セブン&アイがカタログ通販のニッセンをTOBで子会社化するようです。
なかなか面白そうなので、早速開示資料を見てみました。
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具体的には、セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社であるセブン&アイ・ネットメディア(以下、セブン)がニッセンホールディングス(以下ニッセン)にTOBを行います。
買付の上限は新株予約権の希薄化後の議決権ベースで50.1%、下限は30.0%です。この30.0%については上位3株主とTOB応募契約を締結済です。
TOB価格は410円。前日終値の322円に27.3%のプレミアムが乗っています。株価410円ベースで今回の買付総額は126億円となります。
そしてニッセンは引き続き上場維持だそうです。
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で、面白いのは、ニッセンが同時に第三者割当増資を取締役会で決議している点です。
この増資を引き受けるのはセブンですが、これはTOBの結果、50.1%の株式を取得できなかった場合に、増資後の議決権が50.1%になるところまで増資を引き受けるものです。単価はTOBと同じ410円で最大101億円相当です。
つまり、TOBで上限以上に応募が集まれば、増資は行われません。逆に、応募契約締結済の株主以外誰も応募しなかったとしても、この増資によりセブンは議決権の50.1%を獲得します。
これって、ある意味、セブンがTOB価格410円で支配株主となることを一般株主に強制しているようなものですが、問題ないのでしょうか。
一応、IT投資や借入返済等、101億円の資金使途も記載されていますが、TOBで応募が集まれば増資は行われないわけで、実際にはどう考えてもセブンを50.1%の支配株主にするのが主目的ですよね。
この点、東証の規則では、第三者割当増資で、希薄化率が25%以上(本件では40%程度)又は支配株主が変更する場合は、独立した第三者からの意見取得又は株主総会決議が求められます。
本件はまさにこれに当りますが、ニッセンでは、社外取締役及び社外監査役による第三者委員会を組成し、本増資の必要性・相当性について問題ないとの意見を取得したようです。
なるほど、ちゃんと規則を遵守しています。
この意見によれば、一般株主はニッセンの企業価値向上を期待してTOBに応募しないとの判断もありうる、と。まあ、そういう考え方もありますかね。
言い方次第ですが、少なくともTOB価格に不満で支配株主の登場に反対だから応募しない、という選択肢はなくなります。
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ちなみにTOB価格410円ベースで、ニッセンの時価総額は252億円(予約権希薄化後)。
2013/9時点の純資産は256億円(のれん除く)ですので、ほぼ純資産相当で、のれんはほとんど発生しません。公表前の株価だとPBRは0.8くらいだったんですね。
同じく2013/9時点のnet有利子負債は243億円なので、本TOBは企業価値ベースで495億円のvaluationになります。
一方、EBITDAは2011/12期で43億円、2012/12期で38億円、2013/12期予想ではおそらくほとんどゼロという感じです(会社公表の営業利益予想が▲28億円、前期の減価償却が32億円といった水準)。
業績が急下降しているので単純なマルチプルも難しいですが、十分に高値を付けた印象ですね。
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ということで、今回はこんな感じです。
ただの株式取得で、会計・税務的にはあまり面白みはありませんか、第三者割当増資に係る東証の規則をしっかり遵守している事例でした。
ちゃんちゃん。
(12/4)補足です。
プレスリリースから2日経った12月4日の終値は419円でした。取引開始直後にストップ高となる477円まで上昇した後、419円まで下がっていった形です。
TOB価格は410円ですが、この値動きはどういう意味なのでしょうか。
今回のTOBは50.1%の上限付きですので、必ずしも市場株価がTOB価格に収斂するとは限りません。応募数が買付上限を上回った場合は、比例按分方式により一部の株式は売却ができず手元に残ります。
ここで、410円以上の価格で株式を取得するのは、①TOB価格410円は支配株主の評価としては低く、TOB価格の引き上げを期待している株主、或いは②TOB後も継続保有することでセブンとニッセンの相乗効果により410円以上の株価が実現すると期待している株主と思われます。(短期的な値動きを狙った投機的な動きも相当あるとは思いますが)
しかし、今回のTOBでは410円による第三者割当増資がセットになっていますので、セブンにはTOB価格を引き上げるインセンティブも必要性もありません。
とすると、①の期待は実現しませんので、基本的には②ということなのでしょうか。
しかし、そうであれば、本当にTOB価格410円という水準が妥当なのか?という疑問も湧いてくるところです。第三者割当増資による「支配権獲得の保証」がなければ、場合によってはセブンはTOB価格の引上げを検討せねばならなかったかも知れないわけです。
そうであれば、この増資決議によって一般株主の価値を毀損したことになります。
ま、結局、終値は410円に近付いていますし、本件については、個人的には410円は十分過ぎる価格だとは思いますが。。
少なくともTOBに応募しても410円で全株売却できるわけではないにも拘わらず、株価が410円を上回っているのは、やはり買収シナジーの期待によってニッセンの本質的な株式価値が上昇したとみるのが自然なんでしょうかね。