4大原因を考える・・・ディーゼル、核実験、レントゲン検診、そしてタバコ | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

4大原因を考える・・・ディーゼル、核実験、レントゲン検診、そしてタバコ



タバコが肺がんの原因の一つであることはまちがいありません。それは統計的なものというより、臨床的に明らかといった方が良いでしょう。だからといって、社会的に直ちにタバコを排斥しなければならないのか、そこをよく考えたいと思います。



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このグラフはこの前にもだしたものですが、全体としてみればタバコを吸う人が減れば、肺がんが増えるのですから、肺がんの原因がタバコとすると、タバコをすえば肺がんにならないということになります。



科学の訓練を受けた人なら、グラフからこのような結論を出すこともそれほどおかしくないと思われるでしょう。たとえば、肺がんの原因がタバコだとしても、タバコを吸えば肺がんになるということではありません。



たとえば、交通の激しい道路に近くすんでいたり、運転手など自動車、特にディーゼルエンジンの排気ガスを多く吸う人がタバコを吸うと、「タバコだけなら問題は無いが、ディーゼルエンジンの排気ガスをある一定以上、吸い込む人はそれとの組み合わせで発症する」ということは大いにあるからです。



一方、タバコだけなら肺にある影響を与え、それが免疫的になって肺がんを防ぐが、そのような人は肺がんにならないので、病院に行かず、また肺がんでもないので肺がんの研究対象にもならないから、本当は「タバコが肺がんを防ぐ」ということが事実でもそれは表面に出ないということです。



つまり、臨床的に「肺がんになる人はタバコを吸っているが多い」ということと、タバコは禁止するべきだとは全く違うのです。少なくとも統計的に逆の関係になっていること、タバコを吸う人が5000万人もいた頃から、ずっと最近までタバコを吸って10年から30年経っても、タバコをす人の2000人に1人、あるいはタバコをすってその年に死ぬ人の20人に1人しか肺がんにならないのですから、「タバコを吸うと肺がんになる」というのは少なくとも間違っています。


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そこで、タバコ以外の肺がんの主要な原因について整理をしてみました。

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まず、ディーゼルエンジンの規制のグラフを見ると、ものすごい速度で規制が行われて来たことがわかります。今から12年ほど前までは、kWh(エンジンがだす力)あたり0.7グラムものPM(小さい炭化してネバネバした粒)が排気ガスに含まれていたのに、今ではその70分の1の0.01グラムまで下がっているのです。



これほどの早さでディーゼルエンジンの排ガス規制が行われたのは「PMが肺がんのもとになる」とされたからです。タバコが肺がんのもとになると言う話と、ディーゼル排気ガスの話は別々に進んでいますが、もちろん統一して整理をしなければなりません。



ディーゼル排気ガスによる肺がんの発生はタバコが注目されているので、なかなか難しいのですが、肺がんの約10%と見られます。


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次に、このグラフは核実験とレントゲン検診による肺がんの発生に関する論文(真鍋医師)から引用したもので、統計的にはよく整理され、わかりやすい論文です。タバコと肺がんに関する平山論文や津金報告などと違い、データを公開しているので、信用もできます。



黒い●のピークなどから、この論文では1960年代に盛んに行われた核実験で肺にプルトニウムが入った時期、結核予防法でレントゲン検診が全児童生徒に行われた時期と符合し、核実験の影響が強かった中緯度の国の動きやレントゲン検診の回数が減った時期とも符合し、白血病との相互関係も合理的に認められます。



また被曝と肺がんの関係では、2004年のランセット(世界一有名な医学雑誌)の論文で、医療被曝で日本人の発がんが3倍にも上ると報告されています。この推定もそれほどシッカリしていませんが、肺がんの平山論文などよりはずっと学術的です。



つまり、タバコが肺がんの一つの原因になるのは確かですが、これらのデータを見ると、統計的にもはっきりとした傾向の見られるものの方が肺がんへの影響は強いと考えるのが科学的には普通です。



