最初で最後のオヤジとのドライブだったわね。
奈良からあこがれの京都へ。
奈良でも良かったんだけど、当時はとにかく家から出たくて。
引っ越しも、引っ越し屋さんに任せて電車で新居に向かうつもりが、なぜかオヤジが送っていくと。
寮決めるときには、ぷんぷん怒って「勝手に出ていけ!」とか言ってたくせにね。
ちょっと嬉しかったんだけど、別れ際に玉砕したわ。
「勝手に出てったんだから、ひょいひょい帰ってくるんじゃねぇぞ」
今ならね、ちょっとは理解出来るけどさ。
オヤジなりの「がんばれ」だったんだってね。
でもさ。
大人になったつもりでも、19歳なんてまだまだ子どもよ。
一人暮らしのワクワクから、一気に奈落の底に突き落とされた感じしたわよね。
まぁ、私も意地張って「私だって忙しくなるし、そうそう帰れないよ」って言っちゃったけどね。
意地っ張りなところは、よく似てたのかもね。
入学式には母親が来てくれて、離れて三日も経ってないのに懐かしくて泣きそうになったっけ。
それでも、意地張って平気なふりして、新しい生活が楽しみすぎる!ってはしゃいでたなぁ。
母親がどんな顔してたのかも思い出せないや。
京都から奈良なんて、目と鼻の先。
オヤジはうっとおしかったけど、帰ろうと思えばすぐに帰れる距離だったし、
高校から何人も同じ大学に来てたし、同じ関西圏だし、ホームシックもすぐ消えた。
このころは、目の前の学生生活に夢希望いっぱいで、人生で一番幸せだったかもね。
その2年後から、ドラマが始まる。
21歳になる少し前、すっかり大人になったと思ってた、イケてる私がハマった罠。
