「銀のスパナをめぐる考察」
(2013-04-21 「賢いスパナの使い方」の続き)
あれから、記事をアップして数週間後に、
新品のスパナを丸の内辺りでなくしてしまった
という建設工事屋さんから連絡を受けた。
「ひょっとして、それは9ミリで、日比谷通り沿いではないですか?」
という問い合わせだった。
本人、なくしたことに気づいて、日比谷の交番に行ったのだが、
届けられていないらしかった。
僕が見かけたのは永代通りの工事中のビルがひしめくあたりだから、
ちょっと場所が違うことを丁寧に説明した。
建設屋さんは電話の向こう側で軽くため息をつくと、
「とりあえず仕事には支障がないのだが・・・」と言った。
僕はその話口に興味を持って、最後に「だが」を付けた理由を尋ねた。
「だが」の後には、たいがい遺恨が付きまとうものだからだ。
建設屋さんが言うには、直ぐにホームセンターで
買い揃える必要もないのだが、
の「だが」らしい。
毎日機材や建物を組み立てていると、一年に数回は、
そうしたサイズのボルトに出くわすことがあるという。
もちろんインチ仕様の外国のメーカー品もそうで、
そうなったらホトホト困ってしまうらしい。
「もちろんモンキーは持っていらっしゃいますよね?」
と僕は聞いた。
建設屋さんならスパナのほかにモンキーという便利な工具を持っている。
これなら一様のボルトの大きさならつまみを調整して、
そのサイズに合わせることができるのだ。
建物屋さんは「まぁね」と言って、首を振った。たぶん。
建物屋さんのような、機械工学、技術保全系の職業についている人は、
SとかMとか関係なしにきっちり締め付けたり、
とにかく、きっちり仕上げたいタイプの人間が多い。
希にボルトの頭をなめてしまうようなモンキーは使いたくない。
今回の建設屋さんも、そのような人だった。
なめるというのは、ボルトを弛めるか締めるかの過程で、
あやまってボルトの角い山を削り丸くしてしまうことだ。
最悪は、手元がくるいボルトとモンキーのくわえが外れてしまい、
自分の手を機械にぶつけるといった事態になりかねない。
モンキーには往々にしてそうしたリスクがある。
そうなったら、なぜ、サイズ9のスパナを用意しなかったのか、
大いに悔やむことになる。だから「だが」といった言葉にもなる。
建設屋さんも丸の内界隈を下を向いて真剣に探しているわけだ。
「早く見つかるといいですね」と僕は言った。
銀のスパナは、銀のスプーンよりは見つかる可能性が高い。
世間的には銀のスパナの知名度は低いし、
路上に落ちていてもそれを持ち帰って、
ゴロゴロしている旦那の頭をこずくには軽すぎる。
つまり9ミリのボルトしか、使いようはないのだから・・・
「賢いスパナの使い方」
金ピカの、いや銀ピカのスパナが道に落ちていたら
あなたはどうしますか?
何もせずに素通りしますか、それとも拾いますか?
何? スパナを知らない?
それじゃ、今後のために覚えておいてください。
あなたがかりにOLさんか何かで、
昼食のために丸の内あたりを歩いていたなら、
歩道に落ちているスパナをまずは拾わないと、さすがに僕も思う。
拾っても邪魔になるだけだし、周辺のビル工事の、
その関係者の落とし物と考えて、
歩道の端に置き直すことはあっても、交番に届ける
もしくは、オフィスに持ち帰って、
上司の椅子のボルトを弛めようとは考えない。
(そんな風に使ったら、おもしろいと思うけれど)
しかし、これが大工さんとか施工関係者、
製造業に関わる人だったとしたら、
ピカピカの銀のスパナを見過ごすことはないだろうと思う。
なぜなら、そのスパナを落とした人物が、
機械の修復に丸の内を訪れていたとして、
修理に取り掛かって、しばらくして「あれ?」となる。
スパナにはそれぞれ何種類かサイズがあって、
8本組みくらいのセットになっている。
基本的には両端に、ボルトをくわえる部分が付いていて、
8本あれば、16種類のボルトを弛めたり、締め付けたりできる。
それはその数だけボルトがあるからなんだけれど、
機械に取り付けられたボルトに合うスパナがなかったりすると、
もちろん仕事にならない。
そうした人たちは、みんなそのことを知っているので、
一本一本、大切にスパナを保管している。
それが銀ピカの新しいスパナだったなら、
きっと買ったばかりだろうから、
落とした本人の落胆は大きい。
セット買いしたのに、1本不足している気持は、
ドライブスルー買いで、フライドポテトがシナシナだった時の
心境に似ている。ほんと、がっかりだ。
スパナが世間的にそうした方々にしか縁がないのは、
はなはだ不幸なことだと思う。
生涯触ることのない人もいるだろうが、
ボルトを締め上げたり、弛めたりするのは性格上のSやM関係なしに
わりと、すっきりする。
おもいっきり振り下ろせば車のフロントガラスやマンションの
サッシも割れて、災害時に役立つ。
場合によっては
日曜日に起きようとしない旦那の頭を軽くこずくのにもいい。
さて、ここまで説明して、あなた。
スパナというものを少しは理解できただろうか?
そして歩道に落ちているスパナを見つけたら・・・
やはり拾わないんでしょうね。僕もそうしなかったから。
「飲み過ぎた朝に思うこと」
日本人たるもの、どうやら何をするにもまず酒が必要になるらしい。
そういうボクも酒が入ると、いつもよりおしゃべりになったりするから
酒もまんざら悪くない。
さて、うちの愛犬ナナはベッドで寝る。
ドッグトレーナーに叱られそうなことなのだが
ボクがとことん甘いので、そうなった。
今朝もそうだったけれど、明らかに、凄いと思うことがある。
昨夜かなり飲んで家に帰り、即寝したボク。
パジャマもなしで、下着のままで寝る。
この夏場、寝苦しいこともあり掛け布団を蹴散らしている。
重い身体を起こすと、脇の下あたりにナナが丸くなって寝ているので
ビックリする。
酒が入るとかなりなイビキをかき、寝返りを打つはずだ。
感心してナナを見ていると、大きな欠伸をしながら
「これから、会社?」という顔をした。

いずれにしても動物的勘とはすばらしいものだ。
思わず「苦労をお掛けします」と言わずにはいられなかった。

