集団自殺を回避する方法(1)・・・誰が節電すると効果的か? | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

集団自殺を回避する方法(1)・・・誰が節電すると効果的か?



仙谷議員によると、日本が原発を止めるのは「集団自殺のようなもの」らしい。集団自殺というとかなりの人が死ぬことを意味しているが、集団自殺を回避する方法はあるのだろうか?



原発を止めると関西電力管内では夏場に10%程度の電力不足が予想されている。関西電力はこれまで原子力が40%と言っていたので、この数字の意味を少し吟味する必要があるが、ここでは「2012年の夏に関西の方で10%の電力が不足し、集団自殺に相当するような被害が出る」と仮定して、どのような対策を取れば良いかについて前向きの検討した。


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まず、このグラフを見ると、夏場の電気消費量が上がり始めたのは1985年ぐらいだが、そのときの電力消費量は現在の半分ぐらいだから、1985年の生活に戻ればまったく問題が無い。それがまず電力消費を考えるときの基本だ。


10%不足という今から10年ほど前の状態だから、自分の歳が今から10年若かったとき、どんな生活をしていたかを思い出せば、その辛さもおおよそ理解できる。私の場合はすでに東京から現在、すんでいる名古屋に移っていた。たしかに今と比較するとクーラーのないところもあったし、37℃、38℃という日が続いていたが、「集団自殺しよう」と思うぐらい辛いことは無かった。



でも、仙谷議員は「個人のことを言っているのじゃない。物作りの工場が困るんだっ!」と恫喝するだろう。それではデータを見てみたい。

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このグラフは夏場の電気をどのような産業が使っているかを示したものだが、なんと言ってもオフィスがダントツで、次が小売業というところだ。つまり、巨大なビルを作り、そこに本社があって社長がいることもあり、ガンガン冷やしているというのが現状である。



それでも政府やマスコミは「家庭で節電」と呼びかけるだろう。なにかやるときには「弱いものを標的に」というのがここ20年の日本の政治家、NHKのやり方だった。日本人は誠実で日本を愛しているので、協力を惜しまない。でも、それは隠された意図がある。



この場合でも家庭の節電はほとんど意味が無いことがわかるし、ものづくりの産業もあまり問題ではない。巨大なオフィスが問題なのだ。だから、オフィスのスペースを今からまとめておいて、夏場はフロアーを1階か2階を閉じれば、それだけでも大丈夫と考えられる。



もともと、日本の電力のひずみは「アメリカに比べ電気消費量が2分の1、電気代が2倍」という電力会社の放漫経営と国民犠牲にある。まずは電力消費をアメリカ並み(2倍)にして電気代を2分の1にするように政府は電力に要請するのが筋である。



ただ、電力に要請すると政治資金は来なくなるし、自分の子供を電力会社に就職させることもできなくなり、天下りしようとしている役人からもにらまれる。だから、政府もNHKも電力に言わずに国民に節電を呼びかけてきたのだ。



節約、もったいない、節電・・・個人の人生や家庭生活には大切なことだが、それを良いことに「国民は言うことを聞く」という作戦に乗るのは次世代の子供たちにツケを回すことになる。



そういえば家電リサイクルを始めようと言うときに、ある通産省の幹部が「日本人は素直だし、官が強く、業界がまとまっているから、家電リサイクルは世界で日本しかできない」と言ったことが思い出される。



今でも、家電リサイクルで回収し、国民からリサイクル代金をとってリサイクルしないで、資源もほとんど回収していない。それでもうけている割合が50%を超える。それでも国民は「良いことをしている」と思ってお金を出す。



こんなことを続けていたら日本は本当に二等国になり、子供たちは苦しむだろう。ダーウィンが言ったように「事実を見るには勇気がいる」という言葉を今こそ、大人は思い出す時期だ。



(平成24年4月19日)



--------ここから音声内容--------



原発を停止するかどうかについて、色んな議論がありますがその中で、えー、かつて官房長官をやった仙石議員がですね、えー、日本が原発を止めるってのは集団自殺するようなもんだ、と…まぁいうふうに表現しました。えー、集団自殺っていうのはかなり人が死ぬことを意味しておりますので、これはまぁ避けなきゃいけない。ま、当然ですね。ですから集団自殺を回避する方法を、ま、示したいと思います。





えー、集団自殺するようなもんだって言ってたんではダメなんですね。で、えーと、まぁどのくらい電力が関西電力管内で不足するか。まぁ関西電力以外はですね、えー、ま、九州電力がやや危険だと、まぁいうだけで、まぁほかの電力会社は関西電力が避けられれば大丈夫なわけですね。





で、えーとまぁ、そのどのぐらい電力が不足するかについて、色んな数字がありますけど、ま、ここは一応10%不足する、と。夏場に10%不足すると…まぁいうように考えて頂ければいいと思いますが。これはいったいどういうことなのかといいますと、実はですね、電気の消費量が上がり始めたのは最近なんですよ。ま、オール電化とかですね、それから、ま、みなさんもあの、クーラーが全てのところについた、と…まあいうのがですね、大体10年ぐらい前なんですね。ですから、ま、大体今から、ま、15年、ま、もしくは20年ぐらい、えー、戻ればですね、えー、ま、問題じゃないんですね。