つまり、肺がんの原因は、第一に被曝(核実験と検診)、第二にディーゼル排ガス、そして第三にタバコと考えられます。タバコの副流煙などほとんど無関係と考えられます。



福島原発以来、放射線と健康の関係に関心が集まっていますが、被曝が肺がんに強い影響があるとすると、肺がんの致死率が高いのは、肺がんになった治療段階でレントゲンの被曝をすることもあり得ますし、医療の基本からいって疑問があります。



いずれにしても「空気的事実」に重きを置かず、データを公表しないなどの誠実みのないやり方を止めて、被曝、排ガス、タバコなどの問題をよく議論する必要があると思います。


(平成24年4月19日(木))




--------ここから音声内容--------


*今回は「音飛び」等が多くありまして、憶測ですが判る部分は先生の記事より「補足」してあります。



ええっとあの、肺ガンですね。4つの原因について、ま、ここで考えてみたわけです。4つの原因っていうのは、ディーゼルエンジンの排ガス、核実験、それからレントゲン検診、集団検診、それにタバコ、この4つがあります。




ええと、タバコがですね、あの肺ガンの原因になるっていうことは確かなんです、それはもう全然疑っておりません。臨床的にですね、お医者さんが、えー、肺ガンの患者さんを診ますと、大体タバコと関係があると、これはもうね、全然何とも思ってません、それはその通りです。ただ、この前にも出したこのグラフですね、タバコを吸う人が減ると肺ガンが増える、ということはですね、やはりね、どう計算してもタバコと肺の関係がそれほど強くないってこと示してんですね。





強くないっていうのはですね、どういうことかって言いますと、例えば運転する人とか、道路のそばに住んでるような人で、えー、ディーゼルエンジンの排ガスをうんと吸う人で、タバコ吸うと肺ガンになるとかですね。えータバコだけが(文章より:肺にある影響を与え、)免疫作用みたいのがあって肺ガンを抑えるとかですね、本数によるとかですね、いろんなそういう副次的なものが、かなり複雑に絡まってるっていうことは、まぁ間違いないと思うんですね。





で、一方ですね、あの臨床的に肺ガンになると言ってはいるんですけど、タバコを吸って肺ガンに(文章より:なるということ)少ないんですよね。だからもちろんその、タバコ吸って肺ガンに、半分ぐらいが肺ガンになるっていうんならですね、こういうグラフにはならないんですね。もちろんタバコを吸う人が減れば、肺ガン(文章より:が増え)ていくと。





諸外国でも、ちょっとつじつまが合わないんですね。これはどうしてかって言うと、タバコ吸ってる人がものすごい多いからなんです。ま、タバコ吸ってる人は昔は5000万人もいたわけですよ。ところが肺ガンていうのはその頃ですね、2万人しかいないわけですからね。そういう数の比っていうのがすごく大きいわけですよ。





ま、今タバコ吸ってる人で、あの、肺ガンで亡くなる人って2000人に一人ぐらい。で、まぁ今年亡くなった人の数、えー・・・20人にま、それでも一人よりかもうちょっと多いんですけども、1000人とかそんなもんなんですね。

ということは、ま、例えば2人に一人でもですよ、一番これタバコについて辛(から)い見方をしても、残りの9人は他の病気で亡くなってるんですよね。ですから「タバコを吸うと肺ガンになる」っていうのは、やっぱりこれ言い過ぎなんですね。ましてそれを元に、社会的に何かタバコの排斥運動する、これはね、その人の趣味の領域みたいになってきちゃうんですね。





何故かって言いますと、ディーゼルエンジンの、この、排気ガスの規制を今度示しましたけども、ものすごい勢いで規制されてるんですね。ええと、0.7gだったんですよ12年前は、えー、ある出力当たりなんです、キロワットアワー(kWh)当たりなんですが。えーまぁ・・・(文章より:PMが)これはネバネバしてましてね、小さい黒い粉なんですよ。ですからこれがまぁ肺に入ってべたっと張り付いてですね、肺ガンになるっていうのはもうずーっと言ってるわけですね。みんなも怖がってるわけですよ、ま、確かにそうでしょう。





