- フラワー・オブ・ライフ 4 (4) (WINGS COMICS)/よしなが ふみ

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よしながふみ フラワー・オブ・ライフ全4巻。
明るく爽やか、だがイマイチ空気の読めない主人公、空気は読めるが心理の読めないオタク、
気の弱く、気遣いすぎるぽっちゃりくん。
個性も思いも数あれど、同じ”教室”で同じ時間を生きる高校生の物語。
面白かった!
なんで4巻で終わっちゃったんだろうね?
4巻に入ってからのシリアスモードの落とし方もどきどきした。
男子高校生3人+女子高校生4人+先生2人+諸々の群像劇で、
それぞれの心理や個性の描き方、友人とのぶつかり方が見所。
予定調和は一切無く、こういう展開なら、こう上手くいくであろう、行って欲しい、は叶いません。
人間関係の日常レベルでの生生しさというか。
別に嫌いじゃないけど、性格が合わない、そりが合わない、
そういうときの接点の探り方ががどきどきする。
学生ちゃんたち、特に女子の交友はリアルでどきどき。
男にしか見えない先生の、不幸人生はよしながドラマチック。
先生の理屈はうちにはわからなかった……
しかし、ここまで極端ではないにしろ、傍から見れば明らかに不幸なのにそれを望んじゃう人っているよね。
そこが感情の不思議なのか……
主人公のハル太が好き。
空気は読めないにしろ、あっさり、さっぱり豪快なとことか、
友達や家族を大事にする、気持ちをちゃんと言葉にしていくとことか。
父ちゃんや母ちゃんも豪快だけど、ひとり繊細な姉ちゃんの危うさも好き。
うまくいってるように見える家族だけど、たぶん、姉ちゃんがそのワリを食ってるんだろうな。
ギリギリっぽいのにひやひやする。
ハルも父ちゃんも豪快で、仲良し家族に見えるけど、
主にハルの病気をめぐってギリギリのところがあって、その影響をモロに受けてるのが姉ちゃんなんだろな。
職場での、イジメまではいかないけど、敵意むき出しの女バトルも恐ろしかった……
うちはそんな状況に陥ったことはないが、ありえそうと思ってしまう。
私、恋人、友人 以外は敵。みたいな。
私の知り合い以外はどうでもいいんです、それがスタンダード。みたいな。
そういう狭い世界観の人間もいるしね。
あと、シゲル。
不幸女すぎる……
特に最後。どーしてそこを選んじゃうのかなぁ!?
相手はただ頼りたいだけで、”うまくやってる俺”幻想に浸っている、上手く物事処理できない男なのに。
そこから逃げるのに真島選んでしまうのも。
幸せを求めているように見えて、実は不幸でいるのが好きなのかも。
見た目のせいで、ストレートな恋愛がしにくかった、っていうコンプレックスのせいで、
ちょっと恋愛感ずれちゃったのかなぁ。
もしくはダメ男好きとか?
何から何まで世話焼いてあげたい!みたいな?
2,3巻はいいんだよね。
それもありかな?楽しいかな?と、応援してしまう。
んでも、4巻でイキナリ、リアル展開に。
真島はまあ、かなりファンタジーな存在だから放っておいて、
シゲルの選択がリアル。
べったべたに自分を必要とされて無いと耐えられないし、何より、体の関係をメインに考えてしまう人なんだろう。
と、いうのは、ヨリを戻したのがバレて、真島とケンカするときに、
「でもわたし寝るわよ!」的なことを言ってしまうから。
寝る以前に会うな、という話なんだけども、シゲルはそこしか言わないもんだから。
この、スッキリ終わらない感のドラマ作りが、うーん、よしながふみ。
女子の細かい心理劇もなかなかぴりぴりしていて良かった。
たとえば、本を借りるエピソード。
ずぼらな人と、神経質な人の話。
ずぼらな人は性格で、悪気は無い、けど、迷惑。
こういう人描くの上手いよね、よしながさん……
人から借りてるものくらいは気を遣って欲しい、と思うけど、それが出来ない、
出来ないということが、神経質な人には理解しにくくて、もやもやしてしまう、という。
どっちも悪くないケド、この微妙なすれ違い。
または、女子の買い物のお話。
それぞれ好きな物が違うから、結局別々に買い物した方が楽しかった、という。
これは、あるかも。
それぞれが、いい気持ちで過ごすためには別行動も必要なんだけども、
一緒にいること=仲がいい 一緒にいない=そんなに仲良くない
っていう、えらい単純な図式についつい縛られてしまうのは、すごい分かる。
よしながさんはきっと、頭が良くて観察眼のあるひとなんだろう。
自分の経験や、フラストレーションを感じたこと、
そして、その原因が単なる個体差で、善意、悪意とは無関係な性格上の違いだってことも
理解したうえで、こういう話になるんだろうな。
ハル太についてもね。
難病を克服した人間で、しかもさっぱりしてて好かれる人柄、
って前提があっても、それを裏返すと、空気読まずに、周りを萎縮させてしまうところがある面を描いたり、
死が常に目前にちらついてるのはどういう状態なのかまで描いたり。
ただの明るい、理想的なキャラに仕上げず、
かつ、主役といえども容赦の無い描写。
相変わらず、キャラにクールだ(笑)
それにしても、大奥もこれも、狂気じみたものを書くときの落とし方や表現が怖いひとだ。
ってゆーか、目が怖い。
イッちゃった目を描くのが上手すぎる。
