豪雨の影響で長らく通行止めになっていた鉱山跡からの道で荒海山に登ってきた。
発災は平成27年だそうだから実に6年ぶりに登山道が復活したということだ。
そんなに長く閉鎖されていたならば、いったい現地の様子はどんなものなのか。
多少不安はあったがチャレンジしてみることにした。



アプローチだが、国道から登山口駐車場まではフラットダートで普通車でも通行に支障はない。
林道の途中に、なにかの建物(鉱山関係?)があり、その周辺は道幅が広くなっている。
ここが駐車場のようだ。 



最初、この看板の意味を「400m先に駐車場がある」と誤解してしまった。
そのため、さらに奥の方まで車で侵入してしまったのだが結局この場所まで戻ってくることになった。
 


なぜかと言えば、この先は急に道が細く狭くなり… 



終点部には狭い空き地があるのみだからだ。
他に車がいたら転回も難しく下手をすると詰んでしまう。 



登山口の先にも轍が続いているように見えるが… 



すぐに林道は消滅してしまう。
車は無難に手前の広場に停めてこよう。 



川岸にはコンクリートの擁壁が残っているが、この壁が本来守っていたはずの林道は流されて跡形もない。
豪雨の時に流されてしまったらしい。 



何度も渡渉しながら先へ進む。
赤ペンキでマーキングが施してあるので、その印に従う。 



土砂だけでなく、ガチガチにコンクリートで覆われた道ですらこのように破壊されていた。
改めて水の威力の恐ろしさを実感する。 



今日は平水のはずだが、かつての路面は今では河床になってしまっている。
道はもうほとんど川と一体化してしまっていて、ここがかつては道だったと言われても俄に信じがたい。 



沢の狭窄部を抜けると岩で埋め尽くされた河原に出る。 



深い谷の向こうに見える山が目指している荒海山…だろうか。 
谷が深いからだろうか、えらく遠く高く感じるな。



沢の本流から外れて支沢を尾根へ詰めあげていく…のだが、なんだかのっぺりした変な沢だ。 



更に登っていくとその原因がはっきりわかる地形になった。
さっきの平板な地形は、大規模な土砂崩れで谷が丸ごと土砂に埋め尽くされてできたものらしい。 



みょうに空が明るい。
このあたりの斜面が丸ごと崩れ落ちたようだ。 



さらに上流からも大量の泥が流れ下ったようだ。
泥流の跡がそのまま大地に刻みつけられている。
今でも泥濘むと膝まで潜るらしい。
雨の後は踏み込んではいけない場所だ。 



崩壊した沢を抜けるとようやく安定した地面が現れた。
それと同時にいきなり鼻こすりの急登となる。 



真新しいお助けロープを頼りに急斜面を登っていく。
このあたりは登山道が付け替えられたのかもしれない。
まだ路面が柔らかく、あまり踏まれていない感じがした。 



急登を喘ぎ喘ぎ登っていくと、やがて道は尾根筋にぶつかり左に90度角度を変える。 



ここから先はしばしの骨休め区間だ。
ゆるい傾斜の林間の小道が続いていく。 



ようやく足元の花たちに気を配れる余裕もできた。
これはタニギキョウ。 



ササバギンラン。 



しかし平穏な時は長くは続かない。
再び道の傾斜が急になっていく。 



地形も険しい場所が出てきた。
幸いにも、そういった場所にはお助けロープがしっかり設置してあるので無理せずこれを頼って登っていく。 



…頼むから下らないでくれよ。
せっかく汗だくで稼いだ高度を吐き出してしまうのは精神的に厳しい(笑 



木々の隙間から見える荒海山…と思われるピークは、まだまだ遠くに見える。 



進むほどに急峻になる道。 



木の根の階段…いや、ハシゴかな? 



