マジすか学園GX☆#1ー3☆
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°
『また、やりすぎてもうたか?でも、こいつらが、悪いんやで。高校生のくせに、うちら小学生ふたり相手に10人がかりで─』
『あーあ、また、先生に怒られてまうわ!お前は、ほんま、めちゃくちゃするなぁ。こないだも、中学生30人くらい、ぶっ倒したやろ。そのとき、商店街めちゃくちゃにしたん、忘れたんかいな。もはや、破壊王、通り越して、破壊の神やな。破壊神シヴァや』
『なんや、それ!』
『神話に出てくる神様や。なんか、かっこええやろ。名前も、似とるし』
『そうかぁ─。まあ、強そうな感じやな。ほんなら、お前は?』
『うちは、慈愛の女神、美しきヴィシュヌ神さまやな』
『なんか、自分だけ、良い(ええ)ように言うとらんか?』
『いいんやって。うちは、お前のそばに居る(おる)、ずっと、見守っとったる!せやから、誰にも負けるなや。絶対、いつか、日本一のヤンキーになるんやで!シュウ!』
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆
勢いを増し、
沈んでいく巨大な建造物を思わせる大型客船。
甲板には、すでに、
前田敦子と薮下シュウ、二人の
足首に達するほどの海水が、溢れ出していた。
劇薬を飲んだように、
ひとときの間では、あった。しかし、ゾーンを超え、神々の領域に達した前田の精神状態は、確実に、従来の運動能力を引き上げた。
「もっとや…、もっと…」
壮絶な殴り合いの最中。
薮下シュウが、殴られながら、さらに、求める。
海水に足をとられ、ろくな動きの出来ない中で、足を止めて、
真正面からの拳のぶつけ合いが続く。
お互いの拳は、確実に、それぞれの顔面を捉え、衝撃は、意識を一瞬、刈り取るほどのものでありながら、なおも薮下は、前田の拳を求め続けた。
「まだやぁあああああああ!」
その言葉に呼応するかのように、前田が、吠える。
「うおァあああああああああぁッ!」
相打ち。
直後。
倒れたのは、前田のほうだった。
「立てやぁ!前田!まだや、言うとるやろ!」
「はぁ…、はぁ…、わかってるよ…、こんなもんじゃねぇ…、“マジ女”を…なめんなよ」
立ち上がる。
また、再び、殴り合いが始まる。
清々しささえ感じる殴り合い。
その
永遠に続くかに思えた闘いにも、終焉が近づいていた。
何十発目の衝撃だったのだろうか。
大きく、
水しぶきが跳ねた。
それが、
初めて、総帥が、仰向けで倒れたところでもあった。
前田が、言う。
「はぁ…、はぁ…、もう、いいだろう…」
脱出のタイムリミットは、迫っている。
肩で息をする前田に、倒れたまま、攻撃的な視線を突き刺す総帥。
まだや─
そう言っているように、前田には、感じとれた。足りない。
「お前にも、きっと、心配してくれる仲間が、いるだろう…、一緒に、仲間のもとへ帰…」
「……、仲間…やと…?そんなもん、一人もおらん!…なんや、さっきも大層なこと言うとったけど…、結局、お前の仲間らは、最後は、いつも、お前任せやろ!そんなやつらを、“てっぺん”やからって、命を懸けてまで、守る価値が…、ホンマに、あるっちゅうんか?」
「それは違う!」
薮下の問いに、即答し、
キッパリと否定する前田。
「ここまで、来れたのは、仲間たちのおかげだ。それに、わき目もふらず、突っ走る者より…、残された者のほうが…、つらい、そういうこともある…」
その言葉に、総帥は、不敵な笑みを浮かべる。前田の言葉に、まるで、何かのスイッチが入ってしまったかのように。
「半年前、病院でッ!お前の目の前でッ!
救急車で運ばれてきた
お前の親友(マブダチ)が、死んでいったようにか!?」
空白。
「……何を、」
「教えたる…、ホンマは、これが知りたかったんやろ…?」
邪悪な笑みが、総帥の顔に張り付く。
わたしが─と、声を張り上げる。
「わたしが、殺した!わたしが、高橋みなみを殺したんや─!」
「…………」
「高橋みなみの噂は、関西にまで、響いてきとった。わたしは、ひとり、東京へ向かった。タイマンはるために。
その日やった。
夜─。高橋みなみは、ガンギレ高校の連中に、ボコボコにされ、階段を転げ落ちてきた。もう、虫の息やった…、そこで、トドメをさしたのが、わたしや…」
「うあああああああああああああああああああ!」
横から弾丸のように、飛び込んできたのは、白いセーラー服の裾をびしょ濡れにした、肥川アヤメだった。
首のあたりを掴み、揺するように、詰問する。
「やっぱり、お前が…、お前が、みなみを、殺したんだな!」
「だったら、どうやねん?」
「ぶっ殺す!」
殴りかかろうとするアヤメの拳が、とんでくる前に、総帥の額が、アヤメの鼻先にとんできた。頭突き。
バシャ─、と、背中から倒れこむアヤメ。
それを見て、
ゆっくりと立ち上がる総帥─薮下シュウは、薄く、笑う。
「簡単に、『殺す』なんて言葉、使うもんやないで。そんな、覚悟も─、実力もないやつがな」
総帥は、前田のほうに向き直り、
「どうや、前田…、わたしのこと、殺したなってきたか?」
「本当だとしたら…、なぜ…?」
「なぜ─やと?理由が必要なんか?理由があれば、納得できるんか?
