定時降下物による新たな被曝・・・専門家、国立研究所の責務 | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

定時降下物による新たな被曝・・・専門家、国立研究所の責務



日本政府、そして電力会社を信用していた多くの日本人にとって思いがけないことが起こり、残念ながら「放射能と生きる」というのは今の日本人にとって仕方が無いことになりました。子供ができ、楽しい人生を夢見て生活をしていた多くの人を不安のどん底に突き落としたのです.



その一つに一度、地面に落ちたセシウムなどの放射性物質の再飛散という新しい問題があります。これについて私は1月に気がつき、そのご注意をしていますが、まだ続いているようです.



これまで、といってもチェルノブイリの事故ぐらいしか例がないのですが、原発から漏洩した放射性物質は、まず空気中に飛んで呼吸によって人の体の中に入り、地面に落ちてそこからの外部被曝を受けることになります.



その後、地面に落ちたセシウムやストロンチウムは1年に1センチぐらいずつ潜っていってそのうち、私たちの環境から遠ざかっていく・・・そんなような経過をたどりました。またセシウムやストロンチウムは半減期が30年なので、30年で2分の1,60年で4分の1、そして90年で8分の1ですから、およそ100年で10分の1になり、その点でも少し時間は長いのですが、徐々に事故の影響が少なくなっていくと考えられていました.



ところがこの「再飛散」の問題はそれを根本から覆すものです.2011年の事故の後、4月、5月、6月と「定期降下物」・・つまり、空気中に飛散していた放射性物質が徐々に少なくなっていったのです.そして8月には1日あたり10から30ベクレル(1平方メートルあたり)になり、8月19日には放射性ヨウ素が突如として観測され、多くの人の懸念を呼びました。



しかし、9月から12月半ばまで、一日10ベクレル前後に落ち、このまま空気中のセシウムは無くなって行くと考えられました.ところが、12月後半になって20から50ベクレルぐらいの値が検出されたと思ったら、1月2日には432ベクレルとなり、その後、1月末にいったん収まったかに見えましたが、また2月中旬に400ベクレル規模の降下物がかなりの期間、見られたのです.



この原因について、これまで通り国や自治体などは「大したことは無い」と説明していますし、原因については地面に落ちたセシウムが再飛散したとしていますが、色々疑問点もあります.



原因としては地面からの再飛散、瓦礫やゴミの焼却、福島原発からの漏洩、他の原因などが考えられ、まだそれを特定するには至っていません。このような状態が続きますと、福島から漏洩した総飛散量80京ベクレルの放射性物質が日本人の体の中を何回も通ることになります。



「福島の農家を助けよう」というコピーで多くの食材が福島から持ち出され、それは日本の国土を汚染しました。現在、「温かい心」というコピーで瓦礫の搬出が続いています。



このようなことが少しずつ続いた時に、一つ一つは大丈夫としても、それが積み重なって最終的に日本国土がどのようになるのか、国立環境研究所など本来なら国民のために計算し、公表しなければならないところも、政府の方針に従って「計算しない、大丈夫」を繰り返しています.



これまでの被曝による健康障害の問題は、主に「一回だけ体を通る」ことを基本にしていました。それを考え直さなければならない現象が出ているのに、瓦礫を搬出したり、汚染の拡大を止める基本的な考え方と方法を示さずになりゆきにまかせることは大変に危険と思います.



自衛手段は風の強い日はマスクをするということにつきますが、子供はマスクを嫌う場合も多く、弱い人に手をさしのべるという意味でも識者は声を上げるべきでしょう.

(平成24年3月18日)



--------ここから音声内容--------


ええっと、まぁ今度の福島原発の事故はですね、えー、これまでまぁ非常に純情に…まぁその心正しくといいますか、日本政府とか、えー、それから電力会社を信用してきた多くの日本人にとっては、まぁ思いがけないことだったわけですね。えー、蓋を開ければ政府がほとんど原子力発電所の安全に、まぁ注意を払わなかった、と…むしろ妨害してきたということがわかったりいたしました。





えー、まぁしかし、残念ながら事実はですね、これから放射線と生きる、とまぁいうことが今の日本人にとってやむを得ないということになりました。えー、ある方としてはですね、子供ができ、楽しい人生を夢見ていた生活が突如として不安のどん底に陥れられた、ということですね。ま、これに対する反省、もしくは法的な制裁ってのはまだ行われておりません。よく慰謝料とかですね、まぁそういったものがありますが、えー、そういうことを考えますとですね、えー、今度の東電事故が起こした大きな不安はですね、本当に、えー、どのようにして補償されるのか、とまぁいうふうに思いますね。





しかし、もう一つ問題があるんですよ。これはあのーセシウムの再飛散の問題ですね。私はまぁ1月にこれに気がついたわけです。このことは、えー非常に新しいことで、えー、これまでにちょっとないことであるということを少しご説明をしたいと思います。というのは、あの、あまり新聞とかそういうマスコミが取り扱わないんですね。なぜ取り扱わないのかという…よくわからないんですけども、そういうことが続いているわけですね。





