この物語を読んで、典型的なデスゲーム系+ミステリーという印象でした。
 
デスゲーム系は最近では「 ドアD 」を読みましたが、二つに共通する傾向として最後まで黒幕は誰とかゲーム主催の目的をはっきり明かさないようです。
もともと非現実的にも程があるデスゲームなので、細かいことは明かさないほうがより謎が深まっていいのかもしれません。

 

そしてラストも関水は復讐?(10億円が借金とは思えないので、家族が人質にとられて身代金が必要??)、岩井は自殺?、結城には招待状が届くなど、どれも不吉な感じでスッキリしません。

 

 

特に結城のラストは「ドアD」のラストでもあった「本当の戦いはこれから始まる」です。デスゲーム系ってこういう終わり方の傾向でもあるのでしょうか。

 

 

内容は読みやすくて、とても面白かったです。

 

謎に関しては関水が嘘の武器を申告したのは驚きました。

 

しかしそれ以上になぜと思うことが多く、内容よりもそっちが気になりました。

 

 

まずは暗鬼館でのルールは敢えて作者 米澤穂信さんが微妙にしているのかなと思うものでした。

 

ルールや武器の選定などが何となくあいまいなであるため、本当に<主人>は殺し合いという実験をやらせる気があるのかと思ってしまいます。

 

そして収監後のペナルティが全然ないのは拍子抜けです。

 

参加者にしてみたら監獄の中がどうなのか分からないから入るのは不安ですが、これだったら収監されたらある意味ラッキーですね。

 

そして躊躇の間に入るとエネルギーの供給がストップさせて本当に出るべきなのか躊躇させるっていうのは本当に効果あるのか?

 

そしてエネルギーストップで監獄のロックが解除されるのも<主人>の想定通り?それともただのミス??

 

監獄の使い方としては、物語の中でもポイントのように言われている「正しく謎を解くことじゃなく、殺人犯を多数決で決めて排除すること」とあります。しかしこれを忠実にやると、安全策を取る連中がグルになって、ただ危ないと思う奴を多数決で監獄に送り込んでしまい、逆によけいに殺人が起きなくなるのではないかと思います。

 

 

それに夜に出歩いてガードからの警告か3回を超えたらガードが殺害し、ガードに殺害されてたら弔慰金3億円を支払うって・・殺し合いをさせていのに、なぜそんなルールが存在するのか分かりません。

 

 

まだいろいろありますが、今回の暗鬼館は実験だから穴だらけでも仕方がないと思っているのでしょうか。

 

 

それにしても次のデスゲーム“明鏡島“の主宰者が須和名らしいので、須和名が暗鬼館で求めていたモノはお金ではなくて、指1本の意味は、“イチ”ではなく“ヒト”(人材)とうことだったようですね。須和名は最初から結城に目星をつけて、暗鬼館に来るよう仕向けたようでしたから。

 

 

だったら明鏡島では、本格ミステリーに真っ向から取り組んで、「ヴァン・ダインです。」を超えたモノを期待したいです。たぶん出ないと思いますが・・

 

 

タイトルのインシテミルは文中に「・・内輪の話に淫してみても・・」から取っているようですね。なおわたしは「淫する」という言葉も初めて知りました。

 

 

このタイトルと物語は米澤さんの古典や本格的なミステリーに対しての皮肉と敬意の両方が込められているのだと思います。

 

 

そして「空気の読めないミステリ読み」はこの物語を読んであーだこーだ批評するであろう、私を含めたミステリー小説好きを皮肉ったものなのかもしれません。もしくは米澤さん自身の自虐なのかもしれません。

 

 

私は「空気も先の展開も読めない新参ミステリ読み」なので、12人のインディアン人形が出てきたときに最後は全員死亡かと思ってました。

 

 
なお私は新参ミステリ読みなので、メモランダムや岩井との会話で古今東西のミステリー小説の名前が出てきましたが、私は「犬神家の一族」と「 十角館の殺人」くらいしか読んだことないような気がします。

 

インディアン人形を出しておきながら意外と多くの参加者が生き残っているし、監獄の中の結城も岩井も酷い目に遭っているわけでもなく、和気あいあいと推理をしていて、密室がないのはダメだとかメモランダムについて結城と岩井がいろいろツッコむなど、ある意味わざとミステリーっぽい展開から外しているのではないでしょうか。

 

 

最後にこの本の帯に映画の宣伝があって、藤原竜也さん主演と知りました。

 

藤原さん主演の映画やドラマを全部を見ていないんですが、デスゲーム系の映画は「バトルロワイヤル」と「カイジ」を見ました。藤原さんはデスゲーム系の主演が多いのかなという印象です。

 

そして私の中で藤原さんと言えば「 22年目の告白~私が殺人犯です~ 」で書いたとおり、叫ぶ・のたうち回るイメージです。

 

たぶん映画を見ることはなさそうですが、結城の役では叫ぶことはなさそうですね。

 

(個人的評価)

 

謎          ☆☆☆
面白さ       ☆☆☆☆
ニヤリ度      ☆☆
若菜のウザさ ☆☆☆☆☆