原発短信・・・医療被曝の問題 (6/13)
下の図に示したように「被曝は足し算」ですし、その中で「医療被曝」はかなりの部分を占めます.原発事故が起こらなければ医療被曝はお医者さんにお任せしておけば良いのですが、どうしても原発の被曝が1年1ミリを超えるようなところは、できるだけ医療被曝を減らすようにしなければならないでしょう.
このブログに前に出した「被曝の4階建て」の図はそれぞれの被曝の幅が少し厳密ではなかったので、今回は自然被曝1.5ミリ、医療被曝2.2ミリ、核実験被曝0.3ミリ、そして原発被曝1.0ミリの寸法を数値に合わせています.
・・・・・・・・・
先日、ランセットという世界で最も権威のある医学雑誌で「CTスキャンを3回から7回程度受けると脳腫瘍や白血病が3倍程度に増える」という論文が出ました.脳腫瘍の方が少ない被曝量(CTスキャン回数)で発症するようです.
この指摘は、2004年にでた同じランセットの論文(日本の医療被曝でガンの発生が多い)に次ぐ医療被曝の警告です.自然被曝や医療被曝などを単純にミリシーベルトだけで比較することは出来ませんが、おおざっぱに言って日常的な被曝でもっとも多いのは医療被曝です.
「医療」は「良いこと」なので「医療被曝」も「良いこと」ということはありません.被曝の原因が良いことでも悪いことでも、被曝による人体への影響は同じです.その点では、「医療被曝は適正なのか?」は常に医師側でも関心を持つ必要があります.
一方、被曝側は、「原発での被曝が多いときには医療被曝を減らす」という方法があることもわかります.できるだけお子さんの健康に気を配り、医療被曝を受けないように生活することは自衛の一つになります.
・・・・・・・・・
ところで、医療被曝が減らない原因は二つあります.
一つは、検査や治療で患者さんや一般人を被曝させる医師は、その後の診断をしていない例が多いということです。よく「被曝は健康に問題は無い」と言っておられる医師で、被曝させた人の健康を追跡している医師はほとんどいません.
医療に放射線を使いたいから安全と言うという不誠実な人も見られます.つまり被曝による障害は確率的に起こるので、自分の患者さん100人は大丈夫だったというだけではダメなのです.むしろ「検査や治療のために必要だから被曝させるが、その後は追跡調査をしていない。患者もどこかに行ってしまうから」というのが普通なのです.
もう一つは「放射線を使うと儲かる」という現実的な問題です.放射線治療は検査も簡単で、点数も高く、患者も検査をすると安心するので儲かるし、便利です.しかも機械の値段が高いので業者との癒着も問題です.
医師がお金と無関係に人の健康だけを考えてくれると良いのですが、すべてはお金の世の中ですから、被曝と健康の関係がよくわかっていない現在では「被曝させても病気になることは少ないが、確実に儲かる」ということになると、その誘惑に勝てない医師も出てくるのです.
とくに日本の医療被曝が欧米の3倍程度というランセット論文について日本の医師はもっと謙虚にその影響について検討する必要があるでしょう。何かにつけてアメリカが、ヨーロッパがという日本の医療界が、被曝になると欧米より格段に高くても「問題ない」という姿勢に疑いを持つのは私だけではないと思います.
この際、日本の医師はもう一度、被曝と医療について深く考え、研究する必要があると思います。
また政府は国民を被曝から守ってくれません。このような時は医師という社会的に大切な職業から見ると、福島原発事故で被曝量が増えているので、患者さんがそれ以上の被曝をしないように配慮していただきたいと思います.
