イラスト&ショートストーリー製作工場 -19ページ目

「従順な競泳者たち」

25メートルでターンすれば

次の25メートルが待っている



そうして255075と泳いでいけば

いつかゴールするというわけだ。



競泳者はけっしてコースを外すこともないし

途中で泳ぐことを止めることもしない。



もしそんなことをしたら、競泳者はたちまち失格になってしまう



未来を望むなら、まず目の前の公式を解くことだ。



ただし正解答は一つ。これがルールだ。






僕には、どこがゴールなのか

今もって、わからない。

「宮沢賢治を語る舗道の草」

今日で五日も雨が降っていません

私はある道路脇のアスファルトのひび割れにあるものです


乾ききった風が私たちをいいように、もて遊びます

それが吹く風ならまだしも、車の排気ガスでもあろうものなら

気も遠くならんばかりなのです


見てのとおり、黒ずんでいるのは、

排気ガスや巻き上げる埃のせいです

雨でも降れば、それも一様は洗い流せるというものですが

このままでいると、それもこびり付いてしまう。


それにもまして、喉の乾きです

私はこのアスファルトの裂け目から

流れ込む水だけを頼りにしているわけで

アスファルトの焼けたにおい

ムッとした照り返しには、

雨なしに一週間も持つまいと思うのです


そういえば、こうした場所でながらえた雑草は少ない

車に踏み潰されたり、枯れてしまったりと

私もゆくゆく、この身を案じているのです


毎日を、オロオロ、ビクビクして

なぜ、このような場所に芽を出したのかとお考えでしょうが

そもそも、この下には土があり




裂け目の上には空があったわけですから。




「ボクは鬼太郎にはなれない」

「だとしたら、それがどうだっていうんだい」

とネズミ男は言った。


無精髭をはやした顎をジョリジョリと指先で擦り、

大きなあくびのついでの返事だった。


ネズミ男というと、ゲゲゲの鬼太郎に登場するたいそう貧相な、

嫌味な口調の男(実際はお化け)を想像するだろうが、

目の前の男は長いひげを伸ばしているわけでもないし、

わりと普通な30代後半の妻帯者だ。僕にはそれがとても残念だった。


鬼太郎はストーリーのなかで何度となく、

ねずみ男に騙されているが、結局、最終的には許してしまう。


だからテレビを見ているひとは、

「鬼太郎は、なんていいひとなんだろう」と当然思う。

でも僕の相手をしているネズミ男は、

とても善良そうな、普通のサラリーマンだから質が悪い。


僕がお金を貸していて、給料日間近で「返してくれよ」と言うと

「まいったな~」と言い、

「妻に内緒で娘にこずかいあげちゃってね」と言葉を濁す。


それを聞いていた同僚たちは、

「独身なんでしょ。一食ぐらい抜いても死にはしないんだから」

と助け舟を出す始末。


「給料も安いし、待ってあげなよ」

と課長からも諭すように言われ、

「それなら課長、あなたが貸すか、給料上げてやんなよ」

という言葉をのみ込みつつ、カップらーめんを買った。


貸した僕も悪いが、先輩なのだから仕方がない。

まして、ネズミ男には、

下は小学生から上は高校生まで6人の子供がいるのだ。

やれやれ。


せめてネズミ男のほっぺ左右に、長いヒゲが伸びていたなら

世間の見る目も、ちょっとは変わたんだろうな…

そう思った。


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