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DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #20

(おいおい、爆発を確認て報告は何だったんだよ。死んでねぇじゃねぇか)

カミロは毒付きながら、目配せで部下へ殺せと命じる。

それに伴い、スキンヘッド男が腰から拳銃を取り出しデブの頭に突きつけた。

「おい、デブお前の言う通り、今ちょうど嬢ちゃんのパーティが始まる所さ。いい感じに女の喜びをプレゼントした後天国行きまでプレゼント。男役はあまってんのさ。お前は先に逝っとき―な!?」

引き金を引くよりはやく、デブの手が拳銃を掴んだ。拳銃の安全装置とハンマーが抑えたまま、恐ろしい程の握力でスキンヘッドがいくら力を入れようと拳銃はピクリとも動かない。

「つれないなぁ…」

ふと、デブの方を見ると恐ろしい程冷たい目。恐ろしい程鋭い眼光でこちらを睨んでいる。

「そのParty 俺も参加だ。ハラペ・タパティオ―踊れよメキシカン」

デブは頭にのせていたサングラスをかけると、凶悪な笑顔をのぞかせた。

次の瞬間、スキンヘッドの手首がグリンと曲がった。いつの間にか自分にむいた銃口におののく間もなく銃口は火を噴き―バンっとスキンヘッドが破裂した。

瞬間、一斉にマフィア連中が動き出した。今度は誰も何も止めるものは無い。

デブはそのままスキンヘッドの遺体を引き寄せると、まるで二人羽織でもするかの様に遺体を楯にし、スキンヘッドの銃を乱射、いや正射する。きがつけば初動が早かった5人の手首が銃を撃つ前に吹っ飛んだ。

通常ならばこんな事はあり得ない。

そう、『ありえない』が、『ありえない』を可能にする程、このデブの動きが機敏なのだ、ハンドスピードが早すぎるのである。

バンと遺体が蹴り飛ばされ、トニーに飛びかかろうとした男達が吹っ飛ばされた遺体に逆に押し倒される。次の瞬間その巨体に似合わないふみこみでいつの間にか距離がつめられる。背中に手を回したと思うと、その両手にはサブマシンガンが握られていた。

デブの両腕が動く度、ぶれる事無く相手の脳天を砕き、腑(はらわた)をぶちまけ続ける。

だが、こちらの弾が中らない。デブがテーブルを蹴り上げるとそれが楯となり、テーブルに一瞬でも気を取られると全く違う方向から弾丸が飛ぶ。

それが認知出来ない程あの巨体は早いのだ。

「ぼぐにまがぜろおおおおお!」

ペドロが、その巨体、長い四肢を利用し、長椅子を片手で持ち上げかぶり振るとトニーに向かって一文字になぎ払う。

部下の何人かが、それに巻き込まれ、壁に吹っ飛ばされた。

だが、その中にデブはいない。

「あり?」

デブは深く深く沈み込む様にかがみその一撃を躱すと椅子をペドロに蹴りとばす。ペドロがはじき飛ばすと、その先にいた部下の一人が何故かまた巻き添えを食った。

「やめろ!馬鹿弟!お前が動くと兵隊が死んじまう!」

カミロも、そうだが、古沢美加子には余計に今何が起こっているのか理解出来なかった。

なにしろ、突然入ってきたあの鈍臭そうなデブが、突然マフィアを皆殺しにしはじめたのである。

「おい、ミカコ・フルサワだな?」

突然声がする。ポケットに突っ込んだままの電話からひとりでに音声が流れたのだ。

「え?」

OK、送られてきたデータ通りの声紋だ。さて、ミカコ・フルサワ。生きる気があるなら3秒後に走りな。てめぇは、紙袋をひっつかむだけでいい。後は目をつぶっとけ。」

「え?なんて?」

「いいか?

「なにな―「3」―になにな―「2」―にな、―「1」―なんなのよおおおおおお!」

古沢美加子は走り出した。

まだ、後ろ手にロープで縛られたまま、デブが血と硝煙で作り上げた鉄火場へ向かって何にも目をくれず地をはう様な低い姿勢で突っ込む。

古沢は、紙袋に向かって噛み付いた。

(目を閉じる!)

次の瞬間ドシュッ!という音ともに、耳がキーンと、なった。

フラッシュバン・スタングレネード。

つまりは、閃光手榴弾である。

古沢はうっすら目を開けると目が見える事を確認して再び走り出した。

いや、かけた足はすぐに宙を浮いた。こけた?

