福島4号機を考える1 爆発までの時間(1)核爆発 (7/3)
4号機の仮設建屋の建設が始まり、放射性粉塵が飛び散っています。また、4号機の冷却装置が1日半、故障してプールの温度が10℃ばかり高くなりました.
多くの人が4号機の状態に不安を持っていますが、本来は充分な説明を行うべき政府、自治体、マスコミは「不安を持つ方がおかしい」ということで、冷却が不能になっても通報も避難誘導も、報道もしませんでした。
不安を持つのは人間として当然ですし、事故を起こした福島4号機の工事粉塵や冷却不能について、無条件で「大丈夫」ということはないからです。
そこで2,3回のつもりで4号機の問題を考えてみたいと思います。今まで多くの人が「4号機が危ない」と警告を出しておられますが、その根拠を科学的に説明したものが見当たらないので、ここでは最初から考えてみます。
また、このシリーズでは「2011年3月の爆発より大きな危険を生じるか」ということに焦点を当てています。
・・・・・・・・・
4号機の核燃料プールの危険性は、
1)臨界に達して核爆発するのではないか?
2)崩壊熱で水が蒸発して冷やせなくなるのではないか?
の2つが心配されていると思います。
原発の核燃料が炉内で核爆発をして熱を発生し、その熱を水に移して発電に使うのが原発の原理ですが、使用する核燃料は「爆発しにくいウラン(4%ウラン235)」なので、爆発させるには、
1)適切な配置(1.5センチの燃料棒の集合体を作り15センチの空間を空けて詰める)、
2)燃料棒の間に水をはる(核爆発のためには水が必要)、
3)核爆発を止めるホウ素のようなものがない、
という3つの条件が必要です。
これに対してプールでは、
1)燃料集合体の間の間隔が30センチ(新)から40センチ(旧)も空いている、
2)水があるので、それは危険側、
3)普通はホウ素が入っている、
なので、現在の状態では核爆発は起こらないということになります。
それではプールから水が漏れた場合はどうでしょうか? 空だきになるので温度があがります。その場合は、
1)燃料の間隔は30センチ以上空いている、
2)空だきになり水がなくなるので爆発はしない、
3)ホウ素はある、
ということで爆発しません。
次にプールが地震などで壊れてプールの中の燃料がガラガラと床まで落下した場合はどうでしょうか?
1)燃料の間隔は落ちていくときや落ちた床で15センチになることがある、
2)水はない場合とある場合がある、
3)ホウ素はあるけれどどこかに飛んでしまうことがある、
ということで、プールが空だきになるより落下した方が核爆発の危険性は高くなります。しかし、このブログに書いたようにたとえ小さな核爆発を起こしても、それは続かないでしょう。
プールから燃料が床に落下するということは、落下した燃料はばらばらでバインド(強く締め付ける)もしていません。一方、核爆発すると熱が大量にでますので、燃料棒の間の水が沸騰し、空気が膨張するので、その力で燃料棒が離れて爆発は止まります。広島の原爆ではウラン235が90%以上だったのであのような激しい爆発をしたのですが、ウランの濃度が低ければ東海村の臨界事故のように建物の中にいる人が被曝して死亡するぐらいの事故になるでしょう。
地震が起きて福島4号機がゆっくりと破壊し、燃料プールが徐々に破壊され、そこから燃料棒が床に落下し、そこで空間的にちょうど爆発状態になった燃料が瞬間的に臨界になっても原発の外には影響はありません。
1日か2日経って、激しい雨が降ったり、水をかけたりして床に落下した燃料が水没するまで2日ぐらいが経ち、そこで臨界になった場合、核爆発が起こる可能性があります。つまり強い地震が起こってから4日ほどの余裕があるということです。
この時点では原発の風下10キロぐらいは避難する必要を生じます。
さらに、核爆発が起こるとそれまで床に落下していた燃料棒の位置が変わるので、それが再び爆発するような位置に変わるまでにまた数日を要するでしょう。
1週間後ぐらいで、1万分の1ぐらいの確率で2回目の核爆発が起こった場合、原発の風下30キロぐらいが危険地帯になると考えられます。
・・・・・・・・・
まとめると次のようになります。
1)4号機が核爆発する可能性はほとんど無い、
2)水が漏れて空だきになったら核爆発の危険性は下がる(水がないと安全になる)、
3)地震で4号機が倒壊すると1万分の1ぐらいの確率で原発の風下30キロぐらいは危険地帯になる。
私は4号機の核爆発は心配していません。それより工事の粉塵の方が危険です。
(平成24年7月3日)
--------ここから音声内容--------
えーと、4号機の問題については、みなさんが心配しているわけですね。4号機には1500本ぐらいの使用済み核燃料がありまして、それがプールに入ってると。しかし、建物全体は少し傾いてるとかいう話もあるし、いずれにしても外観は非常に壊れております。
