「江戸の茶碗」中島要 読了 | pyonpyon ブログ

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松任谷由実。



「江戸の茶碗 まっくら長屋騒動記」
中島要 祥伝社

2015年刊行の作品です



まっくら長屋と呼ばれている長屋の住民の身に起こる数々のトラブルを自身も何か怪しい気な酒浸り浪人の赤目勘兵衛が手助けしながら解決する話



始まりの話は、店を乗っ取られた上に両親を亡くした兄妹が働きながら取られた店を買い戻そうと頑張る中、高価な茶碗と騙されて手に入れた「井戸の茶碗」

なけなしの金を失った兄妹に何とかしてやろうと声をかけたのが隣の部屋に住む浪人だった…



最初は、あぁ健気な妹が後に幸せになるとかの話か?と退屈に思って読んでいましたが、そこは中島要作品、そんなつまらない展開にはならない


この、ひと癖も二癖もある浪人が面白い人物で、彼もまた見た目からは想像できない過去を持つ



この作品も、文章が面白い



例えば「遺言」では

吉原の花魁に入れあげている若旦那、自分の代になりとうとう商売が傾く

番頭が探してきた、後ろ盾になってくれるという大店の八つも年上の嫁き遅れの娘を嫁にしなければいけないことになる



その娘についての栄太郎(若旦那)の気持ちを表現する文章が笑える


「襟の先から突き出た顔はまるで巨大な大福だった。自分の倍もありそうな太った女を前にして寒くもないのに身体が震える」



許婚(件の娘)の父親から「後ろ盾になって店を支える」との有難い言葉に頭を下げる番頭の横で当の若旦那はというと…


「栄太郎はひとり魂を飛ばしかけていた



長屋で母と二人で暮らす定吉との話や浪人赤目勘兵衛の話も含めて結末も含めて厭きさせない面白さ



中島要は外れながないね


最初の兄妹の人情話とその後の話は同じ人情話でも面白さが違うので止めずに読み勧めてもらいたいな