2011現代被曝論1. 事故の頻度と被曝限度(12/21) | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
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2011現代被曝論1. 事故の頻度と被曝限度(12/21)




安全委員会は、1)平時には1年1ミリが被曝限度、2)頻度の高い事故については1年1ミリ、3)炉心が損傷するような事故は1万年に1回だから1事故あたり5ミリ、4)格納容器が機能を喪失して放射性物質の閉じ込めができないような事故は10万年に1回だから、その時には1事故あたり5ミリをある程度超えても良い、というのが「事故前」の指針である。


この考え方を安全委員会は、「事故による線量と事故の発生頻度の兼ね合い」とし、その具体的な表現は 3)の場合「発生事故あたり実効線量5mSvを超えなければ、リスクは小さいと判断する」という表現を使っていて、4)の場合は「5mSvをある程度超えてもその「リスク」は小さい」としている。またこのような考え方は世界共通であり、イギリスの例を示す。


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(平成23年12月21日(水))



--------ここから音声内容--------





ええと、あの緊急時はですね。1年1ミリシーベルトじゃなくてもいいと、「ICRP」が言ってるとかいうんですけど、ICRPはまぁ、別にあのこれ、NPOですから。任意団体ですからね。それからまた、日本の人為をなんか規制するようなもんでもありません。やはり、日本の安全は、日本の原子力安全委員会が指針を出してるわけですね。ま、それがある意味では法律になったりしてるわけですが。





ええと、緊急時のことについては、私は法律は良く知らないんですね。どっかにあるかもしれませんが、まぁ、緊急時はですね、私が知ってるのは、原子力安全委員会がですね、指針として出してるんですね。ま、こういうふうに考えなさいと、事故を起した時は。これはどういうことなってるかっていうと、「事故が起こってない時は、当然1年1ミリシーベルトです」とこう言ってるわけですね。







それから頻度の高い事故。「毎年のように起こるとか、10年にいっぺん起こるとか、20年にいっぺん起こるとか、そのくらいの事故についてはですね、これは1年1ミリにしなさい」とこういうわけですね。これは明記した書類がいくらでもありますから。これはもう、複数の書類が何回もそれで出てますからですね。







それから、炉心だけ損傷するような事故。これは、だいたい1万年に1回位起こるので、このときは1年5ミリにしても良いですよ」っていうわけですね。それから、10万年に1回ぐらいはですね、ええと、今度のような事故。格納容器まで壊れるということが起こるので、こういった「10万年に1回ぐらいの事故の時には、1年5ミリをある程度超えても良い」と、こういうふうに言ってますね。で、このような考え方は世界的で、まずイギリスの例を説明しますが。







えー、事故による線量は、事故の発生頻度との兼ね合いで決めるということなんですね。そうしないと、なかなか決まらないわけです。どれがいいかっていうのはですね。まぁ、あの、雑な人はですね、「緊急時は」って言うので済ませますけど。普通、「緊急時は」って言うとですね、「何を緊急時って言うの?」とか「緊急時っていつまでなの?」とかですね。「緊急時になると、何で人間の体は放射線に強くなるの?」とかいう質問されますと、それでもう終わりですからね。だから緊急時ってのを、もっとはっきりしなくちゃいけないわけですね。そんな乱暴なことで工業的な技術を作るわけにはいけませんから。






で、事故が滅多に起こらない場合は5ミリで良い、と。何でかって言ったら、もう1万年に1回の事故っていいますとね、えー、まぁ5ミリでもいいかな?ということですよ。っていうことは、あのこれは1事故あたりですからね。一生涯で100ミリでいい、と。100ミリか105ミリになる、っていうことですから。ま、そのくらいはいいんじゃないか、と。そうしないともう、絶対に安全だってことになると、原子力発電所できないからってことでまぁ、決めたわけです。





それから、もっとひどい時、10万年に1回ぐらいの事故、これはまぁ今度のような事故ですね。格納容器が壊れちゃう、と。そういった時にはですね、それでも5ミリシーベルトある程度超えてもそのリスクは小さい、っていう表現にしてます。






つまり、ここで注目すべきなのは、やっぱり5ミリシーベルトっていうのはリスクなんですよ。危険なんですね。ええと、個人的な意見いろいろありますよ。しかし原子力安全委員会っていうのはですね、日本を代表して日本人を被曝から守る、そういう組織なんですよ、これ。公的な組織なんですね。その公的な組織は、被曝をリスクと見てるってことなんですよ。で、「5ミリシーベルトある程度超えても、10万年に1回ぐらいなら、そのリスクは小さい」と表現してます。