これでまた震度6位の地震がくる可能性があるので、それでプールが全部壊れたり、水が抜けたり、色んなことするんではないかということで、危険であるということで心配しております。
これに対して政府とか自治体はですね、ほとんど報道しておりません。「不安を持つ方がおかしい」というふうに言っておりますが、不安を持つか持たないかは情報が提供されて判断することでありまして、情報が提供されなければ、人間は不安に思うのは当然でありますので、これはもう大変に大きな問題があります。
しかし一方ではですね、「4号機が危ない」と言っている方、これは多くは反原発の方が多いんですが、この方々は今度はですね、「危ない」というだけで、「危ない内容は何か?」と「どうして危ないのか?」ってことを説明しておりません。それで、私のとこに来る読者のメールにもですね、「先生は4号機が危ないってことを信じますか?」っていうようなメールが来るんです。まぁこれはしょうがないんですけどね。
科学者は「信じる」 「信じない」はありません。「信じる」 「信じない」は宗教でありまして、科学というのは、「根拠を示して、その根拠について議論をする」というのが科学ですから。4号機が危ないって言ってもらっただけではダメだということは、このブログでも再三書いたと。
そこでですね、ここではご心配の方が多いので、再度ですね、考えてみたいと思います。私は勿論、反原発でも進原発でもありませんで、安全な原発だったらまぁ良いかもしれない。危険な原発は勿論ダメであると。それは当たり前のことです。墜落する飛行機はダメで、墜落しなければ…これはですね、飛行機利用してますから、現実的に。ええ、まぁそういうことですね。
それからもう一つは、危険だと言ってもですね、今の時点で危険かどうかっていうことは、2011年3月…つまり、「去年の3月の爆発よりも酷いことになるかどうか?」っていうことがまず第一の問題だと思います。そういうことに焦点を合わせて、まず今回は第1回目『核爆発』について考えてみます。
4号機の核燃料プールがですね、危険性なのは…危険だと言われるのは、「臨界に達して核爆発をするのではないか?」もしくは「崩壊熱で水が蒸発して冷やせなくなるんではないか?」ということが心配されています。核爆発についてはですね、原発の原理がそもそも、燃料を核爆発させて、その熱で発展をするということなんですが、実は原発の燃料っていうのはですね、「4%ウラン235」っていうちょっと面倒くさいんですけども…「爆発しにくいウラン」なんですね。
で、これをまぁ無理矢理爆発させてるっていうのが原発なんですね。ゆるゆると爆発させてるってことですね。
そのためには、3つばかり条件がありまして、1つがですね、直径1.5センチの燃料棒をの15センチ間隔…燃料の集合体なんですけども、集合体を15センチ間隔できちっと空間に詰めるということが必要なんですね。これどうして必要かって言いますと、燃料体から出てくる中性子がですね、次の燃料にぶつかんなきゃいけないんですよ。
で、ぶつかる前に水の中を通ってぶつからないとダメなんですね。ですから、15センチの空間には全部水が入っておりまして、燃料棒から出た中性子が水の中を泳いでる間に、少し速度が遅くなるんです。その速度が遅くならないと、次のウランにぶつからないっていう、そういう特殊な状態なんですね。ですから、「適当な配置が必要」だってことと、「燃料棒の間に必ず水がいる」ってことですね。水はどうしても必要なんです。核爆発するために水がなければ核爆発しません。
もう1つはですね、水の中を泳いでる間に、ホウ素のようなものにぶつかると、もうそれで終わりなんですね。ですからまぁ、「ホウ素のようなものがない」という3つの条件ですね、これが必要なわけです。
これに対して、まず現在のプールですね、現在のプールは、燃料集合体の間隔が30センチ(新)から40センチ(旧)空いております。これは旧基準に作られてるか、新基準で作られてるか、ちょっと分からないんですけども、30センチから40センチ空いております。それから、水があります。この水があるってのはですね、普通は安全だって言われてるんですけど、これは危険な方ですね。核爆発にとっては危険です。それから、現在ではホウ素が入っております。
ということで、「現在の状態では核爆発は起こらない」ということになりますね。つまり、燃料から中性子が出ましてね、次のウランにぶつからないと核爆発しないんですけども、30センチぐらい水の中を泳いでるうちにもう疲れてですね、爆発の力は無くなります。それから、その間にホウ素が入ってるので、そこにぶつかっちゃって、それで終わりになってしまうので、これは現在のプールの中にある限りは核爆発は起こらないってことですね。
