84番 自分を譲ることができる人は
84番目の詩。喫茶店で隣の席の若者の孤独を感じながら。
自分を譲ることができる人は
愛されたことのある人。
自分を譲ることができない人は
愛されていないことに確信をもっている人。
喫茶店のガラスで仕切られた部屋で
若者は黙々と制作の作業をしていた。
ガラス越しに、たまたま隣り合った僕は
共有の空間が独占されていると感じてしまった。
急に僕は孤独に襲われて、
愛を喪失したようで、
怖くなり、
青い空を想像した。
辛い時に、ふと僕を癒してくれた水仙の花や
僕に無償の愛をそそいでくれたおばあちゃんや
会議で裏切られた後に心に染みた夕焼けを想像した。
そして、あなたに、ありがとう、と言ったら孤独が消えた。
83番 ジャガイモや人参や玉葱
83番目の詩。一番だと叫んでいる声を聞いて。
ジャガイモや人参や玉葱
そして僕の場合は豚肉、
鍋もガスも協力して、
きっと美味しいカレーができるだろう。
ジャガイモが一番だ、
人参が一番だ、
豚肉が一番だと争っても
奇怪なカレーができてしまうだろうに。
鍋の中でコトコトと茹でられて
それぞれが溶け合いながら
それでも、それぞれの形を留めながら
美味しいカレーになっていく。
沢山の民族が集まって
人と文化が溶け合って
今までにない愛が実現されるだろうに、
人類が信頼して生きていけるだろうに。
一番だと騒ぐジャガイモや
イエスマンの人参や玉葱が
美味しいカレーを作ろうとしても
鍋もガスも、僕の場合は豚肉も協力しないだろうに。
82番 霊感が降りて来る
82番目の詩。文学の影響を身にしみならが。2016年12月30日。
霊感が降りて来る、
そんな体験をしたことがある。
高校の教科書だったろうか、
走れメロスを読まされて、感動してしまった。
浪人生のころ、
恋人に借りたデミアンを読んで、
僕の魂は釘付けになり、
結局、彼女と別れる羽目になった。
大学生のころ、夕食時、
テレビのアニメでマッチ売りの少女を見ていた。
鼻から涙がたれてきて、
何やら塩辛いご飯になってしまった。
敬愛する教授の授業で
ハムレットを読まされた。
僕はどうしようもなく狼狽した。
ハムレットに僕自身を発見した。
人間失格に自分を発見した青年に出会った。
今、僕はどうしようかと思っている。
ハムレットも葉蔵も破滅へと突き進む。
だが、太宰は自殺し、シェイクスピアは生を貫いた。