時事寸評 なるほど!社説でわかる超現実主義 (6/30)
私の大学教育の基本は次の2つです。
1)試験で監督をしない、
2)講義に遅れたらしばらく立たせておく。
試験の監督をしないのは、「試験は単位が取れるかどうかではなく、勉強した自分がどのぐらいの力になったかを知るため」であることを普段から教えますので、当然のことです。
普段の講義の時、学生に次の2つのことを教えます。
1)この科目を勉強したくなかったら講義に来なくて良い。講義にでて眠っていては人生のムダだ、
2)お習字を習いに行って課題を出すときにお習字の上手な人の書いたものをコピーしても意味が無い。
もう一つは、「約束を守ること」です。講義に遅れた学生は適当な時間、後ろに立たせておき、「人間にとって約束を守ることがもっとも大切だ。大学で難しい物理を学んでも、人との約束を守れないなら物理など勉強する必要がない」と教えます。
この場合の約束とは「何時何分から講義が始まる」ということで、先生も学生もこの単純な約束を守ることが大切だからです。どんなに偉そうなことをいっても、どんなに力があっても人との約束を守れないような人が大学を卒業する価値はないと言います。
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この2つを大学で教えている私にとって、2011年の原発事故が起こった後、1年1ミリという約束を破ったマスコミ報道、2012年の国会で消費税増税が衆議院で可決されたことは驚きでした。
「1年1ミリ」は「日本は原発を進めるけれど、国民の被曝はどんな時(事故以外では原則として原発では被曝しない)でも1年1ミリに納める」という約束(法規)があるし、現実にそれができるのに約束を守らなかったということでした。
また、2009年の選挙で公約、マニフェストに掲げたことをほとんどやらず、その正反対の政策(増税)を可決したことです。私にとってはこの2つは理解する事はできず、また許すこともできないことです。もしこのようなことを「正当」とすると、学生を教育することができなくなります。
まさか、学生に「約束を破っても良い」と教える訳にはいかないからです。そして私はマスコミの偉い人がなぜ約束を破ることに甘いのか、理解ができないでいました。
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ある新聞の社説を読んでいましたら、私の疑問が解消されました。その社説では「すでに民主党政権ができて3年経ったのに、公約は何一つやっていない。やらないのだから、民主党の公約はないも同然だ。だから、増税は当たり前で、それに反対するなどけしからん」という論旨でした。
官僚の抵抗や社会の反対で公約が実施できないなら別ですが、「議員定数80名削減」など第一公約で約束して、国会だけで議決できるものもやらないのですから、「ウソと詐欺」といって良い状態なのですが、この社説によると「ウソと詐欺」が現実なのだから、その現実を踏まえて「ウソと詐欺」を「正しい」としようという訳です。
実は、これまでも新聞の社説を読んでいると、「ご都合主義」というか、「超現実主義」というか、人を裏切ろうと、何をしようとその時にもっとも現実的で自分が得をするものなら何でも良いという考え方です。
新聞は「新聞などについては社会的意義が大きいので減免措置が必要」と財務省と合意している。まさに「声が大きいものだけが得をする」というこれもご都合主義の主張でした。
子供に教育できないようなことが社会の主流の意見になる・・・日本の知性が崩壊していくことを新聞の社説が主導するということをやってはいけないと考えます。
(平成24年6月30日)
--------ここから音声内容--------
えー、私は大学の先生をやっておりましてですね、色んな基本的な教育方針っていうのがあるんですが、「試験で監督をしない」っていうことですね。それから、監督を置かないってことですが、「講義に遅れたら、しばらく学生を立たせておく」っていうのが2つの方針でありますが。
試験で私が監督をしないのはですね、試験っていうのはもともと単位が取れるかどうかではなくて、自分が勉強してどのぐらい力がついたのか自分で知るためですので、なんか「カンニングなんかしてもですね、何の人生にも意味が無いよ」と、「そういうことをやりたいんだったら自分の意志でやったらいいけど無駄ですね」というようなことをですね、普段色んな形で学生に伝えとくわけですね。
例えば、「もしこの科目を勉強したくなかったら講義に来ない方が、多分人生にとっては良いよ」と、「下宿で眠ってた方がいいんじゃないか」とまぁいうようなことを言ったりですね。それから、「お習字を習いに行って課題を出されて、もう字書くの面倒くさいから上手な人のやつをコピーして出しても、それだったらお習字行かない方が良いんだ」というようなことを、ときどき色んな形で面白い話としてですね、学生にしてですね、それで「自分のやることは本当に意味のあることをやった方が良いですよ」ということを教えるわけです。
