第213回国会で提出された請願・陳情・意見書について
請願は、国民の要望を国会議員の紹介によりなされる。衆議院で採択されると内閣に送付されるものである。陳情は、国会議員の紹介なく国民が直接国会に提出するもので参考意見となる。意見書は、地方自治法第99条に基づくもので、都道府県議会や市町村議会、東京都の特別区の区議会において決議し、国会に送られるがこれも参考意見である。
したがって、陳情と意見書はあくまで今後の国会審議の際に議員が参考にするだけであって拘束力はない。このうち、請願を除く陳情と意見書についてここに上げる。
【内閣委員会】
●請願5種137件すべてを保留。
●陳情は「8月15日の終戦記念日を平和の日と改め、国民の祝日とするように求めることに関する陳情書」他8件
●意見書は「悪質なホストクラブ等の被害防止強化及び徹底を求める意見書」他33件
三重県議会 悪質なホストクラブ等の被害防止対策の強化及び ...
【総務委員会】
●請願なし
●陳情は12件
●意見書は、「緊急浚渫事業債の延長を求める意見書」他130件
【法務委員会】
●請願は209件。
このうち575番 「裁判所の人的・物的充実に関する請願」
受理件数41件、署名者数12,998名については全会一致で採択の上内閣送付を決定。他の請願はすべて審査未了。
採択された請願要旨は以下の通り。
国民の権利意識の高まりや企業の経済活動の領域が拡大していく中で、裁判所には多数の紛争が持ち込まれ、その内容も複雑・困難なものになっている。これらの紛争を公正・迅速に解決し、国民の権利が十分に保障され、自由で豊かな社会を実現していくためには、利用しやすく信頼される裁判所の存在が不可欠である。また、裁判員裁判を始め、労働審判、成年後見、被害者保護などの新たな制度が数多くつくられたほか、近年は裁判手続のIT化や子供の福祉のための裁判所機能の充実が求められるなど、裁判所が果たすべき役割はこれまでになく広がっている。こうした手続を定着させ安定的に運用していくことで、国民の期待に応える裁判所としていくことが必要である。
ついては、国民がより利用しやすい司法の実現のために裁判所予算を増額し、次記事項を措置されたい。
一 裁判所職員の人的体制を整備すること。
二 裁判所施設を充実させること。
●陳情は、「国籍を問わずして調停委員の任命を求めることに関する陳情書」他20件。
●意見書は、「悪質危険運転の撲滅を求める意見書」他138件。
【外務委員会】
●請願は7種79件すべてを保留。
●陳情書は13件
●地方自治法第99条に基づく意見書は160件。
【財務金融委員会】
●請願は14種200件すべてを保留。
●地方自治法第99条に基づく意見書は16件。
【文部科学委員会】
●請願は17種375件すべてを保留。
●陳情書は「国立大学法人法改正に抗議することに関する陳情書」他11件。
●地方自治法第99条に基づく意見書は「医療的ケア児の通学支援を求める意見書」他214件。医療的ケア児の通学支援の実施を求める意見書
福島県議会からの教育に関する意見書は、
須賀川市議会からの教育に関する意見書は、
【厚生労働委員会】
●請願は37種1266件すべてを採決することとなり、
744「国民を腎疾患から守る総合対策の早期確立に関する請願」140件
948「国立病院の機能強化に関する請願」87件
1712「難病・長期慢性疾病・小児慢性特定疾病対策の総合的な推進に関する請願」92件
1905「現下の雇用失業情勢を踏まえた労働行政体制の整備を目指すことに関する請願」30件
2923「てんかんのある人とその家族の生活を支える啓発に関する請願」18件
2929「てんかんのある人とその家族の生活を支える労働に関する請願」78件
3177「てんかんのある人とその家族の生活を支える医療、福祉に関する請願」4件
について全会一致で採択の上内閣送付を決定。他の請願はすべて審査未了。
●陳情は、「医療・介護分野において物価高騰・賃金上昇及び技術革新に対応するための適切な財源を確保するよう求めることに関する陳述書」他12件。
以下は日本医師会の第18回国民医療推進協議会総会での決議。
●意見書は、「アスベスト被害者の救済とアスベスト対策の拡充を求める意見書」他456件。
について報告された。
以下は太宰府市議会からの意見書。
意見書第1号 - 建設アスベスト被害者の救済とアスベスト対策 ...
