イー・アクセスとウィルコムが合併するようです。
特に面白いこともなさそうですが、一応、税務上の取扱いを確認してみましょう。
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両社はソフトバンクのほぼ完全子会社で、2014年4月1日を効力発生日とし、イー・アクセスが存続会社としてウィルコムを吸収合併します。
「ほぼ」完全子会社というのは、ウィルコムはソフトバンクが株式を100%保有している一方、イー・アクセスはソフトバンクが株式の99.6%を保有しており、議決権比率を1/3未満とする目的で、議決権のあるB種種類株式の2/3を第三者に保有させている為です。
税務上は、ソフトバンクが両社の株式数の過半数を保有していることから、支配関係のあるグループ内企業同士の合併という扱いになります。
この場合、適格要件は被合併法人(ウィルコム)の、主要事業の継続見込みと従業者の引継ぎ見込みです。おそらく問題なく適格合併になるでしょう。
尚、ウィルコム株主(ソフトバンク)に交付される合併対価は合併法人(イー・アクセス)の株式でなければ適格合併にはなりませんが、開示資料上、合併対価は未定となっています。そういう意味では適格合併かどうかまだわかりませんが、まずは対価を株式とする前提で更に検討を進めます。
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次に、グループ内の適格合併の場合、一定の要件を満たさないと合併法人及び被合併法人の繰越欠損金の使用や引継ぎ等に制限が生じる可能性があります。
ソフトバンクによる支配関係の発生から5年経過していればこの問題はありませんが、支配関係の発生はソフトバンクがイー・アクセスを株式交換で買収した2013年1月ですので、この要件は満たせません。
この場合、繰越欠損金の使用・引継ぎ等の制限を避けるためには、「みなし共同事業要件」を満たす必要があります。
みなし共同事業要件の1つ目は事業の関連性ですが、この点は両社ともに電気通信事業の会社で、問題ないでしょう。
2点目は経営参画要件(特定役員(常務以上の役員)の引継ぎ)ですが、この点については現イー・アクセスは社長続投で問題ありませんが、ウィルコムの特定役員がイー・アクセスでどうなるのか開示されておらず、何とも言えません。ウィルコムの執行役員の方がイー・アクセスの副社長になるようですが、執行役員は税務上の特定役員とは認められないものと思われます。
経営参画要件ではなく、規模要件・規模継続要件でクリアすることも可能です。これは、両社の規模(売上高、従業者数、資本金)を比較し、いずれか1つが合併時点で概ね1:5の範囲内で、且つ、各社のその規模の支配関係発生時からの変動が概ね1:2の範囲内である必要があります。
この点、両社の資本金は1.5億円と432億円で話になりませんが、会社レベルの売上高、従業員数は概ね1:1.5の範囲内くらいで(主要な事業に係る数値や従業者数の定義等、詳細は検証できませんが)、開示資料からも支配関係発生時から大きく動いているとは思えませんので、おそらくこの要件は満たせそうです。
従い、合併の対価が株式であれば、本合併はグループ内の適格合併で、みなし共同事業要件を満たすことで繰越欠損金の引継ぎ等も可能と思われます。
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一方、合併の対価が現金等の場合、本合併は非適格合併になります。
合併の対価をどうするかは、実際はソフトバンクの裁量でしょうから、ある意味どちらにも持っていけそうではあります。
非適格合併の場合、ウィルコムは自社の資産・負債を時価でイー・アクセスに譲渡したものとして課税関係が生じます。
開示資料の範囲で推定すると、ウィルコムの2013/3末の純資産は561億円、ソフトバンクが子会社化した2013/7時点の公正価値は1,041億円です。従い、差額となる含み益は480億円程度と考えられます(税前へのグロスアップの要否という議論もあります)。
ウィルコムにどの程度繰越欠損金があるのかわかりませんが、かなりの譲渡益が出そうですね。
この譲渡益は合併法人(イー・アクセス)において税務上の暖簾となり、償却して税金を取り返すことが可能ですが、イー・アクセス自身も非適格株式交換で認識した営業権の償却費が多額発生していますので、税資産の回収可能性の問題もありそうです。
また、株主であるソフトバンクでは、ウィルコムへの投資簿価3億円に対し、ウィルコムから分配される現金はおそらく1,000億円程度です。この内、ウィルコムの税務上の資本金等の額(会社更生による100%減資前の資本金が50億円でしたので、50~100億円程度でしょうか?)までは株式譲渡の対価となり、投資簿価3億円との差額は株式譲渡益として課税されます。残りの900億円程度はみなし配当として実質非課税となり、イー・アクセス株式の簿価に算入されます。
みなし配当により投資簿価が引き上がれば、将来的に売却した場合の課税が抑えられるメリットがあるわけですが、売却予定がなければあまり意味はないかも知れませんね。
尚、合併対価を現金にする場合は1,000億円近くの現金をイー・アクセスが調達する必要があります。
これをソフトバンクが増資等で支払っているような場合であれば、租税回避行為として否認されるリスクもあるかも知れません。もちろんイー・アクセスの他株主との出資比率の維持といった事業上の目的も考えられますし、まずは課税が発生するわけで、これを更正するというのも考え難くはありますが。
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さて、ソフトバンクが本合併を適格とするか非適格とするか、今後の開示を楽しみに待ちたいと思います。
(3/29追記)
ヤフーによるイー・アクセスの株式買収が公表されました。これにより、この合併は非適格になるものと思われます。詳細はこちらをどうぞ。「ヤフーの株式買収とイー・アクセス/ウィルコムの非適格合併 ~ ソフトバンクの税務戦略」