道は何本もあって、坂本弁護士が普段どこを歩いてくるのか分らなかった。

一行は二手に別れた。弁護士が見えたら村井か岡崎のもとに連絡することにした。
村井は金山神社で待機した。10時になって早川の車の無線が鳴った。

岡崎「玄関の扉が開いている」

早川「え?」

岡崎「今自宅を見にいったんだ」

早川「尊師に聞いてみるから、待ってくれ」

早川は駅前の公衆電話で麻原直通の電話番号を押した。

電話には麻原がすぐに出た。

早川「今まで待ちましたが、みつかりません。自宅の鍵が開いているので、入ろうと思えば入れますが」

麻原「もし帰っているのなら、家族ともども殺るしかないな」

早川「友達や親戚でも来ていたらうまくいかないのではないですか」

麻原「なら確認しろ。寝静まってからがいいだろう」

早川は村井や岡崎が待機してる所へ向かった。

2時ではまだ起きている人がいるかもしれないし、午前4時になれば新聞配達が動き出すかもしれない

「終電まで坂本が降りてこなかったら、3時頃に自宅へ侵入しよう」

謀議の後、早川は最終電車の時刻表を確認した。11月3日は文化の日。しかし早川が見ていたのは平日の時刻表だった。皆オウムで生活するうちに、曜日の感覚を失っていた。村井も同様だった。出家して間もない中川がふと気付き、新実にそっと言った。

中川「今日は祝日なので、坂本弁護士は出勤していないんじゃないですか。待っていても帰ってこないかもしれません」

新実はポンと手を叩いて中川を指差し「かしこい」と一言。これから人を殺すというのに新実のひょうきんはいつもの通りだった。

岡崎「様子を見てくる。子供の頃からこういうことに慣れているんだ」

偵察から戻って来た岡崎は皆に告げた。「おい、開いているぞ。3人いる」

村井は玄関が未施錠であることに懐疑的だった。村井は端本に指示した。

村井「カギが開いていなかった場合、窓を壊してでも入れ」



メンバーは忍び足で外階段を上がり、奥のドアの前についた。
廊下におもちゃの赤い車が置いてあり、ネームプレートには手書きで「坂本堤・都子」と書かれてあった。早川は玄関のドアを開けようとしたとき、手袋をはめ忘れたことに気がついた。
「誰か手を貸してくれ」岡崎がドアノブを回した。
最後に入って来た中川は、まだ外階段にいた。

「早く早く」岡崎が手招きしながら小声で言った。

中川がドアを閉じると同時に「カチッ」と音がした。

岡崎「シーッ、バカバカ」岡崎は声を潜めて中川をなじめた。

村井は早川に内部の偵察を命じた。
早川は入ってすぐのダイニングキッチンでしばらく目を暗さに慣らすと、右手の引き戸の方へ向かった。そして指紋をつけないよう人差し指を折り曲げ、引き戸を20㎝ほど引いた。

奥の方に薄ぼんやりと、布団が見えた。手前には女性が寝ている。奥に要るのは…坂本弁護士だ。
早川は玄関で待機していた村井たちにOKマークを出した。

一行は一斉に室内へなだれ込み、寝室内へ突入した。


1989年10月26日。
富士山総本部で行われた水中クンバカ大会にTBSや赤旗の取材がきた。社会情報局や報道局も含め3台のカメラがオウム施設に入った。



外部からの来客に神経をとがらせる麻原。
この日、会場にTBSの撮影スタッフが訪問していた。
早川「東京放送…TBSですね」


麻原「赤旗来てるの?」


取材陣を気にする麻原。
赤旗といえば共産党、無神論者の集団である。きな臭い噂を嗅ぎ付けて来たのだろう。
麻原は気に喰わない顔を浮かべた。



テレビ局は麻原の水中クンバカを期待していた。しかし、水槽に潜るのは麻原ではなく、井上と一般信者たちだった。



上祐と青山が見守る。

麻原「マンジュウ、酸素テントを確かめろ」

村井「はい。わかりました」

麻原「水温を35度まで下げろ」



この日、村井は水中クンバカ大会用の浴槽を準備し、水面の上に深呼吸するための酸素テントを設置させていた。はじめに挑戦する信者が水槽の中へ入ると、テントの中で深呼吸をはじめた。