建設アスベスト給付金法附則第二条に基づいて、アスベスト建材製造木々用による補填を措置し、被害者の救済を図ることなどを求めている。
福島県議会からの労働政策の意見書は、
福島県最低賃金の引上げと早期発効を求める意見書 [PDFファイル/86KB]
がある。
当県最低賃金は、可能な限り速やかに1,000円に到達させることを第一に掲げている。
郡山市議会の意見書は
であり、この市議会請願から「福島県最低賃金の引き上げと早期発効を求める意見書」が決議されている。
福島県最低賃金は、可能な限り速やかに1000円に到達させることなどが請願されている。
須賀川市議会からの意見書には、
福島県最低賃金の引上げと早期発効を求める意見書の提出について
がある。内容は福島県議会・郡山市議会と同じである。
【農林水産委員会】
●請願は3種32件すべて保留。
●陳情書は、「水田活用の直接支払交付金の見直しの中止」等3件。
国民の主食である米の安定供給のほか、食料自給率・自給力の向上、多面的機能の維持強化等を図るために飼料用米、麦、大豆など、戦略作物の本作化を進めるとともに、地域で作成する水田収益力強化ビジョンに基づく支援としてこれまで水田活用の直接支払交付金という制度を採用してきた。今年度にも予算はついている。
水田活用の直接支払交付金等(令和6年度予算概算決定額)(PDF : 488KB)
しかし、これを見直すということになり、農家からはその中止を求める声が相次いでいる。
福島県石川郡玉川村からの
があるが、これは玉川村に限らず全国的な制度。
農業経営の安定に資するため措置されている経営所得安定対策のうち、水田活用の直接支払交付金の交付を受けている対象農地については、令和8年までに一度も水張りが行われていない場合は、令和9年から当該交付金の交付対象外とされる方針が国から示されている。
●地方自治法第99条に基づく意見書は「家族農業を守り食料自給率の向上を目指し、食料・農業政策への転換を求める意見書」他113件。
この主な意見書では、
一、家族農業を基調とする農業政策へ転換し、食料自給率の向上を目指すこと。
二、農業者戸別所得補償制度の復活など、家族農業を支える政策を実現すること。
が要望されている。
福島県議会より、
の意見書が出ている。いずれも西山尚利福島県議会議長名による。
【経済産業委員会】
●請願は4種32件すべて保留。
●陳情は5件。
●地方自治法第99条に基づく意見書は17件。
【国土交通委員会】
●請願は6種481件すべて保留。
●陳情は「持続可能な公共交通実現に向けた地方鉄道に係わる財政措置等に関する陳情」他10件。
●地方自治法第99条に基づく意見書は「安全・安心を無視した無秩序なライドシェアの導入に反対し、地域公共交通を守る施策の推進を求める意見書」他49件。
岩手県議会では、以下の意見書を決議している。
安全・安心を無視した無秩序なライドシェアの導入に反対し ...
宮城県議会からは、
「安全・安心を無視した無秩序なライドシェアの導入に反対し地域公共交通を守る施策の推進を求めることについて」で一般社団法人宮城県タクシー協会会長からも請願が出ており、県議会で採択されている。
【環境委員会】
●請願は2種20件すべて保留。
●陳情は4件。
●地方自治法第99条に基づく意見書は43件。
【安全保障委員会】
●請願は8種121件すべて保留。
●陳情は3件
●地方自治法第99条に基づく意見書は7件。
【災害対策特別委員会】
●256 被災者生活再建支援制度の抜本的拡充に関する請願
が17件、30,849名の署名があるが保留。
能登半島地震の復興最中であるにも関わらず採択をせず。
【政治改革特別委員会】
●請願は3種77件すべて保留。
3種のうち2種は政党助成金をやめさせること、もう1種は腐敗政治を一掃しろとのこと。これら全て保留にして何らの応答もしないわけだから、政治改革についてのやる気のなさがうかがわれる。
●陳情書は、「参議院議員選挙における合区の速やかな解消に関する陳情書」他1件。
●地方自治法第99条に基づく自治体議会からの意見書は、「企業団体献金の全面禁止に向け政治資金規正法の改正を求める意見書」他93件。
【東日本大震災復興特別委員会】
●陳情は、「東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故に関する陳情書」の1件。
●地方自治法第99条に基づく意見書は、「福島の復興再生について中長期的な対応を求める意見書」他1件。
要望内容は、
