私は物事に熱中するタイプだった。
じゅうぶんな才能と有用な方向性である限り、これは非常なアドバンテージになる。
数学が好きで、才能があれば、ABC問題だって解くだろう。
将棋が好きで、才能があれば……言うまでもない。
残念ながら、私には才能が欠けていた。
というわけで現状のような体たらくとなっているわけだが、幸いにも他人に迷惑をかけるような負の側面はなかったので、社会的には許してもらえると思う。
部屋で静かに本を読んだり文章を書いたりしている分には、だれも傷つけようがない。
いい趣味で助かった。
しかし残念ながら世の中、そういう人ばかりではない。
物事に熱中するタイプは、良い側面もあるが、悪い側面もかなり多いことを認めなければならないだろう。
たとえばゲーム。
熱中するのは良いのだが、それ以外の要素がスコーンと抜けてしまうと、社会人としてどうかという生活に陥ったりもする。
最近、コロナで引きこもり生活が長引いて、ゲーム依存が増えているという。
その集中力を別のところに生かせばいいのに、と思う。
子どもの集中力は、とくに恐ろしい。
自分でも高校時代、一週間ほとんど寝ずにゲームをしていたことがあったが、いま思うと逆に感心したりもする。
ときどきスマホで地理のゲームをやったりする現在、1時間どころか15分で疲れてしまう。
人生も折り返しを過ぎると、もう集中力がもたない。
年はとりたくないものだ。
昔の自分に、この貧弱な集中力を分けてやりたい。
当然、ゲームばっかりしていると怒られる。
が、いまの時代、プロゲーマーという道も開けているので、必ずしも否定ばかりできないのが難しいところだ。
とくに趣味の世界で、異常な執着を示すタイプは、危険だ。
自分はもちろん、他人も巻き込むようになってくると、これは笑っていられない。
代表格の例を挙げよう。
撮り鉄だ。
撮り鉄の言動でいちばん笑ったのが、仕事をしている駅員に対して「邪魔だよ!」と叫んでいる動画だ。
駅員が写り込むのは許せない、電車だけ撮らせろ、ということらしい。
私は駅の側の事情も、撮り鉄の側の事情も、それほど詳しくは知らない。
が、すくなくとも次の2点は理解している。
「仕事」をしている駅員。
そして「趣味」の撮り鉄。
これ以上、説明する言葉も必要もないだろう。
邪魔て……。
全国各地からツッコミの声が起こったことは言うまでもないが、当人は、たぶん本気で言っている。
だからこそ笑えるのだろうと思う。
写真を撮りたいので少しどいてくださいと「お願い」するのさえ、おかしい。
それが、仕事をしている駅員に、どけと「命令」するのだ……。
ここだけ切り取られると、撮り鉄は頭がおかしい、と見える。
あえて暴言を吐かせてもらえば、たしかに彼は「バカ」だ。
バカだからこそ、おもしろい。
撮り鉄が全国で無双をするエピソードは、読んでいて(ある意味)じつに爽快だ。
最初から悪役として切り取られることに違和感もあるが、事実なので致し方ない。
好意的に取り扱う方法を模索したいところだが……。
そもそも「カメラ」という趣味そのものが、自分の世界に入りやすい危険な代物だ。
そこに「鉄道」という危険物が加わるのだから、危険度は倍どころではない。
植物とか自然写真なら、周囲にはあまり人がいない。
比較的安全だ。
しかし、「公共交通機関」だ。
非常に多くの人間が利用する……もう危険のにおいしかしない。
あえて擁護するなら、これだけ危険要素が積み重なっているにしては、撮り鉄の被害はまあまあ少ないほうじゃないかな、がんばってるんじゃないかな、といったところか。
撮り鉄の方々には、相応の努力を惜しまずに共存していただきたいと思う。
が、おとなしすぎると、それはそれで退屈だ。
そろそろ炎上ネタを投下してもらえると、応援しがいもある。
機関車を撮るためなら「死」も厭わない。
あの狂気の撮り鉄っぷりを、どこぞの新駅あたりで発揮するツワモノはおるまいか。
いや、まあ冗談ですがね……。