理由があれば、赦せるっちゅうんか?理由があれば、死んだ人間が生き返るっちゅうんか!」
「違う!」
そうじゃない。
ただ、根本的に─。違う。
傍らで、いきりたつアヤメを手で制し。
前田は、眉をひそめ。
そして─
「お前は、嘘をついている」
言い切る。
拳を交えて、初めて、わかることもある。拳を交えなければ、決して、わからないこともある。
「お前が、そんなことをするようには思えない。そんなことをしたとしても、まるで、意味がないからな」
あっさりと看破されてしまった総帥は、
しばしの沈黙のあと、大声で笑い出した。
そして─
「ふん!つまらん!でも、東京に行ったんは、嘘やないで。結局、高橋みなみと、タイマン出来へんかったけどな。
もっと、殺意を剥き出しにしてくれや。前田。
結果として、親友(マブダチ)を殺したのは、お前やろ!
このまま、船と一緒に沈みたなかったら、わたしを殺すつもりで、来いや!」
総帥の挑発にも動じず、前田は、告げる。
「──、お前は、なんとなく、『あのとき』のわたしに、よく、似ているんだ…」
半年前。
大切な
親友(マブダチ)が死んで、荒んだ毎日を送っていた日々。
ただ、ただ、自らを呪い、誰かに、罰してもらえることを望んだ『あのとき』の自分に─。
前田は、さらに、続ける。
「お前に、何があったのかは知らない…、ただ、いまのお前は、死にたがってるように見える…、もしかしたら、わたしのように、すべてを捨ててしまいたいほどの絶望が、過去のお前を襲ったのかもしれない。
そして、それ以来、ずっと、ずっと…、その気持ちが、解消されないまま、抑えてきたものが、やがて、限界を超え…、いま─、
誰かに、殺されたいと、願うようになった…、
なぜなら─、お前は、その『死に場所』を、ここに、求めてるからだ!」
「それが、どないしたんや!」
「お前の未来には、もう、『破滅』しかないっていうのか!」
「そうや!その通りや!二年前の『あの日』すべての歯車が狂ってしもたんや!
もう、全部、ぶっ壊れてしまえばええんや!こんな船も、こんな【エリア】(せかい)も…、そして…」(こんな─わたしも…)
半年前。
もしかしたら─
『高橋みなみ』なら、なんとか、してくれると思った。『高橋みなみ』なら、自分を変えてくれると思った。『高橋みなみ』なら─。
そして、会いに行った。
しかし─。
願いは、叶わなかった。
一縷の希望(のぞみ)すらも、絶たれた。
(わたしは、破壊神なんや…、そうやろ?)
