こんにちは。大坂佳巨です。
2026年10月5日、簗和生(やな・かずお)農林水産大臣は、今年2月の衆院選で自分を支援しなかった首長がいる自治体の道路予算を「大幅にカットした」と話していたことを撤回し、謝罪しました。その翌日の6日未明、ひろゆきさんが、福島県議の渡辺康平さんの2024年の投稿を取り上げて、「自民党に投票しないと道路予算は付かないと言っている自民党議員が、福島県にもいる」と書きました。

この二つは、別の出来事です。ただ、見えている構造は同じように感じます。国の予算を、その地域に本当に必要かどうかではなく、「自民党に投票したか、支援したか」の対価として語っているからです。これは、たまたま口を滑らせた話なのでしょうか。それとも、自民党政治のいつもの言い方なのでしょうか。福島県内の投稿を読み返すと、後者に見えます。
大臣は「カットした」と話し、あとから撤回しました
日本経済新聞などによると、簗さんは今年5月、地元の栃木県の自民党支部の会合で、衆院栃木3区の那須烏山市と那珂川町の名前を挙げ、令和8年度の道路予算を大幅にカットしたと話したそうです。どちらの自治体の首長も、衆院選で簗さんを支援しなかったとされています。
日本テレビが報じた音声では、理由は二つだとされています。一つは、首長が「自民党の国会議員はいらない」という行動をとったこと。もう一つは票数です。多くの市民や町民がそう判断したのなら、「自民党が必要だ」「自民党の議員に頼って、インフラの予算が必要だ」というところに多く回すのが当たり前だ、と語っています。
これは、予算の説明ではありません。投票結果への制裁と、支援への報酬を宣言しているように聞こえます。道路の予算をどこに付けるかは、本来なら交通量、老朽化、災害のリスクなどで決まるはずです。それが、自民党支部への忠誠で決まっているように語られています。
簗さんは10月2日の時点では、事実関係は認めつつ、撤回も謝罪もしていませんでした。5日になって、「公の立場にある者として、発言にはいっそう慎重であるべきだった。不徳の致すところで、深く反省している」と撤回しました。辞任は否定しています。問題なのは発言の中身ではなく、「言ってしまったこと」だ、という受け止め方にも聞こえます。
毎日新聞は同じ日、簗さんを応援した首長のいる自治体では、道路予算が増えていたと報じています。発言が撤回されても、配分の偏りそのものが消えるわけではありません。

渡辺康平福島県議は、2年前に同じ論理を有権者へ向けていました
渡辺康平さんは、自民党の福島県議です。選挙区は須賀川市、鏡石町、天栄村です。問題になっている投稿は、2024年10月24日、衆院選の期間中に出されています。福島2区の有権者に向けたもので、要旨は次のような内容です。

須賀川市、鏡石町、天栄村は、20年以上、野党の国会議員を小選挙区で選んできた。その結果、国とつながる政治のパイプがなく、行政のルートだけで予算を要望しても、政策は遅れた。その象徴が道路だ。国道の4車線化は進まず、上杉謙太郎さんが比例で当選してから、鏡石町の区間が動いた。郡山のコスモス通りは完成しているのに、須賀川の森宿工区は進まないと言われている。市道の関下一里担線は、根本匠さんが国土交通省に働きかけて予算が付いた。公共建築や農林水産でも、国から予算がつかない例は多い。本当に立憲民主党や野党の議員を選ぶのか。国とつながるパイプがない政治家でよいのか。故郷の発展を考えて投票してほしい。
これは、根本拓さんに投票すれば予算がつき、野党の玄葉光一郎さんに投票すると予算がつかない、ということをにおわせています。このときの選挙結果は、玄葉さんの勝利でした。

「投票しなければ付けない」と、一字一句そのとおりに書いたわけではありません。ただ、有権者へのメッセージとしては、ひろゆきさんの要約とほとんど違わないように読めます。野党を選べば道路は遅れる。自民党の国会議員が動けば予算が付く。だから自民党を選べ。選挙期間中の投稿には、「拡散希望」のタグまで付いています。
2023年11月には、補正予算が成立した直後に、根本拓衆院議員のお父さんである根本匠さんから、選挙区内の予算確保の連絡があった、とも報告しています。須賀川市道の雲水峯大橋の歩道整備に2億7,000万円が付き、その分を森宿工区へ回せるようになった。補正がなければ開通時期は未定だった。これは自民党の連携プレーだ、という内容です。陳情の成果を有権者に見せる、よくある書き方ではあります。同時に、どの党の誰が動いたかで、市の道路の開通時期が左右される、という自画像にもなっています。

「パイプ」という言葉で、制度を私物化していませんか
地方の道路に国のお金が入ること自体は、異常ではありません。補助の制度があり、自治体が計画を作り、国が採択します。問題は、その採択を「自民党のパイプがあるかないか」に回収してしまう語り方です。
行政のルートで要望することは、本来、正規のルートです。それを「パイプがないから遅れた」と切り捨てるとき、政治家は、制度ではなく党の仲介のほうを正しいものとして示していることになります。予算は国民の税金であり、自民党の財布ではありません。それなのに、支援した町には多く回し、支援しなかった町はカットするのが「当たり前」と言い、野党を選んだ地域の遅れを選挙の材料にしています。
これは、利益誘導の古典的な型です。個別に現金を渡していなくても、投票のしかたと公共事業を交換条件として示す時点で、有権者の選択は、政策の中身ではなく「報復されるかもしれない」という恐れでゆがみます。公職選挙法上の買収に当たるかどうかは、個別の利益の提供と、その対価性で判断される別の問題です。違法でなければ許される、という話ではありません。法律の範囲内の脅しであっても、自治は傷みます。
同じような発言は、今回が初めてでもありません。2022年には、山際大志郎さんが「野党の人から来る話は、われわれ政府は何一つ聞かない」と語った映像が、今回の流れで再び出回っています。党が違えば政府は聞かない。党が同じなら予算が付く。これを、何年も、何人もが、地元で言ってきました。

福島県に必要なのは、党への忠誠ではありません
須賀川の森宿工区が、郡山のコスモス通りより遅れているなら、問うべきはその中身です。交通量、通学路、事業計画、用地、市町村の財政、県の優先順位。野党の議員がいた20年で何が遅れ、与党の議員が動いたあとで何が進んだのかは、一つずつ検証できます。検証せずに「パイプがなかったからだ」とまとめるのは、原因の説明ではなく、投票の誘導です。
福島県は、復興、風評、除染土、農業、中小企業、人口減と、党派の前にある課題を抱えています。その予算まで「自民党を選んだ町から付ける」という原理で配られるなら、復興は県民の権利ではなく、党支部への加入サービスになってしまいます。渡辺さん自身、県議会では風評対策や予算の使い道を厳しく問うてこられました。同じ基準を、自分の陣営の道路予算にも向けるべきだと思います。
ひろゆきさんの投稿は、新しい事実を足していません。2年前の文章を、今の大臣の音声と並べただけです。並べたら、同じ文でした。撤回とお詫びに済むのは、発言が漏れた側の都合です。有権者の側から見れば、漏れていなければ続き、漏れたので一言取り下げた、ということにしか見えません。
道路は、自民党に投票した町への報酬ではありません。

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