このブログは、「正しいピラティス」を伝えるためのものではありません。

私が20年以上ピラティスを学び、指導する中で見えてきたこと、感じてきたことを、一人の指導者として綴っています。

身体に絶対の正解はありません。だからこそ、問い続け、学び続けることを大切にしています。

 

「高単価・高収益」だけでいいのか。ピラティス業界が信頼され続けるために

近年、ピラティススタジオが急速に増えています。

ピラティスという言葉を街で見かけることも増え、マシンピラティスを経験したことがある方も珍しくなくなりました。

運動を通じて健康に関わることができる。
お客様から喜んでいただける。
比較的高い料金を設定できる。
継続して通ってくださる方も多い。

 

そうした理由から、ピラティスは「高単価・高収益のビジネス」として紹介されることもあります。

 

事業として利益を出すことは、もちろん必要です。

利益がなければ、スタジオを維持することも、スタッフを雇うことも、設備を整えることも、学びを続けることもできません。

ただ私は、ピラティスが「高く売れるビジネス」としてだけ広がっていくことには、少し違和感があります。

なぜなら、ピラティスは人の身体に関わる仕事だからです。

高い料金だから、専門性が高いとは限らない

私たちは物やサービスを選ぶとき、価格を一つの判断材料にします。

価格が高ければ、

「きっと質がいいのだろう」

「専門性が高いのだろう」

と考えることがあります。

 

しかし、価格そのものが専門性を証明してくれるわけではありません。

 

きれいなスタジオ。

最新のマシン。

魅力的なインストラクター。

丁寧な接客。

SNSでの美しい発信。

 

もちろん、どれもお客様にとって大切な要素です。

 

しかし、それと、

その人の身体を観察し、何が必要なのかを考え、適切な運動を選択できること

とは別の問題です。

ピラティスの専門性は、外から見ただけでは非常に分かりにくいものです。

だからこそ、提供する私たち側には大きな責任があると思っています。

 

なぜ、ピラティスの料金は安くないのか

本当に専門的なピラティスを提供しようとすると、実は多くの時間と費用がかかります。

指導者としての基礎教育を受ける。

解剖学や運動について学ぶ。

実際に自分自身も身体を動かす。

経験を重ねる。

研修やワークショップに参加する。

指導したお客様の身体を振り返る。

新しい知識を学び続ける。

 

そしてスタジオでは、安全に使える器具を揃え、メンテナンスを行い、適切な環境を整える必要があります。

 

パーソナルレッスンであれば、ただ60分または50分間一緒に運動しているだけではありません。

 

お客様の姿勢や動きを観察し、

「今日は何をするべきか」

「何を優先するべきか」

「この運動は、この方に本当に必要なのか」

を考えています。

 

場合によっては、予定していたプログラムをその場で変更することもあります。

つまり、お客様が購入しているのは、単なる「60分」という時間だけではありません。

 

その背景にある、

教育、経験、設備、準備、観察、判断、そして責任

も含まれています。

だからこそ、専門的なピラティスの価格は、必ずしも安くはありません。

高くしたから価値が生まれるのではなく、

価値のある仕事をするために必要なものを積み重ねた結果として、適正な価格になる。

私は、その順番が大切だと思っています。

 

お客様が専門性を判断するのは難しい

ピラティスには、もう一つ難しい問題があります。

それは、お客様が指導者の専門性を判断することが簡単ではないということです。

 

たとえば美容院であれば、髪型を見ればある程度結果が分かります。

 

料理であれば、おいしいかどうかを自分で判断できます。

 

しかし身体については、それほど単純ではありません。

 

レッスンが楽しかった。

汗をかいた。

筋肉痛になった。

先生が優しかった。

身体が軽くなった気がする。

こうした体験はもちろん大切です。

 

 

ただ、それだけでは、

「その身体にとって適切な運動だったのか」

「長期的に身体を良い方向へ導いているのか」

まで判断することは難しいのです。

 

だからこそ、

「お客様には分からないから、どう売ってもいい」

という考え方になってはいけないと思っています。

 

 

むしろ逆です。

分かりにくいサービスだからこそ、提供する側が誠実でなければならない。

それが専門職としての責任ではないでしょうか。

 

 

お客様にも「見る目」を持っていただきたい

一方で、これからピラティスを始める方にも、ぜひ知っていただきたいことがあります。

スタジオを選ぶとき、価格や設備だけでなく、

「この先生は、なぜこの運動を選んでいるのだろう」

という視点を少し持ってみてください。

 

自分の身体について話を聞いてくれるか。

身体の状態を見てくれているか。

毎回同じプログラムではなく、その日の状態に合わせて考えてくれるか。

できないことだけを指摘するのではなく、変化を見てくれているか。

そして、分からないことに対して誠実に向き合ってくれるか。

資格の数や経歴だけですべてを判断できるわけではありません。

 

しかし、こうした部分には、その指導者が身体とどう向き合っているかが表れます。

お客様が少しずつ見る目を持つことは、結果としてピラティス業界全体の質を高めることにもつながると思っています。

 

「高収益」である前に「信頼できる仕事」でありたい

私は、ピラティスがビジネスであることを否定しているわけではありません。

 

スタジオを続けるためには利益が必要です。

スタッフが安心して働ける給与も必要です。

良い器具を購入するためのお金も必要です。

指導者が学び続けるためのお金も必要です。

だから、適正な利益を出すことはとても大切です。

 

ただ、

「できるだけ安く提供すること」も正解ではないし、
「できるだけ高く売ること」も正解ではない。

 

大切なのは、その価格に対して、私たちが何を提供しているのかだと思います。

高い料金をいただくのであれば、それだけの責任を持つ。

専門家と名乗るのであれば、学び続ける。

身体を見ますと言うのであれば、本当に観察する。

個別にプログラムしますと言うのであれば、その人のために考える。

私は、そこを曖昧にしたくありません。

 

ピラティスという名前そのものが「信頼」になるために

これからさらにピラティスをする人は増えていくと思います。

スタジオも増えるでしょう。

新しい指導者も増えるでしょう。

それ自体は、とても良いことだと思っています。

 

多くの方が身体を動かし、自分の身体について考えるきっかけになるからです。

だからこそ今、

私たち指導者が、どんな姿勢でこの仕事をするのかが問われているのではないでしょうか。

ピラティスに行けば安心できる。

身体のことをきちんと考えてもらえる。

必要なことを誠実に伝えてもらえる。

 

そんなふうに、

「ピラティス」という言葉そのものが、信頼につながる業界になってほしい。

 

 

そのためには、一人ひとりの指導者が学び続けること。

スタジオが教育や設備に必要な投資をすること。

そして私たち自身が、何を大切にして指導しているのかを、お客様にきちんと伝えていくこと。

それが必要だと思っています。

私は、「高単価のピラティス」を目指したいのではありません。

価格に見合う仕事をするピラティスでありたい。

 

そして、その積み重ねによって、

「ピラティスなら信頼できる」

と社会から思っていただける業界になってほしい。

それが、長くこの仕事に関わってきた一人の指導者として、今感じていることです。

 

 

身体に絶対の正解はありません。

今日の内容も、現場で学び続ける私自身の一つの視点です。

「ピラティスは、するものではなく、生きるもの。」

 

 

「ピラティスは、動きを学ぶことではない。身体との対話を育てることである。」