1 避難地域への移住等の促進や福島国際研究教育機構(F-REI)の設立などの新たな取組に係る経費が生じていることを踏まえ、必要な事業執行に支障が生じないよう、第2期復興・創生期間における財源フレームの見直しを行うこと。
2 第2期復興・創生期間後においても、当県特有の深刻化・複雑化する課題等に対して、切れ目なく安心感をもって中長期的に復興を進めることができるよう、十分な財源と枠組み、さらには復興を支える制度を確実に構築すること。
【地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会】
●請願は6種266件すべて保留。
●陳情は「物価高騰に対する継続した国の地方への財政支援に関する陳情書」他5件。
●地方自治法第99条に基づく意見書は、「改正マイナンバー法を見直し健康保険証の継続を求める意見書」他151件。
【憲法審査会】
●請願は3種69件すべて保留。
●陳情は5件。
●地方自治法第99条の規定に基づく意見書は11件。
はなはだ疑問なのは、今回にはないが、これまでに自民党から共産党まですべての議員が請願で紹介議員になっているにも関わらず、採択を保留して審査未了になった案件がある。全員が紹介議員なのだから、採択すれば全員が賛成して採択されると思うのだが、それをしない。
これは国会の慣行で、「請願は、基本的にはよっぽど重要なことでない限りは採択せずに保留してしまうのが望ましい」というのがあるのではないか。
今回の国会で採択された請願は法務で1件、厚生労働で7件である。あまりにも少ない。国民主権がなされていなさすぎではないか。
また、陳情や意見書については報告のみというのもどうかと思う。
以下は、福島県議会からの意見書。
【福島県議会からの意見書】
令和6年2月定例会
- 地方財政の充実・強化を求める意見書 [PDFファイル/90KB]
- 被災者生活再建支援制度の拡充を求める意見書 [PDFファイル/62KB]
- 物価上昇に負けない中小企業の賃上げの実現を求める意見書 [PDFファイル/73KB]
- 教育現場におけるALPS処理水の理解醸成に向けた取組の更なる強化を求める意見書 [PDFファイル/77KB]
- 福島県最低賃金の引上げと早期発効を求める意見書 [PDFファイル/86KB]
- 教育予算の増額と負担軽減措置等の拡充を求める意見書 [PDFファイル/88KB]
- 食料安全保障の強化を求める意見書 [PDFファイル/98KB]
- 飼料・肥料等に係る価格高騰対策を求める意見書 [PDFファイル/109KB]
令和5年12月定例会
- 私学助成の充実強化等を求める意見書 [PDFファイル/107KB]
- 福島の復興・再生について中長期的な対応を求める意見書 [PDFファイル/70KB]
- 北朝鮮による拉致問題の早期完全解決を求める意見書 [PDFファイル/90KB]
- パレスチナ問題における人道支援と停戦に向けた主導的な働き掛けを求める意見書 [PDFファイル/72KB]
- 食品ロス削減に関する国民運動のさらなる推進を求める意見書 [PDFファイル/88KB]
- 国民医療を守り国民の健康を守る体制のための持続的な財源確保を求める意見書 [PDFファイル/60KB]
- 認知症との共生社会の実現を求める意見書 [PDFファイル/98KB]
- 医療・介護・障害福祉分野における処遇改善等を求める意見書 [PDFファイル/81KB]
令和5年9月定例会
- ALPS処理水の海洋放出開始に伴う安全性の確保と風評対策の徹底を求める意見書 [PDFファイル/82KB]
- ALPS処理水の海洋放出開始に伴う科学的根拠に基づかない一方的な主張や虚偽の情報に毅然とした態度で臨むことを求める意見書 [PDFファイル/81KB]
- 安全第一のALPS処理水放出と更なる理解促進、新たな風評を生じさせないための対策を求める意見書 [PDFファイル/89KB]
- マイナンバー制度に対する信頼の確保と国民理解の促進を求める意見書 [PDFファイル/70KB]
- 脱炭素と自然再興に貢献する循環型経済の推進を求める意見書 [PDFファイル/104KB]
- ブラッドパッチ療法(硬膜外自家血注入療法)に対する適正な診療上の評価等を求める意見書 [PDFファイル/71KB]
- 下水サーベイランス事業の実施を求める意見書 [PDFファイル/65KB]
- 新たに策定された国土強靭化基本計画の着実な取組を求める意見書 [PDFファイル/79KB]