足元はすっぱり切れ落ちている。
樹木があるので高度感はあまりないが、転んだら終わりという場所も少なくない。 



集中力を切らさないように時々立ち止まって周囲の景色に目を向ける。
沿道には数は少ないながらも季節の花が咲いている。
これはサラサドウダン。 



マイヅルソウ 



イワカガミ 



泥っぽい急な岩場の先に明るい光が見えてきた。
山頂も近いはず。
頑張ろう。 



ようやく樹林帯から抜け出して頭上に青空が広がった。
ここまで三時間、最初の沢歩きを除けばひたすら登りっぱなしだった。
いやぁ、なかなか手強い山だね。 



山頂付近のアズマシャクナゲの群落は、もう花の盛りは過ぎかけていた。
残念。 



その代わり足元のゴゼンタチバナが盛りを迎えていた。 



山頂直下の笹薮の中に小さな小屋が沈んでいる。
南陵小屋というらしい。
元は気象台の観測所だったとのこと。
昔のガイドブックには避難小屋として掲載されていたが、最近のものだとこの小屋は無かったことになっている。
荒れ放題だからなぁ。 



小屋を過ぎれば、まもなく山頂だ。
山頂には山名標識と小さな石碑がある。
狭いので10人もいれば大混雑だろう。

  

大河の一滴ここより生る…か。
山の頂で壮大な水の旅に思いを馳せるというのもロマンがあって良き。 



ロマンもいいけどお腹も空いた。
外界から遥々持ってきた美味しい水で美味しいコーヒーを煎れよう。 



で、だ。
コーヒーを飲みながら悩んでいたことがある。
この先にあるという三角点を見に行くか否か。
藪っぽいと聞いているので躊躇していたが…行くか、せっかくだし。 



うわ! 藪っぽいっていうか、ガチの藪じゃねーか!



笹薮と格闘することおよそ10分。
ぽっかりと開けた広場に出た。
太郎岳三角点だ。

  

藪こぎしてまでたどり着いた三角点だ。
撫でるようにタッチしておこう。 




景色も堪能するぞ。
荒海山の山頂と大差は無いが、苦労を上乗せしただけ楽しまないとな! 



ペンギン「おーい、早く帰っておいでよー」
ツートンは藪こぎを嫌って荒海山山頂でお留守番。
いや、来なくて正解だったよ。
なんでこの区間だけ未整備なんだろ。 



再び藪を掻き分けて荒海山山頂に戻り下山の途に就く。
下りも長く急な道のりだ。
気を引き締めて行こう。



下りは特にスリップに注意だ。
岩場でも足場に泥が堆積していることが多々あるので不用意に足を乗せるとズルズルと滑って危ない。 



山頂では気が付かなかったが、あのギザギザした山は昨日登った七ヶ岳ではなかろうか。
ようやく名前がわかる山を確認したぞ。 



下山途中に戸坪沢へ下るコースを確認した。
閉鎖されているな。
鉱山跡からのコースより増水の影響を受けにくく、バスなどの交通機関からのアクセスも良いらしいが…。 



どんどん下っていく。
ずっと急な下りなのでつま先が痛くなってきた。 



沢歩きも無事に終えて登山口に戻ってきた。
お疲れさまでした。なかなかハードな山だった。

数年ぶりに正規の登山道が開通した荒海山だが、沢沿いの道は完全に破壊されていて豪雨災害の凄まじさを肌で感じさせられた。
登山道を復活させた関係者の方々には頭が下がる思いだ。
…そこまでして戸坪沢のコースを閉鎖したいのはなぜだろうという疑問は残るが(笑

尾根に上がってしまうと豪雨災害の影響はあまり感じない。
それでも急な登りが最初から最後まで続く厳しいコースではある。
木の根と滑りやすい泥と岩のミックスなので色々と神経を使う場所が多い。
歩ける場所が限られているので自然と登山道は明瞭になり道間違いをしそうな場所は少ない。

キツイ登りを制すれば山頂からの眺めは抜群だ。
我々が行った日は雲が多くて遠望が利かなかったが、条件が良ければなかなか景色は良さそうだ。
荒海山山頂と太郎山三角点の間だけ、なぜか刈払が行われておらず激藪になっている。
藪を漕いでも三角点を拝む価値があるかは人それぞれだろう。
荒海山はデータ上で見る標高差や歩行距離などからは思いも寄らない手強い山だった。

おしまい