5月8日の衆議院財務金融委員会。
ところで全然関係ないが、放送大学の放送授業科目で「財政と現代の経済社会」というのが、諸富徹客員教授(放送大学大学院教授)で講義されているのだが、そこに衆議院では「財務金融委員会」で財政や金融が審議されるとあり、それは正しいのだが、参議院にも「財務金融委員会」があると説明している。参議院の場合は正しくは「財政金融委員会」である。まあどうでもいい。
この8日の水曜日の審議は、
●財政及び金融に関する件
の一般質疑で、最後に
●事業性融資の推進等に関する法律案(213国会閣57)
の趣旨説明が鈴木俊一金融担当大臣からなされ、この法案の審査につき、
●参考人出頭要求に関する件
で、参考人を呼ぶことに決まる。
そこで、一般質疑の内容だが、ここ最近の円安により政府が為替介入をしたとの見方が強まっており、何人かの議員がそのことについて聞くのだが、政府は一切答えないこととしているようだ。
余計な発言をすると市場の動向が変わるからで、それは無理もないことであるし、どうせ決算のときに外国為替資金特別会計(外為特会)の資金によって行われるので公表されるし、毎月末、四半期末にわかることなのだからそっとしておいてやればいい。
当座預金の動きを見れば、4月29日に二回で5.5兆円の為替介入、5月1日は一回で3兆円程度のドル売り介入しているだろうと報道されている。一週間の為替介入としては過去最大と思われる。介入前158円が、153円へのやや円高になっているので少しは効果があったと思われるが、本日5月13日現在では155.9円と押し戻されている。
だが、それよりも立憲民主党の末松義規(立憲民主党)委員が大変大事なことを指摘していた。やはり円安対策であることには代わりないのだが、地域通貨の関係についての質問である。その前に新札のことについて聞いている。以下、答弁と統合して述べる。
新しい通貨の発行目的は、偽造防止である。前回の新札発行から20年を経ているので使いやすい銀行券として意義がある。日本の通貨製造技術は世界一であるとの話であるが、これまでの偽造紙幣の被害はどうかとの質問に対して、令和5年では1万円・5千円・千円札の紙幣681枚、前年は948枚であるとのこと。
新紙幣発行の総費用は、製造単価の内訳は偽造防止の観点から非公表としているが、今回の新券発行の令和6年度の予算額は621億円である。この発行時期は7月3日からであり、旧通貨には有効期限がなく、そのまま使える上、新通貨と旧通貨は対価である。1万円・5千円・千円札の新札の令和6年度においての新札の発行枚数は29.5億枚である。
現在、直近の流通枚数は令和6年3月末で約180億枚、金額ベースだと120.9兆円となっている。
20年前の総額は71.4兆円であるが、現代はキャッシュレスの時代になっているのに、なぜ二倍弱にも増えているのか。
日本銀行の答弁によれば、この20年間でグローバル化により経済圏の規模が拡大したこと、低金利下によってタンス預金が増えたことが背景にある。銀行の残高は前年比で減少しているのは、キャッシュレス化によるものだと見ている。
コロナ禍によって予防的に積み増されていた現金の取り崩し、現金取り扱いコストを意識した金融機関の保有高による圧縮の動きなどがあるだろう。
・・・・という日銀の答弁に対して末松委員は、20年前から比べれば中国のように我が国の経済が一気に増えたわけではない。であるのに現金のニーズが増え、キャッシュレスが広まっている。したがって経済圏の拡大というのは理由にならないのではないかとの疑問である。
日銀理事の答弁によれば、経済圏はそれほど大きくは拡大していないが、一定の規模は拡大しており、現金の使用量は増えており、低金利環境によって銀行預金に伴う機会費用が少なかったことによるタンス預金の増加と言っている。末松委員は、納得いっていないようで、もっと研究すべきとした。
次に、地域通貨は合法かという質問があった。
紙幣類似証券取締法(明治39年法律第51号)という、紙幣類似の作用・機能を有する物の発行等を取り締まることを目的とする日本の法律があるが、どうなのかということについて、電子マネーの決済手段があるがどう考えるかということだった。
財務省理財局長は、類似証券によって通貨の流通が排除され、秩序の混乱が生じる事態を防ぐため、財務大臣はその発行及び流通を禁止することができることになっているが、地域通貨の流通によって日本銀行券の流通が排除されるなど、通貨秩序の混乱が生じるおそれがないのであれば、特段の問題はないとした。
末松委員は、江戸時代には藩札というものもあったのだから、地域通貨を認めていくことは大事だと述べた。ビットコインや電子マネーは、資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)で未使用残高の二分の一を供託すれば認められるということになっている。また銀行の保証や信託などをする方法もある。
私は地域通貨を促進する立場から、今から24年ほど前、自由連合の総務会で提案したことがあるのだが、それは貨幣法があって不可能だなどと古参の元自民党代議士秘書に言われて却下されたものである。
じゃあデパートの券、テレフォンカード、オレンジカード、居酒屋のビール無料券はなぜあるんだと反論した覚えがある。
その後、千葉県に住んで実際に米を担保とした地域通貨を発行して、リサイクルショップや居酒屋で流通させた。
引き続き、これに取り組んでいきたい。しかも今度は紙の券ではなく電子マネーで減価する通貨を使って、世の中を変えていこうと思う。
次に、この5月8日の衆議院財務金融委員会の最期には、鈴木俊一金融担当大臣より、新法として
●事業性融資の推進等に関する法律案(213国会閣57)
の趣旨説明で締めくくられた。法案の質疑は翌々日の5月10日に行われた。
法案は、
事業者が、不動産担保や経営者保証等によらず、事業の実態や将来性に着目した融資を受けやすくなるよう、事業性融資の推進に関し、「基本理念」、「国の責務」、「事業性融資推進本部」、「企業価値担保権」、「認定事業性融資推進支援機関」等について定めるものである。
●参考人出頭要求に関する件
14日の火曜日にこの法案のための参考人を呼び質疑することとなった。