で、これね、あのどのくらいのガンになるかっていうのが、あんまりよく判ってませんが。これだけの勢いで規制するってことは“相当危険だから”ってことになりますよね。えーこれはもう大変なもんですよ。で、これだけの勢いでPMを規制し、かつタバコの禁煙運動を展開してんだから、それはね、あの少しは肺ガン(音声不明瞭)・・・なきゃいけないですよ。年齢を長じてもダメですからね、要するに長寿になってるのを差し引いても、急激に増えてるわけですからね。





肺ガンの中にいろんな肺ガンがあるんですね。それはあの今度、少し整理しようと思いますが、そういう動きから見てもちょっとおかしいんですね。まぁ・・・ディーゼル発電の肺ガンになる率は10%ぐらいですが、これタバコの陰に隠れてるんで20%かもしれませんね、半分ぐらいかもしれません。





それから、レントゲンとか核実験の被曝によるガンの発生については、有名な真鍋先生の論文があるんですが。これはまぁ色々ご意見もあるんですが・・・ただですね、タバコと肺ガンに関する平山論文とか津金報告なんかよりかはね、ずっとあの何て言いますか、誠実味があります。論文もきちっと科学的に分かりやすいですね。ていうのはデータも公表してるし、考える過程もよく書いてあります。





それから見たらですね、平山論文なんていうのはですね、ま、副流煙なんか指摘したりなんかした論文ですけどね、もう全然データはもう公開してないし、それでまた判りにくーい表になってるんですね。例えば、100万人の調査で200人ぐらいの人を対象にしたりですね、なんだか全然分からない、あの一部のデータの公開と見られても仕方ないような論文なんですよ。だからやっぱり、あの論文読むとですね、やっぱタバコで肺ガンで疑わしいなと思うのは、これは普通の考えですよね。やっぱりきちっと書かなきゃいけないと思いますね、誠意を持って。





この論文で、この黒い●のピークのところ、ま、ここんところがですね、1960年代に盛んに行われた核実験とプルトニウム、それから結核予防で全児童・生徒に行われたレントゲン検診、ま、こういったものとの関係を論じておられまして。ま、それから白血病との関係、そいから、ええとフォールアウト(放射性降下物)がですね、核実験の降ってきたプルトニウムがうんと降ってきた(文章より:中緯度の)地域の国の問題などをよく検討されてます。





で、それに加えて、まぁ2004年のランセットという医学雑誌の論文がありまして、ま、これは医療用被曝で日本人は3倍も発ガンになってる。これはもうお医者さん方が一斉に反発しましたけども、私そのお医者さん方の反論を読んでみましたらね、やっぱり経験的に大丈夫だっていうの多いですね。





経験的に大丈夫だっていうのは、このこういった確率的に起こるのに言えるのかな?と思いますね。「自分の患者さんだけは大丈夫でした」と。「大丈夫だ」つったって、そのお医者さんとこにその患者さんがですね、40歳ぐらいでかかってて、その人が80歳で亡くなるときにそのお医者さんにかかったかどうか怪しいですからね。ですから、ま、単に診断されるときに、・・・ま、レントゲン・・・便利だから、もう面倒くさいからそう言っとくと、ま、いうこともあり得ますからですね。





で、まぁこれらを全部見てみますとですね、私の感じですよ。第一に肺ガンの原因は被曝ですね、核実験とかレントゲン検診。第二にはディーゼル排ガス、第三にま、タバコもあるなという感じですね。また、この副流煙なんかですね、何の(音声不明瞭)・・・ありません。(音声不明瞭)・・・思いますね、これはデータからですよ、別に私の個人的見解じゃなくてですね。





