時事寸評 蝶の異常、一関のお子さん、千葉のセシウム、それにヨウ素 | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

時事寸評 蝶の異常、一関のお子さん、千葉のセシウム、それにヨウ素 (8/13)




福島原発の被曝地帯でヤマトシジミ(蝶)を調べた結果が琉球大学の野原先生のご論文で明らかになりました。




2011年の5月に事故後に羽化したチョウを採集したところ、親世代より子供の世代で異常がふえていました。また孫の世代まで異常がみつかりました。




さらに9月に採集したチョウはいっそう厳しい異常が見られ、また福島の食材を沖縄のヤマトシジミに与えても同じ異常が見いだされました。




この論文は”nature”の”scientific report”で見ることができます。放射線で被曝すれば生物の異常が起こるのは良く知られていて、原始的な生物ほど遺伝子の異常の可能性が高いので、この結果が直ちに人間への影響を示すものでもなく、逆に福島に異常な微生物が発生する危険性も示しています。



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岩手県一関市の子供から尿検査でセシウムがかなり高い値がでました。尿中のセシウムがどの程度であれば、現実に病気を心配しなければならないかがよく分かっていないのが問題です。つまり、2011年の4月、5月ならかなり食材が汚染されていたり、空間線量も高かったのですが、今ではかなり注意が行き渡っているからです。




結果を見ると値も高いし、甲状腺に若干に異常があり、親が検査結果をご覧になって「その日は一睡もできなかった」、「守ってあげられなくて申し訳ない」と言われている気持ちもわかります。でも、空間からの放射線も食材からも、親が守ることができることは少なく、国や農業の方が誠心誠意、子供を被曝から守ってあげなければならないのです。




国は自ら1年1ミリを決めて守らず、食品安全委員会も農業関係者も子供を守ってくれませんでした。親が可哀想です。東京でも比較的高い測定値もあり、今更ですが、日本の大人が子供を守る決意をさらに強めてもらいたいと思います。



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ところで福島のセシウムの再飛散は繰り返し被曝するという点で要注意ですが、最近では千葉でも1平方メートル70ベクレルなどの値が7月に観測されています。退避しなければならない数字ではありません。




ただ、この問題は国民の健康を守る立場から、マスコミも速報を出すこと、地方自治体も具体的にどこから飛散してきているのか本腰で市民を守ってもらいたいと繰り返し訴えたいと思います。




さらに、2011年8月に見られてから、継続的にヨウ素131が検出されています。多くは汚泥からでそのレベルは1キログラムあたり10から100ベクレル程度です。このレベルでは問題はおきませんが、セシウムと同じで、注意を継続する必要はあります。




8月にかなり調べましたが、原因が分かりませんでした。おそらく医療用と思いますが、これほど杜撰な管理をしているとも思えず、心当たりのある犯人がいるはずですが、国民の健康を守るべき厚生労働省の管轄からの漏れと思われるのですが、調査はされていないようです。




マスコミも厚労省も事実を国民に伝えるのを怖がっていますが、購読料をいただき、税金を払ってもらっているのですから、一宿一飯の恩義があり、法律に「被曝はできるだけ減らすこと」となっているのですから、基準をどうこうするのではなく、是非、国民の健康を守るための資料を出すようにしてください。



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【私たちの守り方】

放射線による障害は「確率的」です。ですから、事故から3年をめどに、大変な事ではありますが「可能な限り被曝を減らす」ということに引き続き努力をしてください。努力は最終的には必ず報われます。危険が来ても事実を正面から見つめ、正しく行動して、安心を得てください。




確率的というのは、被曝が2倍になると危険も2倍になり、被曝を2分の1に抑えれば危険も2分の1になるということです。どのような値以下は安全と言うものではなく、一応、3年間を注意するというのが最も正しい方法です。負けてはいけません。


(平成24年8月13日)




--------ここから音声内容--------




原発や被曝関係の最近の情勢の中でですね、注目しとかなければならないことを少しまとめました。一つはですね、琉球大学の先生のご論文がですね、出まして、ヤマトシジミ(蝶)をですね原発の事故の終わった後の5月、もしくは9月に採集してですね、それを異常を調べると。それから子どもの世代、孫の世代まで追跡するという論文が出ました。





それによりますとですね、これは放射線で被曝するわけですから当然なんですけども、異常が増大しとります。それから5月と9月と比べますと、被曝量の多い9月の方がいっそう厳しい異常が見られておりますし、また福島の食材を食べさせた沖縄で育てたヤマトシジミについてもですね、同じ異常が見出されております。





外部被曝、内部被曝、基本的には同じで、内部被曝の方が長く被曝するのでちょっと影響が大きいってことですね。この論文は読むことはできますが、英語ですし、いろんな所で話題になっておりますので、機会があれば…ただ専門性が高いんでですね、ちょっとどうかと思いますが、ま、そういうことですね。





もちろんこれはですね、放射線で被曝すれば生物に異常ができるっていう…そんなのはもう昔から当たり前なんです。だからつって人間に影響が出るかっていうと、これは程度問題だと。だけど逆に言えばですね、私は前からこれ心配してんですけど、福島の微生物に異常が出る可能性が高いんですよね。非常に…例えば抗生物質が効かない細菌ができるとか、そういう可能性はあるんです。生物の進歩ってのはこういった放射線によるですね、遺伝子の異常がきっかけになってるものもけっこうあるんですよね。ですからいい面もあれば悪い面もあるということであります。





