#6
「案の定か。ちょっとは期待したんだがな」
高柳アカネが、興醒めしたように言った。
アンダーガールズ総本部司令室にある一階を映し出すモニターには、親衛隊十人衆のニシナカが、監視カメラに向かって、両手を挙げ、ガッツポーズをしている。
コンクリートの床には、口から血を流し、うつ伏せに倒れている前田の姿があった。
「ゲームオーバーですね」
大矢マサナが冷たくつぶやいた。
高柳アカネが、興醒めしたように言った。
アンダーガールズ総本部司令室にある一階を映し出すモニターには、親衛隊十人衆のニシナカが、監視カメラに向かって、両手を挙げ、ガッツポーズをしている。
コンクリートの床には、口から血を流し、うつ伏せに倒れている前田の姿があった。
「ゲームオーバーですね」
大矢マサナが冷たくつぶやいた。
#6
地面に、仰向けに倒れているアルファ。
傍らで、その姿を見下ろすブラック。
「はあ、はあ、なぜ…スピードでは、先輩を上回っていたのに…」
「速いだけでは、ケンカには勝てない。いかに、そのスピードをもってして、相手の死角に入ることができるかが重要なんだ。それに、お前の動きは直線的すぎた。まだまだだな」
「やっぱり…先輩には…かないません…ね」
二人の間に、もはや戦意などなかった。
「本当は…兄のことで、先輩を恨んだことはありませんでした。あれは、事故だったんですから…でも、先輩が、あの事故以来、ふさぎ込んでしまったのが…許せませんでした。また、二人で暴れまわったあの頃の先輩に、戻ってほしかったんです」
「阿部…」
「兄も、元気な先輩が好きだって言ってました。あの事故のあと、私たちは父の転勤で引っ越してしまいましたが、兄は、先輩に笑顔で会うために、必死でリハビリしてました。いまでは、もう、すっかり…。ですから、先輩!もう立ち止まらないでください!」
「そうか…すまない…」
ブラックの
目から、ひとすじの涙がこぼれ落ちた。
「先輩…」
「私は、四年間、お前にずっと赦しを求めていたのかもしれない…」
ブラックの懺悔の思いを聞き、
アルファは、流れ出る涙を拭いもせず、泣き続けた。
(阿部…お前のこと…ずっと、妹のように想っていたよ。そして、お前の名前が、好きだった…)
アルファを、見つめるブラックの慈愛に満ちた表情は、まるで聖母のようであった。
傍らで、その姿を見下ろすブラック。
「はあ、はあ、なぜ…スピードでは、先輩を上回っていたのに…」
「速いだけでは、ケンカには勝てない。いかに、そのスピードをもってして、相手の死角に入ることができるかが重要なんだ。それに、お前の動きは直線的すぎた。まだまだだな」
「やっぱり…先輩には…かないません…ね」
二人の間に、もはや戦意などなかった。
「本当は…兄のことで、先輩を恨んだことはありませんでした。あれは、事故だったんですから…でも、先輩が、あの事故以来、ふさぎ込んでしまったのが…許せませんでした。また、二人で暴れまわったあの頃の先輩に、戻ってほしかったんです」
「阿部…」
「兄も、元気な先輩が好きだって言ってました。あの事故のあと、私たちは父の転勤で引っ越してしまいましたが、兄は、先輩に笑顔で会うために、必死でリハビリしてました。いまでは、もう、すっかり…。ですから、先輩!もう立ち止まらないでください!」
「そうか…すまない…」
ブラックの
目から、ひとすじの涙がこぼれ落ちた。
「先輩…」
「私は、四年間、お前にずっと赦しを求めていたのかもしれない…」
ブラックの懺悔の思いを聞き、
アルファは、流れ出る涙を拭いもせず、泣き続けた。
(阿部…お前のこと…ずっと、妹のように想っていたよ。そして、お前の名前が、好きだった…)
アルファを、見つめるブラックの慈愛に満ちた表情は、まるで聖母のようであった。
#6
アルファの鋭く速い攻撃は、続いていた。
その手刀攻撃を受けながら、ブラックは、後輩の成長ぶりを感じ、なぜか、嬉しそうだった。
「余裕のつもりか?」
ブラックの表情に苛立つアルファは、
さらに、スピードを上げた。
「消えた」
サドには、
完全に、その場からアルファの存在が消え失せたかのように思えた。
次の刹那ー
ブラックの背後に突如、アルファの手刀があらわれた。
(もらった!)
完全に、アルファの攻撃が決まったかに見えた。
しかし、ブラックは、首を左に傾け、右の手で、アルファの手刀を掴んでいた。
「な、なぜ?」
自分の攻撃は確実に決まっていたはずなのにー。
戸惑うアルファの手を、あっさりと離すブラック。
「ま、まぐれだ!」
「そう思うのなら、もう一度、来い!」
言うやいなや、アルファは、再度、姿を消した。
と、同時にブラックの姿も消えた。
空気を切り裂く音だけが響く。数合、いや数十合、目にもとまらぬ速さで、激しく撃ち合う二人。
そして、
両者が、再び、その場に姿をあらわしたとき、勝負はすでに決していた。
その手刀攻撃を受けながら、ブラックは、後輩の成長ぶりを感じ、なぜか、嬉しそうだった。
「余裕のつもりか?」
ブラックの表情に苛立つアルファは、
さらに、スピードを上げた。
「消えた」
サドには、
完全に、その場からアルファの存在が消え失せたかのように思えた。
次の刹那ー
ブラックの背後に突如、アルファの手刀があらわれた。
(もらった!)
完全に、アルファの攻撃が決まったかに見えた。
しかし、ブラックは、首を左に傾け、右の手で、アルファの手刀を掴んでいた。
「な、なぜ?」
自分の攻撃は確実に決まっていたはずなのにー。
戸惑うアルファの手を、あっさりと離すブラック。
「ま、まぐれだ!」
「そう思うのなら、もう一度、来い!」
言うやいなや、アルファは、再度、姿を消した。
と、同時にブラックの姿も消えた。
空気を切り裂く音だけが響く。数合、いや数十合、目にもとまらぬ速さで、激しく撃ち合う二人。
そして、
両者が、再び、その場に姿をあらわしたとき、勝負はすでに決していた。