なぜこれが新しい現象かと言いますと、ま、原発が事故を起こしますと、そっから漏洩した放射性物質はまず空気中を飛ぶわけですね。そいで外部被曝の原因になったり、呼吸によって人の体の中に入る。やがて地面に落ちて、まぁそっからの外部被曝を人間が受ける。しかしその地面に落ちたセシウムやストロンチウム(は)やがて雨に流れたり、一年に1cmずつぐらい土の中にしみこんで私たちの環境から遠ざかっていきます。





こういった物理的な移動と共にですね、えー、半減期の問題がありますから、30年で1/2、60年で1/4、そして90年で1/8になり、およそ100年でまぁ1/10にまで下がります。えー、まぁだんだんだんだん、ええっと物理的にも我々の心の中からも少しずつ去っていく、とまぁいうものだと思っていたわけですね。





ところが、この再飛散の問題はですね、まぁそれを私は根本からくつがえす可能性のある危険なものだと思ってるわけですね。えー2011年の事故のあと4月、5月、6月と定期降下物が、まぁ落ちて、少しずつ減っていったわけです。で8月ぐらいになりますとですね、もう落ち着いてきました。8/19だったと思いますが、放射性ヨウ素が突如として観測されて、ま、これも私もずいぶん調べましたが結局わかりませんでした。





えー9月、10月、11月、12月なかばまでですね、一日の降下量は10ベクレル前後に落ちまして、まー、このまま少しずつ減ってくだろうなぁと思ってたんです。ところが12月後半になって突然ですね、上がり始めまして、1/2には432ベクレルを打ち、いったん1月末には収まったに見えたんですが、また2月中旬にはですね、かなり長い間、あー、まぁ2週間ぐらいですね、高い期間があり、その間に400ベクレル規模の日が、まぁ3,4日もあった、と。ま、こういうですね、ことになりました。





これに対して相変わらず国とか自治体は「たいしたことない」ということを基調に説明してますけども、やっぱこれはですね、やっぱり原因を明らかにしてほしいんですね。えー、地面からの再飛散だったらば粒径の変化もあるし、焼却や…ごみの焼却なんかですと、その粒径はまた決まっておりますし、福島原発からの漏洩も一応考えられますし、ま、その他の、えー原因もあり得ます。





えー、まだそれを特定するにいたっておりません。えー、こんな状態が続いてですね、もしこれがほんとであれば…ほんとであるか、データはほんとなんですけど、えー、福島から漏洩した総飛散量の放射性物質の80京ベクレルなんですが、これが一回だけではなくて何回も日本人の体の中を通るってことになるんですね。しかも、福島の農家を助けようというコピーで多くの食材が福島から持ち出されていますが、これは放射性物質を持ち出しているのと同じです。





それから最近は「温かい心」とかいうコピーで瓦礫の搬出が続いてますが、これもやはり、えー放射性物質を飛散させてはいるわけですね。こういったものを一つずつ計算しますと、もちろん大丈夫な場合が多いわけですが、それが積み重なった場合どうなるのか、ま、こういったことをですね、ま、国立環境研なんかが、本来は税金で…国民の税金でいってるわけですから、税金を使っている政府の方を見るんではなくて、やっぱり国民の方を見てですね、計算し公表しなければいけない、とまぁいうふうに思います。





えー、まぁ、まとめて言えばですね、これまでの被曝による健康障害ってのは常に「1回だけ」放射性物質が体を通るんだということを、まぁ、基本にしているわけですね。ま、それを考え直さなければならない現象が出ているわけです。えー、瓦礫を搬出したり汚染の拡大を防止する…どういうふうな基本的な方法はあるかってことを示さずにですね、なりゆきに任せて一つ一つ…そのーなんか「人を助けるんだ。だから日本中を汚染させていいんだ」っていうことを続けるのはですね、非常に問題だと思います。それからまぁ、風の強い日にですね、マスクをするわけですが、大人はマスクできますけどね、子供は嫌がってなかなかマスクしません。えーやはりですね、私はあのー、子供を中心に、えー物事を考えるべきだと思いますね。





ま、ちょっと、あの…ここまで話してきて付け足したくなったんですが、えー、赤字国債だって、えー我々が本当は税金を払ってやるべきことを、国債という形で出して、子供たちがそれを払うわけですね。ギリシャなんかと違って外人が国債を買うわけじゃありませんから、日本が破綻するってことはないんですが、子供たちが税金で払わなきゃなんないってのは確かなんですね。





それから、例えば放射性の…原子力発電所の電気はほしいけども、廃棄物は嫌だ、と。「廃棄物はどうすんの?」 「いや、子供の時代につけとく」つって、今ためてるわけですね。えー、赤字国債にしても、それから放射性廃棄物の貯蔵所の問題にしても、いろんな問題があるわけですね。今度の福島の被曝の問題も、お子さんが一番多く被曝しましたね。1年に20ミリシーベルトとかですね、給食もずいぶん被曝しました。修学旅行も、大人が行かないような汚染された所に子供を連れて行くっていう例がありました。





私は、今度のことを機会にですね、こういった再飛散の問題も含めて、やっぱり子供を守るということを中心に考えて、そしてまあ、ついでに大人も守られる、というような、子供を大切にする日本にですね、変えてもらいたいな…と私はそういうふうに思っています。