それから岩手県の一関の子どもの尿の検査から、かなり高いセシウムが出ましたですね。これについては大丈夫だという人(がいるよう)なんですけど、大丈夫だというデータが出てこないんですよ。つまり今までですね、子どもの体にセシウムがたまって、「一年半後にこのぐらいの場合は、その子どもがどう」なんていうデータは、僕は絶対ないと思いますけどね。なんで安全だと言ってるのかわかりませんけどね。





私たち専門家はですね、わかんない時は、「わかんない」って言わなきゃいけないんです。「わかんないけども、俺の思想からいって大丈夫」なんて、そんなのダメなんですよね。これが非常に辛いですね。堪えられない(答えられない)ですね。





1ベクレル以上もあるんで、お母さんもご心配なんですけど、我々専門家、情けないことには、これはですね、1ベクレル以下だったらまず色んな所のデータから大丈夫かなと思うんですけど、それ以上になった場合に、安全ということもちょっと言えないんですよね。





甲状腺にもちょっと異常があります。この問題はですね、親御さんがその日は一睡もできなかったとかですね、守ってあげられなくて申し訳ないって言ってますが、まったくその通りで、我々も申し訳ないですね。はっきりとしたことが言えないと。ただこれはですね、親御さんが(子どもを)守れないんですよ。





要するに一関市とか、一関の農協の方が守ってくれないと、子どもは守れないんですよ、ええ。私は一関市長さんとか議員さんとか何も、アレないですよ、恨みも何もありませんが、これねぇ、わからないことはやっぱ守ってあげた方がいいですよ。わからないのに「大丈夫だ」とか、なんか病気が起きてね、「国が言ったからその通りやった」っつったら、やっぱりダメですよ。それは親じゃありませんよね。親っていうのは他人がなんと言おうと自分の子どもを助けるというのが親ですからね。子どもはそう思ってますよ、ええ。まさかね、自分が病気した時にね、「国のせい」に逃げないと思いますね。





東京のお子さんでもちょっと(値が)高いのがあるんで、継続的に注意したらいいと思います。それからセシウムの再飛散がまだ続いてるんですよね。1平方メートルあたり70ベクレル程度の値なんですけども、このぐらいの値ですとやっぱり野菜とかそういうものが汚れますんですね。この問題って言やぁ何回も私のブログでも言ってますが、マスコミがやっぱり速報を出して、地方自治体もですね、もう少しまじめになって住民の被曝量を減らすということを考えたらいいと思います。





これと同じように、去年の8/19だったと思いますが、非常にヨウ素が高くなった時あります。ヨウ素は半減期が8日ですから、そんなことならないんですよ。だからこれはですね、おそらく医療関係からの放出だと思うんですけど、そんなにずさんなの?っていう感じもするし、犯人は心当たりがなら言うべきですね。おそらく厚生労働省管轄だと思うんで、これはもっと本格的な調査をするべきですね。もうかなりの回数出てますんで、傾向を調べてもわかると思いますね。





私はですね、相変わらずマスコミとか厚労省が事実を国民に伝えるのを怖がっているんですが、マスコミは購読料を国民からもらってるんだし、厚労省は税金で生活してるわけですね。一宿一飯の恩義があるんですよ、国民に(対して)は。だからできるだけ…それから法律には被曝はできるだけ減らすことになってるわけですから、「基準がどうだ」とか、「100ミリが安全だ」とかそんなこと言ってないで、ぜひ国民の健康を守るため資料を出すようにしてほしいと思いますね。基本的人権の中にはですね、自分で判断することができるってことですから、判断材料を提供するっていうことですね。





ところで、そういうのは別にして、私たちの守り方ですが、放射線による障害は確率的なんで、ちょっと難しい言葉なんですが、ややこういうふうに言えるんですね。まず事故から3年がひとつの目処だと思います。ですから再来年の3月までというのをですね、一定決めて、可能な限り被曝を減らすということを引き続き努力する必要があると思います。努力は最終的に必ず報いられます。必ず報われるっていうのが、これ確率的なんですよ。ですから、報われないっていうんじゃないんです。





例えば、「これ以下は安全だ」とか、「これ以上は危険だ」とかなくて、被曝が2倍になると危険が2倍になり、被曝が1/2になれば危険も1/2になるんで、もう非常にいいんですよ、これは。努力が報われるんです。ですから、一応3年間を目処に、一つですね長期戦になってとても大変だと思いますけども、真正面から見てやればストレスにならないと思いますね。





やることは一つしかないんですから。「できるだけ被曝を減らす」と。「可能な限りやる」と。後はもう仕方ない、運を天に任せるしかないということですね。これはもうハッキリしてますんで、まったくストレスはありません。ストレスが起きるのは、「どのぐらいまで大丈夫か」なんて考えてるとストレス起こりますね。だから、「可能な限り被曝を減らすんだ」と、これがもう基本にないとですね、やっぱり心理的にも動揺します。