これについて、イギリスの例を出します。アメリカでもドイツでも皆同じようなグラフで、国によってちょっとだけ違うんですけどね。イギリスでは、「千年に一度ぐらいの事故なら、10ミリシーベルトまでいい」と。これ、1事故あたり10ミリシーベルト、1年じゃなくてですね。1事故あたり10ミリシーベルト。それから、1万年に1回ぐらいの事故なら、100ミリシーベルトまでいい、と。これも1事故あたりですね。そういうふうに言ってるわけですね。えー、これはもう、あの、ここにもグラフ出しましたけども、これはもう世界共通の考え方なんですよ。







だからICRPがですね、5ミリまでいいとか20ミリまでいいと言ってんのは、無制限に言ってんじゃないんですね。福島の事故が、1万年に1回ぐらいとか10万年に1回ぐらいなら、そのぐらいで良いって言ってるんですね。その「何万年に1回ぐらいの事故なら」っていうことが付いてるんですよ。ところが福島の事故って言うのはですね、原子力発電所が本格的に動いた1990年から、まだ20年しか経ってないんですね。20年間に、7つの原子力発電所が壊れました、震度6で。そのうち全電源を失ったのが3つ。爆発寸前までいったのが東海第二、それから爆発したのが福島第一ですからね。







これをもって、10万年に1回とはいえませんよ。それからよくですね、今度の地震は千年にいっぺんだからって言うけど、それは地震は千年にいっぺんだったかもしれませんよ。だけども、震度は6ですからね。そいから津波が来たっていいますけどね、原子力発電所は多重防御ってのやってるわけですから。津波が防潮堤を超えたら爆発する、というのは多重防御ではありません。防潮堤が破られたら終わりってことですから。









事実、東海第二発電所、茨城のですね、これは津波は越えなかったんですけども、ちょうど工事中で防潮堤に穴が開いてた、と。そっからちょろちょろ出てきた水が、やはり電源を止めちゃったわけですね。






ということはどういうことかって言うと、今度の事故ってのは、津波がちょっと来たり、地震が震度6だったりしたら起こるわけですからね。だからこれはとても1万年に1回とか10万年に1回とかいう問題じゃないんですよ。ですから、まぁ言ってみれば、どんなに大きく見ても100年にいっぺんなんですね。実績は20年にいっぺんなんですよ。






ちゅうことは、どういうことかつったら、1ミリシーベルトは上げられないっていうことなんですよ。これはね、僕はここでぜひ言いたいのはですね、これは私の意見じゃないんです。原子力安全委員会がこれでずっとやってきて、紙にも書いてきてるんですよ。






ま、ここは被曝論ですからね、言いたいことはそういう倫理的なことではなくて、ええと、事故の被曝限度を1年1ミリから5ミリとか、5ミリを少しオーバーするぐらいまで上げるにはね、今度の事故が1万年に1回よりか少ない頻度だということを、何かで証明せんといかんですね。とうてい、証明できません。それを証明したら5ミリまで上げられる、ってことなんですよ。やたらと5ミリまで上げられるはずないんですよ。







これは皆がね、「おかしいなぁ」って言ってましたね。「何で事故が起こったら、上げられるの?」と。「被曝っつうのはそういうもんなの?」ってずいぶん疑問に思ってたんで。そうじゃないんですよ。1万年に1回位だったら5ミリでいい、それも1年5ミリじゃないですよ。1事故5ミリですね、1事故5ミリ。そのくらいまではいいということですよね。で、それは生涯に渡って言えば、1万年も生きる人いませんから、1事故5ミリってことは、一生涯100ミリ被爆していいところを105ミリになるっていうことですからね。それは1万年に1回事故が起こる場合なんですよ。







だから今度のことはですね、まったく見当外れなんですよ。ほいで、こんなにその基準を変えていいならね、最初からそんな基準でいかないけないですよ。事故が起こったら、事故の基準ですからね。事故が起こった時の基準を決めといて、実際に事故起こったら、その基準を変えるって言うんじゃ、何のための事故の基準か分かんないわけですよ。これはもう電力会社のカモフラージュに乗ったと、いうふうに言われてですね、言い返せないでしょうね。ま、被曝論最初ですから、これぐらいで止めときます。


(文字起こし by danielle)