※※ この本を読んで一言 ※※

ちょうど3月11日の東日本大震災を挟んで読んだ災害を題材にした小説です。

火山の噴火については知らない部分があまりにも多かったことに気付かされるとともに、歴史的に見ても日本、そして世界は火山と共に生きてきたかよく分かりました。

さすがメフィスト賞受賞作!勉強になります。

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久しぶりにメフィスト賞受賞作でも読もうと思い、手に取りました。

この「死都日本」は早めに入手はしていましたが今まで読むのを後回しにしていたのは、単行本サイズで、しかも500ページ超なので本としてデカい(笑)!!

今回はちょっと気合を入れて読み始めましたが、その大きさのせいか電車の中では読みにくく時間がかかりました(汗)。

 

今まで私は災害というと、ほぼ「地震」と「水害」をイメージしていました。

災害は噴火の他にも森林火災や竜巻などの風によるもの、雷などいろいろあるんですけどね・・

 

その中でも地震や水害は日本で頻繁に起きますし身近な存在ではありながら被害も大きく恐ろしいものですが、火山の噴火は噴火の規模にもよりますが地球規模で影響を及ぼすので、ある意味被害が最も大きくなる災害でしょう。

 

そんな「破局噴火」の中でのいろいろな立場の人の戦いが描かれています。

現地で必死に生きている一般人、日本の総理大臣、アメリカや中国の大国の指導者たちの思惑などが交互に出て話に深みが出ています。

 

ちなみに現地の一般人からアメリカ大統領の心情を表現している作品として高野和明さんの「ジェノサイド」を思い出しました。

 

話の展開としては、正直、終盤の菅原の演説前までは面白かったです。

黒木と岩切の決死の避難や、それぞれの立場の人の話が目まぐるしく変わっていく展開していく様はとても面白かったです。

 

特に黒木と岩切の避難は2人が一緒でなければ確実に死んでいたので、この2人がともに行動するのは運命だったのでしょう(笑)。

 

「K作戦(神の手作戦)」の成就のための菅原の演説は一見素晴らしいモノに思えますし、作中では『時間の経過と共に、関係者の間で「神の手作戦」は神話と化していった。』とあるので、復興が進んだと思わせます。

ラストでは東海地震と東南海地震が起きようとしていましたので、「破局噴火」プラス「巨大地震」も乗り越えて日本という国が復興していくと思われるので、作中では悲劇の後であっても希望が持てました。

 

ただ正直、現実には作中の菅原の理想のようにはうまく事が運ばないと思うので、噴火も地震も小出しでエネルギーを放出してもらい、大きく被害が出るものは後に先延ばしにしてもらいたいというのが本音です(汗)。

 

この作品は資料としても価値のあるものだと思います。

専門的な説明を省くと本の厚みは半分以下になると思います(笑)。

 

噴火の様子や、人間の居住地における被害状況もとてもリアルで、ひとたび噴火が起きれば現実に起きることを想定して描写されているのでしょう。

 

また一般的に誤解されている事も作中で指摘されていて、雲仙普賢岳の火砕流は厳密には火砕サージだったというのは、知りませんでした。

確かに噴出物がドドッーと斜面を下ってくるのを火砕流だと思っていました。

そして「災害は冬に起きる」というイメージはありますが、これは単なる幻想のようですね。

 

作中のエピローグでも語られていますが、人間目線で「破局噴火」で社会生活に壊滅的な被害があっても、地球からしてみればくしゃみを一つした程度の事で、長い歴史の中の一瞬の活動のひとつにすぎないわけで・・そんな地球に住まわせもらっている人間としては、地球を支配や制御していくのではなく、いかに共存していくかが大切なのだと改めて思いました。

 

(個人的評価)

面白さ     ☆☆☆☆

登場人物    ☆☆☆☆

リアリティ   ☆☆☆☆☆

災害の恐ろしさ ☆×100