それからあの、今度はプールから水が漏れた場合は核爆発についてはどうか?と言いますと、燃料の間隔が30センチ以上空いているっていうことがまず空間的に爆発しにくいってことです。今度はですね、空だきになりますから、水が無くなるので、これだけで爆発しません。それからホウ素があるということですね。これはもう、1) 2) 3)のいずれにしても爆発しなくなるので、変な話ですけど、プールから水が無くなれば、核爆発は絶対しません。もう(核爆発)しようが無くなってしまうってことですね。
全ての条件が満たされないので、核爆発はしないと。この場合は蒸発するんで、それはちょっと次回に詳しく「どのくらいの時間で蒸発するからどのくらいの時間までに逃げなきゃいけない」って話を次回にいたしますが、核爆発という点ではありません。
それから今度はですね、地震でプールがガーッと壊れてガラガラと全部床まで落ちちゃった、もしくはその中間状態になったっていう場合ですね、この場合はですね、やや危険なんですね。燃料の間隔が落ちていく時に、とか落ちた後に15センチになることがあるんですね。もちろん偶然にですから、バラバラと落ちますから。それから水もですね、無いところは大丈夫なんですが、ある場合がありますよね、水に浸ったりなんかして。ホウ素は全体的には多分あるんですけど、万が一を考えると、どっかに飛んでいってしまうってことが有り得ます。まぁホウ素は水に溶けておりますので、普通は水があれば大丈夫なんですが、どっかに飛んでいくっていうこともあります。
そうしますので、核爆発という点では、プールが空だきになるよりも、全部が壊れちゃうという方が危ないわけですね。しかしあの、このブログでも既に書きましたが、この場合ですね、核爆発が小さくなるんですよ。っていうのはですね、普通核爆発が連続して起こるためには、燃料をですね、ガチっと締め付けとかなきゃいけないんです。つまり、熱が出ますからね、水が沸騰したり、空気が膨張したりするんで、燃料棒どうしが離れていくんですよ。離れたらもう爆発は止まります。で、それを止めるためにガッチリとバインドしとかなきゃいけないんですね。
広島の原爆の場合は、ウラン235が90%以上だったのでドカンといくんですけど、普通はいかないんですね。ですからまぁ、そういうことなので、東海村の臨界事故のように建物の中にいる人が被曝して死亡するというぐらいの事故になる。事故の程度はですね、中にいる人はちょっと危険なんですが、中に…地震のあと建物が無くなって中に人がいるってことはまず無いでしょうから、その点ではですね、そういうことが無いってことですね。
それから、問題はですね、もう1つ考えますと、燃料棒が下に落ちて、しばらくグズグズと移動してるうちに、ちょうど爆発状態になって一部が爆発するってことがあります。これはまぁ原発の外には関係がないでしょうね。そのあと更に、1日か2日経って、激しい雨が降る、水をかけたら何かそれが間違って水をかけちゃうっていうような場合ですね。この場合はですね、ある程度の影響が外にも出ると思いますので、だいたい原発の風下10キロぐらいは避難する必要が生じると思いますが、その時までに4日ぐらいはかかるでしょうね。
それから更に、燃料棒の位置が変わって再び爆発するってことになると、だいたい数日を要すると思いますので、私の感じではですね、地震が起きて福島原発の4号機が全部倒れた場合、だいたいそれから1週間後ぐらいに、まぁ1万分の1ぐらいの確率で2回目の核爆発が起こり、その場合が最も危険だと思いますが、原発の風下30キロぐらいがですね、危険地帯になると思います。ただ、風下じゃなくちゃいけないってことと、やっぱり原発の近く…もう今人のいないようなところだけがですね、危険地帯になると思います。
まとめると次のようになります。4号機が核爆発する可能性はほとんどありません。水が漏れて空だきになった時はもう絶対に(核爆発する可能性は)ありません。4号機が地震で倒壊すると1万分の1ぐらいの確率で原発の風下30キロぐらいのところが危険地帯になります。
私はですね、このような理由から、まずドカンといくようなことは無いというふうに思ってますが、もしもですね、4号機が危ないという技術的な見地から書かれたもので、具体的になぜ危ないのか?ということが…核爆発ですね、もう1つはあの、空だきになる方は今度書きますが、空だきの場合は絶対に核爆発は起こりません。別の理由ですね。えーとまぁ、それを少しまたどっかで情報があれば勉強して、修正が必要なところは修正したいと思います。
いずれにしても、多くの方々の…(ここで音声が途切れていました)
(文字起こし by haru)