麻原「偉大なる完全なる絶対なる」
麻原が早口でマントラを唱える。




村井「いつでもいいぞ!」
30分後に村井が合図をすると、信者は潜りはじめた。同時にストップウォッチの電子音が響く。




見守る信者とTBS関係者。
麻原「ここからで4分だからね!4分!」



鼻をつまむ信者。



信者「ヴゥゥ〜〜」
浮かび上がった信者が苦しそうに牛の唸り声のような奇声を出した。

早川「あーダメ」

麻原「よし、アーナンダ!」井上「ハイッ!」麻原「もうダイレクトにいくゾ!」

麻原「あのぉ、喋ったらえらい疲労するから、というよりお前、失敗したら不味いから…」

二人目は当時19歳井上。酸素テントの中で何度も深呼吸を続けた。

麻原「酸素テントに入って何分?」

村井「…」

時間を数えていないのを無言でごまかす村井。

井上が水槽内に潜った。中の鉄パイプで体を固定し、水中クンバカにチャレンジだ。
麻原は再びマントラを唱える。

5分30秒後、息苦しくなった井上が浮上した。村井はタイマーを止めた。

麻原「…」

井上「すみません…心臓が…止まりまして…」



麻原「何怖がってんだよぉ~」

井上「スミマセン」



呆れた表情を浮かべる麻原。

麻原「…もう出ていいぞ」

井上「しまったぁ、くっそ~」



麻原「偉大なる完全なるシヴァ神の」



信者「ウェー…ちきしょぉ〜ゲフッ」



麻原「ダメかやっぱり」


白ける村井たち。右端のスーツの男性は赤旗記者・竹腰将弘。

大会終了後の午後6時18分、村井、上祐、松本知子、早川、新実、岡崎など幹部が周囲を囲む中、報道局と麻原のインタビューが始まった。

聞き手は「報道局」の西野哲史氏。
報道局は選挙や薬事法の逮捕歴について触れる。しかし、麻原はテレビ取材を宣伝に利用するため機嫌良さそうに取り繕った。インタビューはスムーズに進んだ。



午後7時頃、報道局のスタッフが退出。
林泰男「お疲れさまでした」

元在日朝鮮人の林泰男がスタッフたちを玄関で見送る。報道局関係者はそのまま東京へ戻る。



次の聞き手は、「3時にあいましょう」リポーターの石丸純子氏。麻原は信者の潜水時間を世界記録と主張し、自慢話をはじめた。
ところが、石丸リポーターがサンデー毎日がとりあげたお布施の話題を持ち込んできたため、雲行きが怪しくなった。