幼き頃の思い出を胸に、
薮下シュウが、沖の方を、眺めやる。
破壊の神の化身を前に、前田も、覚悟を決める。
「もしかしたら…、そうなっていたのは、わたしのほうだったかも知れない…、お前は、きっと、“わたし”の未来の可能性のひとつ…、だから─」
それは、悲劇。誰かが、その想い(かなしみ)を理解してあげなければ、答え(明るい未来)に、導いてあげなければ。
それならば─
前田が、拳を、固く握り締める。
「わたしが、この戦争(ケンカ)に、そして、お前の過去に、決着(ケリ)をつけてやる!わたし自身のこの拳(て)で!」
【エリアK】に向かう途中。福本アイナが、ゲキカラに、こんな話をしていた。
「総帥(アイツ)は、もう、限界なんや…、いわゆる、コップに水が、なみなみと注がれた状態ってやつや」
「…少しの振動でも、水が、溢れかえってしまう…、破滅の一歩手前といったところか…」
「二年前、総帥(アイツ)の目の前で、幼なじみが、死んだんや…、それを、いまだに、引きずっとるんやろな…」
「いったい、何があったんだ?」
「それは…、太平洋沖での、船の─事故やった…。そのとき、総帥(アイツ)の幼なじみが、死んだんや…、総帥(アイツ)の所為(せい)でな……」
『また、やりすぎてもうたか?でも、こいつらが、悪いんやで。高校生のくせに、うちら小学生ふたり相手に10人がかりで─』
『あーあ、また、先生に怒られてまうわ!お前は、ほんま、めちゃくちゃするなぁ。こないだも、中学生30人くらい、ぶっ倒したやろ。そのとき、商店街めちゃくちゃにしたん、忘れたんかいな。もはや、破壊王、通り越して、破壊の神やな。破壊神シヴァや』
『なんや、それ!』
『神話に出てくる神様や。なんか、かっこええやろ。名前も、似とるし』
『そうかぁ─。まあ、強そうな感じやな。ほんなら、お前は?』
『うちは、慈愛の女神、美しきヴィシュヌ神さまやな』
『なんか、自分だけ、良い(ええ)ように言うとらんか?』
『いいんやって。うちは、お前のそばに居る(おる)、ずっと、見守っとったる!せやから、誰にも負けるなや。絶対、いつか、日本一のヤンキーになるんやで!シュウ!』
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆
勢いを増し、
沈んでいく巨大な建造物を思わせる大型客船。
甲板には、すでに、
前田敦子と薮下シュウ、二人の
足首に達するほどの海水が、溢れ出していた。
劇薬を飲んだように、
ひとときの間では、あった。しかし、ゾーンを超え、神々の領域に達した前田の精神状態は、確実に、従来の運動能力を引き上げた。
「もっとや…、もっと…」
壮絶な殴り合いの最中。
薮下シュウが、殴られながら、さらに、求める。
海水に足をとられ、ろくな動きの出来ない中で、足を止めて、
真正面からの拳のぶつけ合いが続く。
お互いの拳は、確実に、それぞれの顔面を捉え、衝撃は、意識を一瞬、刈り取るほどのものでありながら、なおも薮下は、前田の拳を求め続けた。
「まだやぁあああああああ!」
その言葉に呼応するかのように、前田が、吠える。
「うおァあああああああああぁッ!」
相打ち。
直後。
倒れたのは、前田のほうだった。
「立てやぁ!前田!まだや、言うとるやろ!」
「はぁ…、はぁ…、わかってるよ…、こんなもんじゃねぇ…、“マジ女”を…なめんなよ」
立ち上がる。
また、再び、殴り合いが始まる。
清々しささえ感じる殴り合い。
その
永遠に続くかに思えた闘いにも、終焉が近づいていた。
何十発目の衝撃だったのだろうか。
大きく、
水しぶきが跳ねた。
それが、
初めて、総帥が、仰向けで倒れたところでもあった。
前田が、言う。
「はぁ…、はぁ…、もう、いいだろう…」
脱出のタイムリミットは、迫っている。
肩で息をする前田に、倒れたまま、攻撃的な視線を突き刺す総帥。
まだや─
そう言っているように、前田には、感じとれた。足りない。
「お前にも、きっと、心配してくれる仲間が、いるだろう…、一緒に、仲間のもとへ帰…」
「……、仲間…やと…?そんなもん、一人もおらん!…なんや、さっきも大層なこと言うとったけど…、結局、お前の仲間らは、最後は、いつも、お前任せやろ!そんなやつらを、“てっぺん”やからって、命を懸けてまで、守る価値が…、ホンマに、あるっちゅうんか?」
「それは違う!」
薮下の問いに、即答し、
キッパリと否定する前田。
「ここまで、来れたのは、仲間たちのおかげだ。それに、わき目もふらず、突っ走る者より…、残された者のほうが…、つらい、そういうこともある…」
その言葉に、総帥は、不敵な笑みを浮かべる。前田の言葉に、まるで、何かのスイッチが入ってしまったかのように。
「半年前、病院でッ!お前の目の前でッ!
救急車で運ばれてきた
お前の親友(マブダチ)が、死んでいったようにか!?」
空白。
「……何を、」
「教えたる…、ホンマは、これが知りたかったんやろ…?」
邪悪な笑みが、総帥の顔に張り付く。
わたしが─と、声を張り上げる。
「わたしが、殺した!わたしが、高橋みなみを殺したんや─!」
「…………」
「高橋みなみの噂は、関西にまで、響いてきとった。わたしは、ひとり、東京へ向かった。タイマンはるために。
その日やった。
夜─。高橋みなみは、ガンギレ高校の連中に、ボコボコにされ、階段を転げ落ちてきた。もう、虫の息やった…、そこで、トドメをさしたのが、わたしや…」
「うあああああああああああああああああああ!」
横から弾丸のように、飛び込んできたのは、白いセーラー服の裾をびしょ濡れにした、肥川アヤメだった。
首のあたりを掴み、揺するように、詰問する。
「やっぱり、お前が…、お前が、みなみを、殺したんだな!」
「だったら、どうやねん?」
「ぶっ殺す!」
殴りかかろうとするアヤメの拳が、とんでくる前に、総帥の額が、アヤメの鼻先にとんできた。頭突き。
バシャ─、と、背中から倒れこむアヤメ。
それを見て、
ゆっくりと立ち上がる総帥─薮下シュウは、薄く、笑う。
「簡単に、『殺す』なんて言葉、使うもんやないで。そんな、覚悟も─、実力もないやつがな」
総帥は、前田のほうに向き直り、
「どうや、前田…、わたしのこと、殺したなってきたか?」
「本当だとしたら…、なぜ…?」
「なぜ─やと?理由が必要なんか?理由があれば、納得できるんか?