20年ぐらい前の生活っていうのを、みなさんちょっと思い出していただいて、自分の年が何才ぐらいだったかな、と。そのころどんな生活だったかな、と。ま、それで、今年だけやるっていうことですね。ま、今年、来年ぐらいあるかもしれませんが、ま、石炭火力に切り替えたり、えー、民間の自家発電を戻したりですね、ま、そういうことによって、とにかく2~3年以内に、えー、原発分解消するということはできますんで、えー、ま、あー、えっと短ければ今年1年、えー、夏だけですね。大体1か月頑張るということができるかっていうことですね。





えー、だから、まぁ、ま、10年と思ってもいいですね。ま、私なんか、まぁ名古屋にそのころおりまして、あのぐらいだったらなんとかなるかなっていう感じがします。ま、そうしますとですね、次はあの、仙石議員がですね「個人のことじゃない」と。「モノづくりの工場が困るんだ」と言うでしょうから、それについてもデータを見たいと思います。





えー、このグラフはですね、夏場の昼間に、どこが電気を使うようになったかっていうとですね、もうはっきりとして言えるのはですね、オフィスなんですよ。そりゃそうですよね。昔こんなに大きなオフィスがいっぱい建ってたかというと、それは建ってなかったわけですね。それじゃあ人口が増えたのか、と。やや減ってるわけですね。





そうしますとですね、一人あたりに使う量が増えたんですよ。これは別にまずいことじゃないんですね。えー、エネルギーがあって、えー、別にお金があればですね、広い所使った方がもちろん能率的ですから。しかしそれはですね、節約はできるってことですね。特に本社なんかある所はもうガンガン冷やしてますから。





で、おそらくですね、政府やマスコミはこういう事実を隠して、家庭で節電しようと呼びかけるでしょう。これはですね、もう常にそうなんですね。えー、物…なんかもったいないって言って、えー、家庭に呼びかけて、それでもったいなってみんなが貯金すると、それを国債に使うっていう、ま、そういうやつですからね。





だから私はですね、この日本人が非常に誠実で、日本を愛してるっていうことを逆手に取るっていう、この方法が続くの、僕は感心しませんね。この場合でもですね…このグラフではっきりわかるように、家庭の節電ってほとんど意味ないんですよ。もともと家庭っていうのは節電してんです。モノづくりの産業も(節電は)あんまり意味ないんです。なんでかったら、モノづくりの産業もですね、中小企業なんか家庭と一緒に節電してるんですよ、もうそもそも。





問題なのはですね、「節電しようと言ってる人たちがいるオフィス」なんですよ。変な話なんですね。大企業のオフィス、官庁のオフィス、えー、節電しなきゃいけないとかですね、原発を止めたら大変だと言っている人たちのオフィス、これがほとんどなんです、原因なんですね。だから、自分たちで原因作って他人に責任負わせてるってのが現実なんですよ。で、まぁそれをやれば大丈夫です。





ただ私がもう一つここで言いたいのはですね、日本の電力ってのは、もともとアメリカに比べて1/2なんです、一人あたり。電気代(は)2倍なわけですね。もともと電力ってのは…日本の電力っていうのは放漫経営の国民犠牲の元に成り立ってるんですね。それをやっぱり変えなきゃいけない。ただ、これはやっぱ力勝負では、この庶民が負けちゃうんですよ。なんたって我々電力費払うでしょ? 電力費払うと、それが政治資金に使われて、役人の天下りに使われてですね、我々が出している電力費っていうのはですね、全部我々と逆側の利益に使われちゃうんですね。





まぁ私、こういうことを言うと、ま、家電リサイクルなんかを思い出しちゃうんですよ。家電リサイクルなんかも全然もちろんまったく悪徳なんですけども、通産省の幹部がですね「日本人は素直だから、官が強くて業界がですね…家電業界が集まってるから、家電リサイクルは世界で日本しかできない」って言ったことあるんですね。つまりこれ、役人が得をする制度なだけなんですよ。だから日本しかできないっちゅうわけですね。





私はまぁこういうことを繰り返してるとダメになると思うんですね。やっぱりですね、えー、大人が事実を見る勇気を持つ必要があると思いますね。今度の場合でもそうです。えー、夏の昼場に使ってるのは、えー、原発動かしてくれとか、節電を呼びかけている大企業、もしくは官庁、もしくはそういう所の大きなオフィスが昼に冷房をかけるからなんですよ、夏の。





だからもうそこだけでもやめればですね、大丈夫なんです。家庭はまったく関係ありませんし、モノ作り工場はですね、そのオフィスの人たちの被害を受けるだけですね。ただやっぱり人間は知恵の動物ですから、ま、知恵がなければこういうふうになるっていうこともあるかもしれませんが、やっぱり知識・情報で武装をしてですね、そして我々の生活を守らないと、子供を守らないといけない、と…まぁそういうふうに思います。