石丸は「番組を作る意味では中立」といいつつも個人的な主張をぶつけてきた。

曜日プロデューサー「ま、ちょっと、やめましょう」
スタッフの曜日氏が口を挟む。



松本知子「質問の仕方がおかしいですよ!」「くすねるという表現はおかしい」

石井久子と松本知子が感情を露にした。





教団を侮辱されたことに腹を立てた上祐、早川が騒ぎ出す。



麻原「それはカルマじゃない。いいじゃない」

麻原は幹部の反応をみつつ、教団代表者として寛大なふりをした。

それでも非難を続ける石丸。



おおらかに振る舞っていた麻原も徐々に批判的な返答をしはじめ、カメラマンは撮影を中止した。
インタビュー終了後も押し問答が続いた。

麻原の水中クンバカを撮影できなかったTBSは翌日の放送を見送った。



その晩、村井は麻原にある命令を受けた後、オウム真理教富士山総本部横のサティアンビル3階の自室へ戻った。部屋には中川智正がいた。

村井「人を殺せる薬はないか」

村井は声を潜めて中川に訪ねた。中川は驚いて村井の顔を見上げると、その表情は真剣そのものだった。村井の迫力に押されるように、中川はいくつかの毒物の名称を挙げた。

中川「テトロドトキシン、アポニチン、ストリキニーネ、クラーレ、ボツリヌス菌毒素、塩化カリウム…」

村井「すぐに眠らせる薬でもいい、眠らせれば、あとはどうにでもなる」

中川は村井に全身麻酔薬チオペンタールの効果を説明した。

村井「クロロフォルムやエーテルでもすぐに眠るかな」
村井は、古い推理小説や映画で聞いたことのある薬品名を挙げてみた。

中川「すぐに、というわけではありません」

村井「君が勤めていた病院から、殺すか眠らせる薬を持って来てくれ」

中川は沈痛な気持ちで聞いていた。村井の意図がよくわからなかった。

青山の耳に、TBSが水中クンバカ大会と一緒に、「オウム真理教被害者の会」の特集を一緒に放送する情報が入った。抗議のため青山、上祐、早川の三人はTBS関係者に面会した。TBS側は教団の反論を聞かずに放送するのも問題があると考え、被害者の会側の取材映像を3人に見せた。映像には被害者の会代表の永岡弘行、サンデー毎日の牧太郎、そして横浜法律事務所の坂本堤弁護士が映し出されていた。

11月2日深夜から3日未明にかけて、麻原の部屋で会議が行われた。麻原の他、村井、早川、岡崎、新実、そして中川が参加した。

麻原「「もう今の世の中は汚れきっておる。もうヴァジラヤーナを取り入れていくしかない。お前たちも覚悟しろよ」

「今ポアをしなければいけない問題となる人物はだれと思う?」
麻原は、教団にとって最も障害となる殺害しなければならない人物はだれかという意味の問い掛けをした後、殺意のある人物の名前を挙げた。

麻原「サンデー毎日の牧太郎をポアしようと思う」

村井「薬は中川が用意してます」

村井の話を思い出した中川は、麻原たちに塩化カリウムの説明をした。

「整脈に注射すれば、心臓の収縮が止まってすぐに死にます。ただ、注射の痕が残るので、ダメですよ。殺害だとすぐに分ってしまいます」

村井「肛門かヘソに注射したらどうだ」

中川「それでも跡が残りますよ。調べる人は調べるでしょう。」

麻原「痕が残らない方法はないか」

「ボツリヌス菌毒素かフグ毒なら、食中毒で死んだと思われて、分らないかもしれません。でも、いずれにしても死体が証拠になってしまいますよ」

「帰宅途中に車に引きずり込んで、注射をしたらどうか」

「牧は、新聞社に泊まったりして、家に帰らないことも多くて難しいんですよ」
誰かのこの言葉で、牧編集長の暗殺は暗礁に乗り上げた。



麻原「坂本弁護士はどうか」
突然麻原がそう言い出した。

早川「なぜ弁護士を?」

麻原「いや、坂本弁護士は被害者の会のリーダーだ。会をまとめているのは彼なんだ。坂本をこのまま放っておくと、将来教団にとって大きな障害となる。このまま坂本に悪業を積ませないためにも、今彼をポアしなければならない」

坂本弁護士は、教団の出家信徒の親から脱会の相談を受け、教団を相手どった訴訟を準備していた。6月には教団に対し、親元の帰宅や親との面会を求め、「オウム真理教被害対策弁護団」を結成した。8月に教団が宗教法人の認証を受けると、坂本弁護士は教普段の不正を追求して認証取り消しを求める方針を固めた。10月には「オウム真理教被害者の会」を結成するなど、対立の構図は強まっていた。

上祐と青山は横浜法律事務所へ出向き、「信仰の自由がある」と抗議した。坂本弁護士は「人が不幸にする自由はない」「徹底的にやる」と一歩も引かず、毅然とした態度を貫いた。上祐の報告を受け取った麻原は坂本弁護士を教団の脅威として認識した。

麻原は、「ポア」という言葉を発する時、右手の拳を上に向け、人差し指を弾くような動作をした。