もう一つはですね、「約束を守ること」ですね。講義に遅れた学生を、あんまり長い間じゃありませんが、ちょっと立たせておくわけですね。それで「人間にとって約束を守ることがとても大切なんだ」と。大学で私物理を教えているんですが、「難しい物理を学んでもですね、人との約束を守れないんだったら、もう物理なんてやめた方がいいよ」と言うわけですね。「何時何分から講義が始まる」と決まって、私(先生)も来てると。学生も来ると。そこで講義が始まる。「どんなに偉そうなことを言っても、どんなに力があってもですね、人との約束を守れないような人が大学を卒業する価値がないよ」と私がまぁこういうふうに言うわけですね。
そういうこと、つまり、「いくら偉くなっても約束が守れなかったら、人間として価値ないよ」ということを学生に教えている私にとってはですね、去年の原発事故で1年1ミリという被曝の約束を守らなかったマスコミとか報道とか政府。それから、2012年…今年ですね、国会で消費税増税が可決されたことは、もうほんとにガックリきちゃったんですね。
「1年1ミリ」っていうのはですね、国民の間の「約束」なんですよね、これは。法規ですからね。で、普通は原発の事故が起こんない時はこんなの関係ないんですよね。原発の事故が起こると被曝しますから関係がある約束なんで、これを守らないんですね。まぁそれは僕はちょっと信じらんなかったんですよ。例えばテレビなんかで、「法律があるじゃないですか」って何回言っても、誰もしらっとしてるんですよ。なんか、「約束なんか守る必要あるの?」ってまぁそんな感じなんですね。
今頃になってですね、実はこの前なんかある雑誌読んでましたらですね、「外国のナントカって人が、福島の被曝はたいしたことないと言ってる」と。「だからいいんだ」なんてこと言ってんですけどね、そんなことあるんでしょうかね?まぁ講義が9時半から始まると決まってるけど、最初の頃はあまり聞いてもしょうがないやって言って遅れてくるとかですね、そういうことはどうですかね?私はちょっと信じらんないですね。
それからやっぱり2009年の選挙ですね、この正反対の政策を…マニフェストと正反対のことをしてる。私みたいに約束を守るとか、大切だと思っている人は、次の選挙ってできないんじゃないかと。選挙って約束ですからね。まぁこれから学生にですね、「それじゃあまぁ世の中にそう書いてあるので、学生に約束破っていいですよ」と教えるというのは、それでいいんでしょうかね?ちょっと分かりません。
実はこれを書こうと思ったのは、ある新聞の社説を数日前に読んでおりましたらね、こういうふうに…社説ですよ、こう書いてありました。「すでに民主党政権ができて3年経ったのに、公約は何一つやっていない。やっていないんだから、民主党の公約はないものと同じだ。だから増税してもいいじゃないか。それに反対するグループがいるが、それはけしからないんだ。公約はもう破棄したんだから構わないんだ」というわけですね。この論理にはビックリしました。これね、立派な新聞なんですよ。四大新聞の1つですが。
まぁあの官僚の抵抗っていうのもヘンなんですけども、公約が実現できないこともありますが、例えば第一公約。民主党の第一公約の「議員定数80名削減」なんてのは、すぐできるわけですから。だけども、「ウソと詐欺」を認めてそれは「正しい」んだっていうわけですね。私これ読んで、腹が立ったというよりかはむしろですね、ああ、なるほど、日本人っていうのはもしかしたら、「ご都合主義」っていうか「超現実主義」なんじゃないのか。人を裏切ろうと約束を守らないなんて全然構わない。そこで自分が現実的に得するものなら何でも良いとまぁいうことなんでしょうね。
新聞はですね…新聞にとっては、「新聞は社会に大切だから消費税の減免措置が必要」ということで財務省と合意してんですね。新聞だけが社会的に意義が大きいと私、思えません。むしろ「声が大きいものだけが得をする社会」っていうことですね。私も声を上げたいですよ、「私のやっていることは社会的に重要なので、消費税を減免してくれ」と言いたいですね。そしたらですね、食糧を提供してる人は「私は食糧を提供してるんだから大切です」と。教育してる人もそうで。土木工事してる人も「私が道路を作らなければ道路ができません」。主婦の人は「私がご飯を作ってるからみなさんご飯を作れる(食べられる)んです」とこう言うでしょうね。新聞が社会的意義が高くて、他のものが社会的意義が低いなんて、誰が決めんですかね、ほんとに、ええ。
私はですね、これらのことを子供に教育できないと思うんですよ。子供に教育できないことが社会の意見の主流になる、まさに日本の知性が崩壊していくということを、最も社会では見識がなければいけないと考えられている大新聞の社説が主導するということで非常にガックリきました。この記事の日付(平成24年6月30日)はですね、私が新聞を見た日付を残しておくことにいたしました。
(文字起こし by haru)