運動を指導するって、何をすることだろう
「運動を指導する」とは、何をすることなのでしょうか。
プログラムを作り、動きの順番を考え、やり方を説明する。
注意点を伝え、呼吸のタイミングを伝える。
もちろん、それも指導の一部です。
けれど、私はそれだけが「運動指導」ではないと思っています。
実際にクライアントが動き始めたら、そこからが指導者の仕事なのではないでしょうか。
ピラティスの場合、指導者が一緒に動き続けるのではなく、クライアントの身体を観察します。
どのように動いているのか。
どこが動きやすく、どこが動きにくいのか。
どこかに無理はないか。
本来の目的とは違うところで頑張っていないか。
そして、その観察をもとに、
「今、この人には何を伝えるべきなのか」
を考えます。
必要であれば修正する。
できているところは伝える。
もう一度動いてもらう。
そして、また観察する。
つまり、
観察 → 判断 → 介入 → もう一度観察
この繰り返しが、運動指導なのではないかと思っています。
ここでいう「介入」とは、ただ間違いを直すということではありません。
言葉をかける。
動きを修正する。
触れて伝える。
負荷を変える。
動きの範囲を変える。
場合によっては、あえて何も言わずに見守る。
それらすべてが、その人の動きをより良い方向へ導くための介入です。
すべてを直すことが「良い指導」ではない
身体を見ていると、いろいろなことが目に入ります。
骨盤の位置。
背骨の動き。
足の向き。
肩の位置。
呼吸。
力の入り方。
左右差。
気になるところを探せば、いくらでも出てきます。
では、それを全部直せばいいのでしょうか。
私はそうではないと思います。
一度にすべてを要求すると、動きそのものができなくなってしまうことがあります。
だからこそ、指導者には「選択」が必要になります。
この運動の目的は何なのか。
その目的を達成するために、今この人にとって一番大切なことは何なのか。
例えば、背骨を動かすことが目的の運動なのに、足の位置や手の位置ばかりを細かく修正していたら、肝心の背骨の動きに意識を向ける余裕がなくなるかもしれません。
反対に、安全性に関わる動きが出ているのであれば、運動の目的よりも先に修正しなければならないこともあります。
つまり指導とは、
見えたものを全部直すことではなく、何を優先するかを判断すること
なのだと思います。
「ちゃんと見てくれる先生」とは何か
お客様から、
「ちゃんと見てくれる先生がいい」
という言葉を聞くことがあります。
では、「ちゃんと見る」とは何なのでしょう。
ただ身体を見ているだけではありません。
観察し、
その人が今どのように動いているのかを理解し、
運動の目的と照らし合わせ、
何を優先するのかを判断し、
必要な介入を行う。
そして、その介入によって動きがどう変わったのかを、もう一度観察する。
つまり、ここでも大切なのは、
観察 → 判断 → 介入 → もう一度観察
です。
観察したからといって、すぐに何かを直せばよいわけではありません。
まず、「これは本当に修正する必要があるのか」を考える。
次に、「今、何を伝えることが一番効果的なのか」を考える。
そして介入したあと、その結果をもう一度見る。
変わったのか。
変わらなかったのか。
むしろ動きにくくなっていないか。
そこまで見て初めて、一つの指導が完結するのではないでしょうか。
運動を「やらせる」のではなく、目的に近づける
エクササイズには、それぞれ形があります。
だからどうしても、
「正しい形にすること」
が指導の目的になりやすい。
けれど、本来の目的は、その形を完成させることだけではありません。
その運動を通して、
背骨を動かしたいのか。
身体を安定させたいのか。
股関節を動かしたいのか。
呼吸をしやすくしたいのか。
力の使い方を変えたいのか。
そこには目的があります。
だから、同じエクササイズをしていても、伝えることは人によって違っていい。
むしろ、違う方が自然です。
指導者の役割は、決められた注意点をすべて伝えることではなく、
その人が、その運動の目的に近づくために何が必要なのかを考えること。
私はそう考えています。
そのためには、まず観察しなければならない。
そして観察したことから、何をするのかを判断し、必要な介入をする。
さらに、その介入が本当に良かったのかを、もう一度観察する。
観察 → 判断 → 介入 → もう一度観察。
この循環を繰り返しながら、その人に必要な運動を作っていく。
運動を指導するとは、
プログラムを提供することでも、エクササイズを教えることでもなく、
目の前の人を観察し、その人が運動の目的に近づくために、今何が必要なのかを選び続けること。
私は、その積み重ねが「指導」なのだと思っています。
なので、私も養成スクールで教えるやり方と一般のレッスンでは教え方を明確に変えています。
なぜ?目的が違うからです
ぜひ、一度、その辺りも考えていただけると自分の指導が変わるのではないでしょうか。



