※※ この本を読んで一言 ※※

私の大好物のメフィスト賞受賞作を久しぶりに読みました。

この作品が面白いかどうかは別にして(汗)・・相変わらずバラエティに富んだ賞レースですね。

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メフィスト賞受賞作を読むのは3月に石黒耀さんの「死都日本」を読んで以来、約4か月ぶりになります。

本当はもっとハイペースで受賞作を読みたいのですが、読み尽くしてしまうともったいないので、ゆっくり読むようにしています(笑)。

 

矢野龍王さんの作品を読むのも初めてで、タイトルからして推理合戦モノの雰囲気を出しているので、これは本格推理モノかと思い、テンションも高めに読み始めました。

 

そしたら何とデスゲーム系だったとは!

私はデスゲームの小説を読みたいと思っていたので、これはラッキーと思いさらにテンション高くして読み進めました。

 

今まで私が読んだデスゲームと言えば山田悠介さんの「ドアD」と米澤穂信さんの「インシテミル」、そして貴志祐介さんの「クリムゾンの迷宮」ですが、この「極限推理コロシアム」は「インシテミル」にテイストが近いと思います。

 

クローズドサークルでの犯人捜しと同時に、同じ境遇のもう一つのクローズドサークルの犯人も探さなくてはいけないという難題に挑む登場人物たち。

読んでいてもどんな結末になるのか全く分からず、終盤まで高いテンションを維持したまま一気に読むことができました!

 

しかし・・やはりこの作品も「デスゲーム」の例にもれず、デスゲームのテンプレを踏襲していて既視感が満載です(汗)。そしてツッコミどころも!

 

いきなり誘拐され強制的にゲームに参加させられたいろいろな立場の人々、結局謎のままの主催者とその目的、趣向を凝らした殺人ゲームのルール、生き残った主人公の男性とパートナーだった女性などなど。

 

しかしこの作品ではテンプレではない2つのクローズドサークルの戦いという新しいものを生み出していますし、例えテンプレであっても面白ければいいので、これは悪いことではないと思います。

 

ただこの作品においての主人公の駒形はなんかズルいです(笑)。

「主人公補正」が効きすぎているというか、途中から絶対に駒形は死なないんだろうなという謎の安心感が足を引っ張ります。

 

また冬の館との通信を切らずに一方的に聞き続ける事ができる「盗聴」を発見してからは、一気に冬の館の情報を手に入れるようになってからは、完全なワンサイドゲームになり緊張感がなくなってきました。

 

そして極めつけは終盤に突然駒形の閃きの

「木場→牙→冬の館にあるセイウチの像の牙は2本→犯人は冬の館に2人いる」

という推理には驚きました。

 

私や多くの読者は夏と冬の館に一人ずつ犯人がいると思っていたし、夏の館と冬の館は物理的に離れたところに建っていると思っていたでしょうから。

しかし突然のひらめきは読んでいて「ご都合」と思わざるを得ません。

 

そして生き残った駒形と篠崎はなぜか館の中だけの記憶を失い、なぜか川原で2人は出会う・・これも感動のラストというよりご都合に思えます。

 

他に疑問だったのは、殺人者は立石と尾花でしたが、蘇我に自白を強要されたときに2人とも抵抗しなかったのでしょうか。

殺人ゲームの中で確実に殺人を実行するために、それなりの殺人術の訓練を受けていてもおかしくないのに、尾花は蘇我にあっさり殺されたようです・・抵抗して蘇我を殺してもゲームに影響はなかったと思うんですけどね。

 

最初から終盤までスリリングで面白かっただけに、私にはアラとして目についてしまったのでしょうね。

 

いろいろツッコみましたが、一気に読める良作だったと思います。

矢野さんの他の作品をぜひ読んでみたくなりました。

 

(個人的評価)

面白さ    ☆☆☆

スリリング  ☆☆☆☆

ツッコミどこ ☆☆☆☆

主人公補正  ☆☆☆☆☆