楽勝だと思った。
ケイゴにお金の相談をして、紹介されてキャバクラで働くことに。・・・って、書いてて自分で「ラノベかよ」って突っ込んでしまった。どんなに普通に見える人にも、びっくりするようなストーリーがあるのかもね。☆☆☆面接があるって言われたけど、履歴書も必要なくてその日に体験入店。際どいラインのドレス借りて、ヘアメイクしてもらって、いきなり接客。同僚も、ほとんどが女子大生のアルバイトで、少し心配してたコワい先輩なんかもいなくて、居心地は悪くなかった。接客しながらひととおりのお作法教わって、一巡り常連のお客さんの席についてその日は終わり。体験入店で、ほんの2,3時間ほとんど何もしなかったのに、お客さんの横に座ってきゃーきゃー言うだけで3万円ももらった。1日目の感想は「な~んだ、楽勝♪」って感じだった。☆☆☆週に3日ほど入るだけで、喫茶店のバイト代1か月分以上になった。学校のレポートのために、もともと減らしていた喫茶店バイトは、そのまま辞めた。就職先はまだ見つからないけど、お金も心配なくなって、なんとか卒業の見込みが立ったころ、ケイゴから「折り入って話がある」と呼び出された。話の内容は、「独立資金が欲しい。お前の店、前借制度があるからそれで工面してくれ」ってことだった。☆☆☆この時の私は、ホントに頭の中がお花畑だった。「愛するケイゴのためなら!!」なんのヒロインのつもりだったのか、全く何も考えずに二つ返事でOKしてた。ケイゴの「ありがとう、愛してる」の言葉が聞けたら、それでよかった。------翌日、同伴で出勤し、vipルームで飲みながら店長に打診。特に驚きもせず、事務的に書類を出してきた。言われるがままに署名した書類を渡すと、店長は事務所から茶封筒を持ってきた。見たことのない厚みの封筒。初めて札束を見た。それも、5つも。その日は店長からそのまま帰るように言われ、ケイゴと一緒に店を出た。店の近くにあるホテルに入り、部屋に入るや否や抱きすくめられた。「オレの会社、手伝ってくれるよな」甘く囁かれ、すっかり馴染んだ手順で融かされていく。◇◇◇翌朝、目が覚めるとケイゴはもう居なかった。夕べ持って帰ってきた茶封筒も、まるごとなかった。もうすぐ独立するんだし、きっと忙しいに違いない。ケイゴの会社で働ければ、親にも顔が立つ。ケイゴが隣にいない心細さも、そう考えれば消えていった。身支度を整え、ホテルを出る。なんとなく、でしか不安を感じられなかったことを、今は心から後悔している。この時、私は自覚していなかった。奨学金400万に、キャバクラから500万。合計で900万もの借金を背負っていたことを。