イラスト&ショートストーリー製作工場 -15ページ目

「雨に濡れることもあるさ」

雨の季節ですね。

路地の端に、あじさいが咲き始めました。



雨が降ると、ボクはBJトーマスの歌
「雨に濡れても」を思い出します。

“雨のせいで、ボクは優鬱になったりしない
恨んだところで雨が止むわけでもないし・・・“

雨の向こうに、ちょっぴり人生感が見えたりして
少し元気になります。

「こんな雨の日は」

「雨が降ってしまった」
と、だれかが言った。




もう一人のだれかが
「雨が降ってくれた」
と言った。


「チョコなボク。アイスなママと一匹の犬」

(チョコ食べていい?)

と、雌のトイプのナナが聞いてきた。

居間で寝転がっていた時である。


「ダメ~」とすぐに答え

テーブルの上のチョコの蓋を閉める。

U・ェ・U

ナナのこうした素朴な視線には、いつも困らせられる。

(なぜなの?)と理由を聞いてくるからだ。

「身体に良くないから」

とナナに背中を向けてテレビを見る。


しばらくすると、フンッと鼻を鳴らして
(ちょうだい)と催促してきた。

どうやら納得できないらしい。

彼女は徹底した動物平等論者なのだ。

「ダメ」

フン(ちょうだい)


「ダ~メ」

フン(ちょうだい)

「ダメったら、ダメなの」
の返事で、(ワン)とナナが吠えた。


だからボクは「う~っ」と、

のたうち回る振りをしながら、
苦しみの声をあげてみせた。

「食べたら、こうなるのだぞ」

それを見たナナは首を傾げている。

どうにも理解できないらしい。ばかな犬だ。

「だから、死んじゃうの。わん」


U・ェ・U


「三途の川を渡って、あの世に行くんだよ。わんわん」
声を大にしてそう言うと、ナナは尻尾を左右に振った。

「行く」の声で、どうやら散歩をイメージしたようだ。


「ち、が、う。散歩はすんだでしょ」

ボクは起き上がり、ナナの前にきちっと正座した。

「ワンちゃんはね。チョコを食べちゃダメなの。わかる?」

ナナの目をしっかり見据え、飼い主としてビシッと言い聞かせた。


目の前で、ナナがお手をする。
言い聞かせた際に、手を前に出したからだ。


「むむむ」

これでは完全に、ナナのいつものペースだ。

最終的にはターゲットを射止める悪賢さ。

でもチョコは犬の食べ物としてNGなんだ。

可哀そうだが、ここは最後の手段。

ボクは残りのチョコをすべて口の中に放り込んだ。


チョコは少しずつ食べて美味しいものですから

けっして真似しないで下さい。


「はっはっは」
空箱を見せる。

ナナは箱の匂いをひとしきり嗅ぐと(フン)と言い、

ソファーに横になった。

やれやれ。


そこに、ママが買い物から帰ってきた。

ママは早々に買い物袋をキッチンに置き

リビングに座ると、暑い暑いと言いながら

カップアイスクリームを開けた。


ナナがムクっと起き上がり、ママのところにすっと走り寄る。

鼻も鳴らすことなく、静かにママの前にお座りした。


「いい子ね。ナナちゃん」とママが言い
ナナはその言葉と同時に、スルっとママの膝の上に乗った。

ママを見上げるようにして、哀願の目を向けている。

吠えない。


「お利口さんだから、ちょっとだけあげるね」
ママはスプーンに付いたアイスを与えた。


そう。アイスは大丈夫なんだよね~

って、そこをわかっているのか! チミは。

するとボクを見たママが「食べる?」と聞いてきたので
「別に」と答えた。

「あら、パパったらイジケちゃって」

とママが笑う。


はいはい。そうです、そうですとも。



こうして男と女たちの溝は深まっていくのだった。