理由があれば、赦せるっちゅうんか?理由があれば、死んだ人間が生き返るっちゅうんか!」
「違う!」
そうじゃない。
ただ、根本的に─。違う。
傍らで、いきりたつアヤメを手で制し。
前田は、眉をひそめ。
そして─
「お前は、嘘をついている」
言い切る。
拳を交えて、初めて、わかることもある。拳を交えなければ、決して、わからないこともある。
「お前が、そんなことをするようには思えない。そんなことをしたとしても、まるで、意味がないからな」
あっさりと看破されてしまった総帥は、
しばしの沈黙のあと、大声で笑い出した。
そして─
「ふん!つまらん!でも、東京に行ったんは、嘘やないで。結局、高橋みなみと、タイマン出来へんかったけどな。
もっと、殺意を剥き出しにしてくれや。前田。
結果として、親友(マブダチ)を殺したのは、お前やろ!
このまま、船と一緒に沈みたなかったら、わたしを殺すつもりで、来いや!」
総帥の挑発にも動じず、前田は、告げる。
「──、お前は、なんとなく、『あのとき』のわたしに、よく、似ているんだ…」
半年前。
大切な
親友(マブダチ)が死んで、荒んだ毎日を送っていた日々。
ただ、ただ、自らを呪い、誰かに、罰してもらえることを望んだ『あのとき』の自分に─。
前田は、さらに、続ける。
「お前に、何があったのかは知らない…、ただ、いまのお前は、死にたがってるように見える…、もしかしたら、わたしのように、すべてを捨ててしまいたいほどの絶望が、過去のお前を襲ったのかもしれない。
そして、それ以来、ずっと、ずっと…、その気持ちが、解消されないまま、抑えてきたものが、やがて、限界を超え…、いま─、
誰かに、殺されたいと、願うようになった…、
なぜなら─、お前は、その『死に場所』を、ここに、求めてるからだ!」
「それが、どないしたんや!」
「お前の未来には、もう、『破滅』しかないっていうのか!」
「そうや!その通りや!二年前の『あの日』すべての歯車が狂ってしもたんや!
もう、全部、ぶっ壊れてしまえばええんや!こんな船も、こんな【エリア】(せかい)も…、そして…」(こんな─わたしも…)
半年前。
もしかしたら─
『高橋みなみ』なら、なんとか、してくれると思った。『高橋みなみ』なら、自分を変えてくれると思った。『高橋みなみ』なら─。
そして、会いに行った。
しかし─。
願いは、叶わなかった。
一縷の希望(のぞみ)すらも、絶たれた。
(わたしは、破壊神なんや…、そうやろ?)
幼き頃の思い出を胸に、
薮下シュウが、沖の方を、眺めやる。
破壊の神の化身を前に、前田も、覚悟を決める。
「もしかしたら…、そうなっていたのは、わたしのほうだったかも知れない…、お前は、きっと、“わたし”の未来の可能性のひとつ…、だから─」
それは、悲劇。誰かが、その想い(かなしみ)を理解してあげなければ、答え(明るい未来)に、導いてあげなければ。
それならば─
前田が、拳を、固く握り締める。
「わたしが、この戦争(ケンカ)に、そして、お前の過去に、決着(ケリ)をつけてやる!わたし自身のこの拳(て)で!」
【エリアK】に向かう途中。福本アイナが、ゲキカラに、こんな話をしていた。
「総帥(アイツ)は、もう、限界なんや…、いわゆる、コップに水が、なみなみと注がれた状態ってやつや」
「…少しの振動でも、水が、溢れかえってしまう…、破滅の一歩手前といったところか…」
「二年前、総帥(アイツ)の目の前で、幼なじみが、死んだんや…、それを、いまだに、引きずっとるんやろな…」
「いったい、何があったんだ?」
「それは…、太平洋沖での、船の─事故やった…。そのとき、総帥(アイツ)の幼なじみが、死んだんや…、総帥(アイツ)の所為(せい)でな……」










