
「うき世櫛」中島要 双葉社
2016年発売の作品
元芸者の女髪結い「お夕」
売れっ子芸者だっただけあって人目を引くほどの美貌だが、横顔に大きく刀傷がある
お夕は「こんな顔を好きな男に見られたくないから芸者をやめたのさ」と言っていたが…
その「お夕」の元で住込み弟子をしている「結」
元は浪人の娘でふた親に死なれ奉公に出るが要領が悪い結は奉公先を追い出され元の長屋へ戻って首をくくろうとしたところをお夕に助けられ、そのまま弟子に
二年が経つが、不器用で髪結いの腕はなかなか上がらず、お夕には怒られっぱなしの毎日
奢侈禁止令が出され、華美な装いは全てが取り締まりの対象になり、女の髪結いも大っぴらな商売はできない
それでも女は隠れてでも髪を結ってもらいたい
お夕は、そんな女に手助けしたいのだ
話の内容は、お夕の客が抱えるそれぞれの悩みや女の業
海で亡くなった許婚を思い続けてやせ細りながらもお夕に髪を結ってもらい続ける娘
妾の子を我が子と思い育てる母
長屋の女房の裏切り
お夕の顔に大きな刀傷の本当の理由は何なのか
気の利かない世間知らずの結が、失敗と失言を繰り返しながら少しずつ成長していく様を短いエピソードで上手く表している
読んでいて、あーこれはうっかり口にしない方がいいと思って口を噤んだな、とか
お夕と結の関係は、昨年の9月に読書感想を載せた2022年の作品「吉原の外」での主人公二人にも似ている
こういうコンビが好みなのね
この作家の特徴とも言えるラスト、ハッキリとした結末にはせず、ニ人の生活が続く…という終わり方