(平成24年6月13日)
--------ここから音声内容--------
ええと、残念ながら放射線ていうのはあの、30年以上消えないわけですね。これはセシウムとかそういうものの半減期が30年で、約100年ならないと1/10にならないという、これ物理的なものなので人間とはちょっと違うわけですね。で、段々段々我々はこの知識を増やしていき、防御を固めていかなければいけないわけですが、その一つとして今まであまり触れなかった医療被曝の問題に少しずつ踏み込んでいきたいと思います。
実際に原発事故が起こらないようなときはですね、大体お医者さんに任しとけば良いんですけども、まぁあの原発の事故があり、かつ割合と被曝してしまったという人はどうしたらいいかっていうことを考えるにも、医療被曝の問題を見なきゃいけないってことですね。この「被曝の4階建て」についてはもうすでに載せましたけど、今度少し図を改良しましてね、寸法で大体判るという風にしましたが、そうしてみますと結構、医療被曝が多いなという感じをされると思います。
先日、ランセットという論文ですね、これはあの何回か紹介しました世界でもっとも権威があると言われてる医学雑誌ですけども、ここでですね、「CTスキャンを3回から7回程度受けると、脳腫瘍や白血病が3倍程度増える」という結果が出ました。ええっと、この論文はしっかりした論文ですが、脳腫瘍の方が若干少ない・・・ま、3回ぐらいで脳腫瘍が出てくるようですね。この指摘はですね、2004年に出た「日本の医療の被曝が多いので、ガンの発生が多い」と。これも3倍ぐらいだったと思いますので、そういう意味では日本でいてCTスキャンを受けるということになると、普通の人の10倍の白血病とか脳腫瘍になるわけですから、若干やっぱり注意することですね。
ただまぁ、内部被曝と外部被曝の区別もありますし、自然と医療被曝と若干違いますので全く同列には比較できないんですが、やっぱりそれでもですね、気をつける必要はあると思います。最近になってヨウ素がですね、放射性ヨウ素がずいぶん下水から出てますけども、これもやっぱり病院由来だと思いますね。病院がかなりずさんというか、管理状態を考えなきゃいけないってことを示してると思います。
こういうことでですね、全体的には「医療」は「良いこと」なので、「医療被曝も良い事だ」というようなことが思われたりしてますけども、被曝はですね、その原因によって良い事になったり悪い事になったりするわけじゃないので、「医療被曝は適正なのか?」ということに対してですね、お医者さん側が常に感心を持つ必要がある、と。
お医者さんじゃない我々としては、「原発の被曝が多いときには医療被曝を減らす」という方法があるということが判ります。特にお子さんの場合ですね、どうしてもまぁ、住んでるところ、食べるものから言って、1年1ミリ超えちゃったじゃないかとご心配になってるお母さん多いわけですが、3年間で回復できますからね。そういう点では医療被曝を減らして、全体として5ミリシーベルト以下に収めると、こういうこともある意味では良い方に利用すればですね・・・医療被曝を良い方に利用する手もあります。
ところで、医療被曝が減らない原因を一応調べてみました。日本ではもうすでに医療被曝による問題点っていうのはすでに指摘されているが減らない、それをですね、一つはあの、お医者さんが追跡してないってことなんですよ。よくお医者さんでですね、「いやぁ、被曝しても大丈夫ですよ。我々はもうレントゲンどんどん当ててますから」、そう言ってですね、その人は病気は治るから退院してしまうんですよね。
ところがその退院した人が次に別の病気になったときに、そのお医者さんに掛かるかどうかっていうのは難しいんですよね。それを少なくとも系統的に調べた結果っていうのは、そのランセット論文なんかあるんですね、広島・長崎(の被爆に関する論文)とかランセット論文。だけど個別のお医者さんでそういうものを発表してる人っていうのをまだ見てないんです、私は。ということはもしかするとですね、お医者さんは調べてなくて「大丈夫だ」と言ってる可能性があるんですよね。
これは放射線の難しいとこですね、要するにCTスキャンをやってる最中に脳腫瘍になるんじゃないんですよね、だから困る。CTスキャンをやったときは別の病気でCTスキャンをやる、その人が退院されて10年経った後に脳腫瘍になる、今度は脳外科に行くと、もしくは救急で運ばれるというようなことでですね、必ずしもそのときに被曝したから脳腫瘍になったっていう関係は、今のところですね、個人のカルテが永久的に、しかも全病院が共通して持ってるわけじゃありませんのでね。だからここはやっぱり、もう一個やってみなきゃいけません。
もう一つはですね、「儲かる」っていうことなんですよね。検査をやりますと儲かる、と。これはですね、放射線治療は・・・治療って言いますか検査は、比較的簡単でですね、まぁ医療点数も高くて、患者も安心するわけですから。ま、どこもかしこも良いんですよ、要するにお医者さんも良いし、業者も良いし、患者さんも良いっちゅうことで、それでちょっとやりがちになるわけですね。
これもお医者さんとしても悩みなんですよ、実は。良心的なお医者さんはですね、“ほんとはこれしたくないんだけどなぁ”と思ってもですね、患者さんは検査してくれって言うし、まぁそれの方がハッキリするし、もしかすると検査した方が治るかもしれないしということがありますんでね、難しい問題なんですが。実はお医者さんと言えどもですね、お金と全く切れてるわけじゃないんですよ。“だからまぁ被曝さしても大した事ないから、儲かるし。”と思うお医者さんもいて不思議ではないんですね。
そういう点ではですね、その欧米の3倍以上のガンが発生してるとか、白血病とか脳腫瘍が増えてるというようなランセット論文が何回も出るわけですから、これについてお医者さんはですね、まず自分たちでよく研究会を開いていただくということと、もう一つはそれを公開していくっていうことですね。やっぱり医療は国民のためですから、そういうのを公開してですね、議論をしていく、と。「ヒステリーの人がいる」とかそんなこと言っちゃいけないんですね、理解が進めばヒステリーの人もいなくなりますし、逆に言えば「安全」と言う人もいなくなります。そういうことで適正なところに落ち着きます。
またあの、もう一つの問題があるんですよ。政府が我々を守ってくれないってことですね。厚生労働省は絶対我々の健康を守ってくれません。「被曝してもいいじゃないか」とか、政府の方針に従ってしまいますので、そういう意味ではこの福島事故を境にですね、お医者さんと我々が協力して医療による被曝を我々が明らかにしていくと、全部「民」ベースでやると、民間ベースでやってもう税金は要らないと、こういう方向に進まないといけないんではないかと思います。
(文字起こし by danielle)