許容範囲を超えたダメ記事 | 池上秀司のブログ

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これはヒドイ↓


横山光昭の家計再生コンサルティング


この連載をされている横山光昭さんという方は生命保険の実務経験がないのである程度は仕方ありませんが、これは書き手も掲載しているダイヤモンド社も今一度情報の精度を検証するべきでしょう(以下、青字部分引用)。


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保険=保険会社が儲かるしくみになっている

⇒すべての企業が儲けるために仕事しています。こんなのは当たり前のことです。それこそ、「本=出版社が儲かるしくみ」と同じです。いい歳した大人が非常にバカげています。


掛け捨て型の保険の場合、保険会社は途中で契約をやめる加入者に対してする解約返戻金を支払う必要がないので
⇒保険期間長い場合など解約返戻金が発生することがあります。


一部のシニア向けの保険のように、保険料に対して保障が極端に薄かったり

⇒支払いの確率が高い層に対する保険だからこれも当たり前の話。


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私たち被保険者にとっておトク
⇒これは「被保険者」ではなく「契約者(保険料負担者)」の間違い。被保険者というのはあくまで「保険の対象となる人」であり、保険料を払ったり、解約返戻金、満期保険金を受け取ったりする人ではありません。それこそ、「契約者」「被保険者」「保険金受取人」がそれぞれ誰かによって課税関係が変わるという重要な事柄です。なにより「被保険者」に万一があったらおトクどころの話じゃない。


払い込んだ保険料よりも2割くらい多く保険金が支払われるものもあるのです

⇒これは「保険金」ではなく「満期保険金(もしくは解約返戻金)」。以下はソニー生命の学資保険のパンフレットです。


ソニー生命学資保険


例に従えば、「学資保険Ⅱ型」というのは月々4,140円を18年間支払います。仮に加入1年後にご主人の身に万一があれば、それまで払い込んだ保険料は49,680円(4,140円×12ヶ月)ですが100万円受け取れます。払込保険料の2割多いどころの話ではありません20倍超です。「死亡保険金」と「満期保険金」の区別ができていません。


「被保険者⇔契約者」、「保険金⇔満期保険金」と細かいところですが、料理人でいえば「塩⇔砂糖」、「醤油⇔ソース」といったことと同じです。専門家ならば絶対に間違えません。まぁ、ここまででも呆れる部類に入りますが、どーーーしようもないのが「低解約返戻金型終身保険」の件です。


早期解約した場合、解約返戻金は支払ったお金の7割程度まで減らされてしまうため、3割以上の大損をすることになります
⇒読んでいるコチラが情けなくて泣けてきます。低解約返戻金型終身保険というのは、払込期間満了日が終るまでの解約返戻金を通常の終身保険の解約返戻金の7割程度に抑えた保険であり、既払込保険料の7割にした保険ではありません。代表的なのは東京海上日動あんしん生命の「長割り終身」ですが、以下をご確認ください(横山さんと記事を担当した元山夏美さんは100回読んでください)。


東京海上日動あんしん生命 長割り終身 よくある質問
長割り終身は、低解約返戻金期間(ご契約日から保険料払込期間が満了する日の24時まで)の解約返戻金は、当社「5年ごと利差配当付終身保険」の解約返戻金の70%になっていますので、その分保険料が割安です。(既払込保険料に対して70%の解約返戻金があるということではありません。)


ですから、「短期で払い済みにすることも」とありますがとんでもない話です。「払い済み」というのは、払い込み期間中に以後の支払いを止めて、その時点の解約返戻金を原資として、その分に見合う保険金額の終身保険に変更することをいいます。低払解約返戻金型終身保険の払込期間中の解約返戻金は、通常の保険の払込期間中の解約返戻金に対して約7割に抑制されているのですから、解約返戻金が少ない時期に払い済みにするということ。全然トクしません。これは「払込満了」の間違いです。


払い済み保険について


要は10年程度の「払込満了」にすれば、満了後には解約返戻金の抑制が解かれるので解約返戻金が通常の保険と同様の額になり、それまでに払い込む保険料は通常の保険よりも少なくて済んでいるのでおトクということです。これも「払い済み⇔払込満了」と細かいかもしれませんが、絶対に間違えてはいけないところです。


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自分達に有利な商品ばかりゴリ押ししてくる場合もあります。もちろん、保険会社の営業マンも同じで、その売り文句にはかなりバイアスがかかっていると考えるべきでしょう

⇒確かにそういう人間もいるが、そういう人間ばかりではありません。このコメントこそがバイアス掛かりまくっています。以下を読めば下衆なポジショントークということは明らか。


FPの私がいうのもなんですが、FPの中には保険を研究し尽くしている保険オタクもたくさんいる
私はそんなFPを知りません。だいたいが真っ先に「ネット生保」とか口走っている連中ばかり。独立FPでは保険の設計ができないのだから、細部に渡る商品情報は売っている人達に勝てっこありません。現場の専門家との良好なネットワークを作ることが独立FPにとって重要な要素です。こんな記述で一端のFP気取りをされては私も迷惑です。


保険代理店や銀行などの不勉強なスタッフよりは、確実に適切な商品をアドバイスしてくれます
まずはあなたの不勉強を解消してください。こんな基本的なことすら理解していない人間が現場にいる人達を蔑むのは100年早い。独立FPの私が「独立FPにアドバイスを求める」という意見を否定するのも変な話ですが、少なくとも横山さん“なんて”この記事を読めばわかる通り「なんて」のレベルです。独立FPなら誰彼構わないということではありません。もちろん独立FPの方でも、保険会社の方でも、代理店の方でも私より優秀な方がいらっしゃることも認識しています。


一番気軽なのは、ネットで申し込む保険かもしれません。ライフネット生命やネクスティア生命、オリックス生命はネット直販の保険があり、保険料が安く手続きも簡便です
⇒ここで知識不足を自ら露呈。横山さんのような節約指南者なら収入保障保険が最優先になるべきですが、上記3社のうち収入保障保険をネット申込できるのはネクスティア生命のみオリックス生命は対面で加入ライフネット生命にあっては収入保障保険の取り扱いがないので論外。ライフネット生命を勧めるなんていうのは「私は保険の知識がありません」と自己申告しているようなもの。


というように、これはとんでもない記事です。横山さんにおいては時期尚早。まだ「エアFP 」です。知識も実力も不足していて金融商品に口出しせず、お小遣いとか交際費とかそういう話だけする方が賢明です。こちらの世界の話がしたければ、どこかの保険会社に勤務してしっかりと基礎から学んだ方がいいでしょう。私にご連絡いただければ何社かご紹介します(入社できる保証はありませんが)。


ダイヤモンド社においてはお話になりません。この数年、まともな記事を一度も見たことがありません。週刊誌も単行本もネットも、現在保険担当の記者、編集者を全員交代させるところから始めるべきでしょう。嘘、捏造、偏見、間違いのオンパレードですから、このままなら世のため人のためにも黙っているべきではないでしょうか。


保険代理店やコンサルティング営業の言葉は鵜呑みにしない」とありますが、一般の方達はなによりもこういう間違いだらけの記事を鵜呑みにしないでください。