えー、タバコの副流煙の問題であれば、もうレントゲン検診もできないしですね、・・・もちろん排ガスも0.01gじゃダメだという話になっちゃってですね、非常に変な(音声不明瞭)・・・それでより健康だから良いんですね。私もま、タバコの煙そんなに好きじゃないですが、そういうことと関係なくですね、ま、そういう風に思いますね。





ええと私ですね、今、福島原発の事故以来、放射線と健康の関係に関心が集まっとります。もしもここで(音声不明瞭)・・・ように被曝と肺ガンの関係が強いとするとね、肺ガンっていうのは結構、致死率が高いんですけども、これは肺ガンになるとレントゲンどんどん撮りますから、余計にガンが進むってことも考えられないけど、ま、そういうのも関係があるかもしれませんね。





お医者さんがあの、「被曝なんか大したことないよ」って盛んに言われてるんですけども、私はね、健康を守るという一番大切な医師の任務から言えば、「被曝してもいいよ」って言うお医者さんはちょっとね、やり過ぎじゃないかと思いますよ。やっぱりね、もう少し慎重に(音声不明瞭)・・・中で検討してですね、えー、この福島原発事故もありましたから多くの方が心配なさってますしね。初期的な症状として鼻血だとか下痢っていうのも結構ありましたから、ま、それをですね、「お前らはバカだから勝手にそんなこと考えて」っていうんじゃなくて、えー、もう少しですね、踏み込んでお考えいただきたいと思います。





それからもう一つは、やっぱりタバコの排斥運動ですね。これが本当に必要なものか?ってことですね。ま、タバコの排斥運動やったのはヒットラーだとか、前のWHOの事務局長みたいにですね、「さあタバコを追放できたから、次は酒を追放するんだ!」、最後はもう「全部追放するんだ!」って宣言してるわけですね。それはですね、ほんとかな?と思いますね。




ていうのはタバコを吸う人はですね、「何故タバコを吸うのか?」という質問に対してですね、ま、「気分がゆっくりするから」とか、「タバコは文化だから」とこう言っておられるんですね。で、タバコを嫌う人は何か?っていうと、他人の健康をちょっと注意してるっていう感じはしないんですよ。何かこう、社会からそういうものを排斥しようと考えてるって気がしますね。ですから噛み合わないんですね。





そいからタバコを吸うっていうのは、この前書きましたけども、被曝とは全然違ってですね、自分で望んでですからね。だからこの、自分で望んでおやりになることと、そいから無理やり被曝させられることとは違うんですね。レントゲンの集団検診が減ったということもそうですね。ガン検診に至ってはですね、どうもがん検診した方がガンが増えるということで、厚生労働省もですね、補助金を切ったり色々してますけども。ま、そういう事に対してやっぱり慎重にきちっとやる、と。それから科学的に考えるってことが必要だと思うんですね。





えーまぁ、私が対象としてるもの、ほんとにそういうの多いんですけども、何かテレビで煽って、何か社会的な事実を作ってしまって、その社会的事実ができてしまうともう、それを逆らうとものすごくバッシングする、と…ま、そういうようなですね、風潮が非常に強く見られます。えー今ですね、禁煙を呼びかけてる人、もしくはですね、電車とかそういうとこで「タバコ止めましょう、止めましょう!」と言ってる人。ぜひですね、一回よくご自分でですね、データを整理されて、本当にあの、タバコというのがですね、社会から排斥しなきゃいけないほどのものなのか、それとも個人で迷惑を掛からない程度にどっかで吸っておられるんだったら全然構わないとそのくらいのものなのか、そこら辺はですね、よーくお考えいただきたい。





そいから、「タバコの害が大きいから、福島原発で子供たちが被曝してもいいよ」なんて、無茶苦茶な議論をですね、国立がんセンターを中心に発信してるわけですけども、こういったことはですね、今までのこういった科学的なものの見方とまったく違いますからね。やっぱりこれも引き下げて欲しいと、こういう風に思います。


(文字起こし by danielle)