- ぼくの伯父さん
- ¥4,639
- Amazon.co.jp
ジャック・タチ ぼくの伯父さん。
ユロ伯父さんシリーズとしては実は2作目なそうな。
のんびりと気ままな生活を送っているユロ伯父さん。
近代化と自動化のあくせくとした生活を送っている妹と夫は、ユロになんとか仕事を紹介する。
穏やかなユーモアと、社会風刺の効いた1作。
なんといっても魅力は、穏やかなユーモアと、全編を覆う卓越したセンス。
映像のひとつひとつ、インテリアや美術のモダンなセンス。
今見てもちっとも色褪せず、充分に有効なもの。
そして、けして攻撃的ではないが、行き過ぎた文明批判と、牧歌的な生活への愛情。
主人公のユロ伯父さんはしゃべらない。
古くはチャップリン、近ければMr,ビーンを彷彿とするサイレント&パントマイム。
伯父さんはのんびりやさんで、ちょっとした好奇心や、居眠りなんかで
次々と問題を起こすけども、
それがとってもユーモラス。
ギャグではなく、攻撃的でもないユーモアがとても穏やかで心地いい。
こどもに優しく、”ぼく”(妹のこども)に好かれている。
住んでいるアパートは、古めかしい作りで、
重層住宅のように、ごちゃごちゃと作りあげられた小さな迷路みたい。
壁に作りつけられた小屋に住むカナリヤを鳴かせることが、伯父さんの得意技。
だけど、伯父さんの妹と、その亭主は近代化された家に住んでいる。
なにもかもがオートマチックで、半分家に使われながら住んでいる。
ここが、行き過ぎた文明批判なんだけども、その様子はユーモアに溢れていて、
なにより、そのインテリアがおしゃれ。
無機質なんだけども、モダンで、イームズの椅子なんかも出てくる。
きっちりと整備された庭や、イームズの椅子をテラスに出しての食事、
ブライトカラーのキュートなソファ。
ちょっと憧れてしまう。
好きなシーンは3つ。
はじめの、車が延々道を曲がって行くところ、
次の、こどもたちの悪戯の場面、
そして、最後の、工場でホース★ソーセージを作ってしまうところ。
はじめは、音楽をバックに、道路と車だけのシーン。
これが、整然と車が規則正しく動いていて、見ていて綺麗。
シンプルといえばシンプルなんだけど、1シーンずつとても丁寧に作られていて、素敵。
次に、優雅な弧を描いて駐車場に入り、わんちゃんがたくさん出てくる。
この、わんちゃんたちが、最初と最後に出てきて、物語の流れをしめる作りが好き。
センス溢れているんだけども、あったかい感じ。
次に、悪ガキたちの元気いっぱいの悪戯。
これがすごく微笑ましくていい。
悪戯坊主は困りものだけど、こどもたるもの、これくらいの元気がないとね。
近所の子供が連れ立って、きゃっきゃと町を飛び回る姿はすごく健全だし、こうあって欲しいと思う。
事件多発で、こどもをのんびり外で遊ばせて置けない今は恐ろしい時代だなぁ、と思ってしまう。
最後に、ホース★ソーセージ。
これはファニーで大好き。
ユロ伯父さんが、ホース作りの監督を任せられるんだけど、これは機械の様子を見ている、
という地味でヒマで単調な仕事。
機械に使われてる、とも言えるし、労働者に機械が取って代わったシーンでもある。
でもユロ伯父さんは居眠りしてしまって、機械の不調で、
ホースがところどころくびれて、まるでソーセージのように。
気がついたときは時すでに遅し。
ホース★ソーセージは大量生産され、誤魔化そうとした途中で同僚に見つかり、笑いをゲット。
伯父さんはすごく焦ってるんだけど、ナイスなお仕事です。
もちろん、上司に見つかると怒られるんだけど。
仕事面では失敗だけど、誰も傷つけない穏やかな笑いは見ていてほっとする。
アメリカのきっついギャグものとは全然違って、
全編に穏やかさ、温かさが溢れているのが、一番の魅力。
シニカルに陥りすぎることもなく、ユーモアで包み込んで文明批判を発する姿勢が好き。
それしても、ちっとも古さを感じない。
本当にセンスあるものって、時代に関係ないんだなぁ。










