2012議論を要する問題 再生可能エネルギーと持続性社会(1/6)
~エネルギーは再生できるか?~
学生さんから二つの質問がありました。エネルギーは再生できるかということと、持続性社会は成立するかということです。このことについて音声でお答えします。
--------ここから音声内容--------
ええと、学生さんから二つの疑問が来ました。今までもですね、実は学生さんとか高校生とかからとてもいい質問がいっぱい来るんですが、私がちょっと書く時間がないので、お答えできないことがありまして、非常に残念に思ってきました。それで、今日ふと思ったのは「あ、そうか。録音すればいいや」と。学生さんはですね、ほとんど音声を聞けるでしょうから、初めての試みでちょっとやってみます。
今日のご質問はですね、エネルギーの話で再生可能エネルギーというのを勉強したけど、どうも納得がいかない、というのと、もうひとつは持続性社会というのは、本当に成り立つんですか?と、これ学生が講義を聞いてですね、疑問に思ったわけですね。で、学生さんの説明が書いてありましたがとても、もっともなことです。
若い頃にですね、一つ一つのことを疑問に持つということは非常に重要なことですね。
まず、あの「エネルギーが再生できるか?」というと、エネルギーは再生できません。ちょっと難しい話になりますが、「エントロピーの増大」という原理がありまして、大体現実的にはですね、色々難しい計算や条件あるんですが、現実的にはエネルギーはですね、30%しかまず使えないんですよ。つまり、100のエネルギーの元があるとしますね。例えば、石油でもいいし、太陽熱でも何でもいいんですけど、それを有効に使えるのはまぁせいぜい30%ぐらいなんですね。もっと普通は低いんです。
例えばですね、発電所で電気を起こすときに、石油を100焚くと30とか40とか、一応、電気が取れるんですけども、現実にはそうはいかないんですね。それは、電気が取れるというだけで、それを送電したり変電したりしなきゃいけないんです。100ボルトの電源が、家庭のコンセントまで来なきゃいけないんです。送電ロスが15%ぐらいあったり、電線を引かなきゃいけないとか、家庭の中ではいろんな電気機器が要りますから。そうするとですね、我々がコンセントに電気を差し込んで、スタンドで電気を見る、と。スタンドっていうのもエネルギー要りますからね、作るときに。そうするとですね、大体まぁ環境関係のきちっとした計算では、1%か2%なんですよね。ちょっと信じられませんが。
ですから100の石油を使って、家庭でスタンドを使うということですね。ま、どんなに多くても10%はいかないんですよ。ですから、LEDを使うということはあります。LEDが高いということはですね、LEDを作るときに非常にエネルギーを使う、ということなんですね。
そういう点ではですね、エネルギーというのは100分の1しか使えない。じゃ、残りの99はどうなるかっていうと、これはエントロピー増大の原理って言いますかね、そういうものでダメになっちゃうんですよ。最初は、発電所の所は30%~40%っていうのは、高熱源から低熱源に熱を捨てて仕事を取り出すという、ちょっと難しいんですが、それの効率があります。
それから今度、送電線で運んだり変電したりすると、そのときにロスが出て、ロスが出ざるを得ないんですけど、熱となって放散します。それでまぁ、15%無くなるんですね。それから家庭に引き込みますと、それまでも電線とか鉄塔が必要なんですけども、ブレーカーだとか電線とかコンセント、電気スタンドなんか必要なんで、それを作るときのエネルギーがかかりますね。ですから非常に低いんですね。
で、エネルギーっていうのはですね、再生できないんです。二つありまして、数%しか使えないということと、発電所でですね、高熱源から低熱源に熱を捨てますんで、温排水というのが出るんですね。これ、原子力発電所以外でもどんなものでも出るんですが。同じように出るんですけども。その温排水は使えないんですよ。
なぜ使えないかって言いますとね、温排水を使うって言う計画はいくらでもあるんですが、成功しないんですよね。なぜかって言いますと、温排水もまた、周辺に熱を捨てなきゃいけないんですね。そうすると300℃の熱ですと、周辺が25℃ですから、300℃から25℃に捨てられるんですね。ま、絶対温度ですから300℃といっても、大体600Kぐらい。25℃といっても大体300Kぐらいですから、その差が300Kぐらいあるわけですね。ところが、80℃と25℃というとですね、比率から言ったら、すごく少ないんですね。350と300、絶対温度で。そうすると、ものすごく比率が少ないので、その熱の差しか取れないんですね。
そうしますと、この温排水を使う機械を作らなきゃいけませんから。その機械を作るときのエネルギー消費を、得られるエネルギーとも比較しなきゃなんない。やっぱり、これは成立したことがないんですよ。従ってどうしてもですね、エネルギーっていうのは再生しないんですね。
私が言ってるのは、「再生可能エネルギー」という言い方自身は、ま、物理の言い方と違うんで、そんなことを技術倫理とか、そんなんで言っちゃいけないんですよね。元々、再生可能エネルギーっていうこと自身が、倫理違反なんですね。エネルギーは再生できません。
じゃあ、植物は再生可能エネルギーか?って言うとですね、例えば樹木をとって焼くというやつですね。これはね、難しいんですよ。一つはですね、もちろんエネルギーとしては再生してませんが、太陽エネルギーで勝手に生えたものを、山に入って木を切ってきて、ま、このエネルギーがどのぐらい掛かるかは別にしましてね。そして切ると、植物は命を失いますよね。命はエネルギーではないから、という言い方もあるんですが、ちょっと倫理としては、そこ考えなきゃいけないんですね。それからもちろん、山の木を切ってくるってことは、多少エネルギーとしてはプラスになるんですけどね。それを再生可能エネルギーと言うかどうかという問題がありますね。
それから、もう一つ付け加えておけば、実は山の木のような、再生可能エネルギーじゃないんですけど、自然に生えたものを、人間が使うというのはもう今から200年前に破綻しました。破綻したときの人間一人当たりのエネルギー使用量は、現在の日本人の500分の1ですから、とうてい現在の日本が再生可能エネルギーっていうのを自然エネルギーでやっていくわけにはいきません。それを全部騙すことを、ま、技術者倫理なんかの講義でですね、やるというのはちょっと倫理違反かな?とこういうふうに思います。まぁ一応これだけ、ちょっと今日はやってみました。
(文字起こし by danielle)