イラスト&ショートストーリー製作工場 -90ページ目

「ただ、ここにいます」

ボクらが悲しいとき、気のきいた言葉をかけるわけでもない。


ボクらが辛いとき、何か役に立つことをしてくれるわけでもない。


何もしてくれないけれど、


いつも、ボクらのそばにいてくれます。



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そして、涙を舐めてくれたりします。


ありがとう。

「どっちの勝ち?」




動画は難しいですね

(キミ伝製作担当)

「箱入り娘の意味するところ」

「天井のない家がどんなものなのか、想像がつくかい?」

と、雄介は言った。


「なんだよ、いきなり」雄介の中高を通じての同級生だった礼二は答える。

日曜の午後、7両編成の上り電車には人も少ない。

同じ車両には先頭方向に女子校生、最後尾に老婆がいるだけだった。


「まさか、雄介、東京で浮浪者やってんじゃないだろうな?」

礼二は真顔で聞いてきた。

「なっ訳ないだろう。ちゃんと勤めているし、狭い賃貸アパートだけど、天井くらいはある」

「じゃなんだよ。大ちゃんに先越されて。あっ、そういえばやつの嫁、おまえの幼なじみか」

「ばぁか、そんなんじゃねえ。誤解するな。近所なだけさ」

雄介は白いネクタイを外しながら、流れる景色を見た。


山が冬から春へと緑を戻しつつある。「ただ、」

「ただ?」

礼二の素っ頓狂な声が車内に響き、携帯に夢中だった女子校生が顔を上げた。

だから声のトーンを落として改めて問い正した。「ただ、なんだよ?」

「一時期、天井のない家に一緒に暮らしていたから、わかるんだ」

礼二の不可解な表情に、雄介は「まあ聞け」と言った。


あの頃、おれは朝7時に起こされた。

たとえ起きていても寝ていなければならなかったんだ。

「パパ起きて、時間よ」

たぶん、その言葉が言いたかったんだろう。


起こされると、先ず、リビングのテーブルにつき、

朝食の準備をしている妻の愚痴を聞かなければならない。

たとえば中学3年になる長男の成績が下がる一方だとか、

毎週のゴミ出しのルールを守らないご近所さんがいるといったね。

そこでおれは新聞を読みながら、適切に合図地を打つ。

「そうか、大変だったね」なんてね。いわば、それが夫としての義務なわけだ。


いつも通りの卵焼きをメインとした朝食を終えて、会社に向かう。

玄関でのキスは照れ臭かったけれど、それも慣れればどうってことない。

それが最後の儀式だし、玄関を出ればおれは解放されるからだ。


会社で働いている時間で、だいがい、おれは少年ジャンプを読むことにしていた。

ただ、きっちり午後7時には帰る。飲みの誘いも断る。

現実に一週間口をきいてもらえないのは嫌なものだ。それに模範的な夫だからね。


週末には毎回、旅行の計画を立てなければならない。

一番受けがいいのは、もちろんディズニーランド。

ついでに妻のお友だちも加わって、おれが運転するワンボックスで出発して帰る。


お友だちは4人だったな。

彼女たちは口々に「楽しかった」を連呼するけど、おれにはそうは思えなかった。

なにしろ行ったことがないからね。

でも、合図地は打つよ。

妻の視線が痛いし、模範的な夫だから。


どうよ? そんな風に暮らすって、辛いとは思わないか?

おれにはそんな生活が幸せとは思えない。


その話を聞いた礼二は「天井のない家で暮らしたくはないな」と言った。

「だろう」

「どのくらい、暮らしたんだ?」

「おまえらに出会う小бまでさ」と雄介。


「なるほど、もしその頃のままだとしたら・・・」

礼二は雄介をまじまじと見ると、こう付け加えた。


「そいつは紛れもなく、箱入り娘だ」







(当時、りかちゃんの設定通りではないのは、子供のことなので、あしからず。

実際のパパは家にいないことが多いということです)



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