違う、デブに抱えられたのである。

デブが何か言っている。

「なんてぇ!?」

閃光手榴弾で、麻痺した耳では何も聞こえないくせそんなことを言った。がm古沢にはだいたい想像はつく。

 

―重いなこのブス―だ。

それだけはこいつに言われたくない。

 

DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #19

ペドロは好奇心に打ち勝てなかったのか、そのままびりびりと包装紙を破る。

その中から出てきたのは。

「おお!兄ちゃん!これ凄く可愛いよ!」

 

―フィギュアだった。

 

そのフィギュアは精巧だった。

芸術的なラインをかもす女体は、なんだかもう服なのか、布なのかわからない恥女まるだしのデザインのファッションに包まれ、あまつさえ何がそんなにおかしいのか満面の笑みでどこかよくわからない方向に媚を売る様に視線を投げている。アニメには詳しくないが、多分オリジナルキャラクターであろうそれは、一部がやけにメカニックなデザインがゴテゴテと付いており、全てが全くの不釣り合いなバランスなのに奇妙な均衡をとっている―そんな

 

―フィギュアだった。

 

フィギュアとは、日本では主に小さな人形をさす言葉に思われがちであるが、語源である英国圏ではもう少し範囲が広く『縮小型』である。その為、ライオンや、宗教的女神をかたどっていてもそう呼ぶのである。例えば、昔のガレオン船(中世の帆船)の船首につけられた女神像などの彫刻だってフィギュアなのだ。アメリカのG.Iジョーを初めとするアクションフィギュアの大ヒットをうけて1964年あたりからプラスチック製のフィギュアは現代のフィギュアの代名詞だが、今はポリ塩化ビニル製のPVCフィギュアも流行で今目の前にあるフィギュアもそう言った類いの

 

―フィギュアだった。

 

その場が凍り付いた。カミロの部下達も啞然とする。カミロだけが頭を抱えていた。その視線の先にあるものは

 

―フィギュアだった。

 

「ふざけんなあああああああああああああああああああ!!」

 

今日一番の悲鳴が木霊する。

それもそのはず、古沢からしてみれば、こんなわけのわからない破廉恥な人形の為に幾人かの人間が死んだのはもはや興味も無い事だが、それにしたって自分の命が堕ちかけているなどと到底許容出来る範囲ではない。

 

「あんたら、バッカじゃ無いの!?いい年こいて恥ずかしくない!?んな、人形如きに必死になって何やってんのよ!いや、恥ずかしいわよ!私まで恥ずかしいわ!ボケ!全員雁首揃えてカッコ付けて悪きどってやってる事は人形遊びかよ!可愛過ぎて失笑もでんわ!只のオタクがカッコ付けて拳銃見せびらかしてマフィアごっこか!?ゴミ!クズ!アホ!マヌケ!地球の反対側から飛行機15万ちかくかかるっていうのにご苦労様ね!そんだけの金あればそんな人形買えるわ!アホ!つーか、家でヤフオクでもしてろや!よっぽど建設的だわ!脳みそに皺が無いのか知らないけど、んなもん10万もしねぇよ!何人連れてきた!?10人でも150万くらいか?へたしたら、さっきの600$でも買えるわ、変態!」

堰を切った様に、のべつまくなし耐える事の無い古沢のマシンガントークに何故かペドロだけが身をよじって喜んでいたが、カミロは冷静にその口を銃口で閉じた。

「はう」

しかし、古沢の瞳に先ほどの諦めの色はない。

「ふふぁへんな~~~~~」口に銃口を押し込まれながらも必死に抵抗する。

「黙っとけ、ま、見られたからには一応説明しないとな。なぁ、お前らも良く聞け!その人形の中にはな、『革命』がつまっているんだよ。」

カミロがわけのわからない事をいいだした。それに部下の一人が失笑すると、カミロは銃口をそちらに向け容赦なく撃ち殺す。

BANG(パン)っという音が一回響いただけで場は元の静寂を取り戻した。

カミロはそれを見てゆっくりと動き出す。弟から、フィギュアをそっと受け取り、静かにそれを紙袋へ戻した。

「いいか、一つ言っとくぞ。お前らがこの荷の中身を見た瞬間全員本国に戻ったら殺される事になっている。俺も含めてな。だから、隠しといてやる。いいか、『俺たちは何も見なかった』そういう事にしてやるからいいから俺の話を聞いて、付き従え。」

そういって、煙草に火を灯す。

「そもそも、今回殺した吉川はCIAの人間だったのはみんな知っての通りだろ?そんなやつが、何度もオタク商品の為に密売まがいの真似をするか?」

弟が持ったそれを指差し言う。

「これはブラフだ。ただの人形に見えるかもしれないがそうじゃねぇ。俺も良く知らないが、これ全部が暗号みたいなものらしい。『世界』を変える暗号だ。

少なくともBOSSはコレを手に入れれば、今の国(おかみ)におびえる必要はなくなるとも言っていた。持った奴のやりたい放題。そう言う代物だ。

だが、そこは重要じゃねぇ。真偽も関係がねぇ。

少なくとも、いいか?中身を見ただけで殺されるしろものだ。失敗なんてしてみろ、それじゃすまないのは当然だろ。いいか、命が惜しかったら、もうこの話は―。」

と、カミロが語るその最中、ファミレスのドアが開いた。

その瞬間、全員がそちらを向く。

「あれぇ~今日は休みかぁ~、ここのパフェおいしいのに」

と、デブが扉を開けて入ってくる。

間違いない、先ほどメイド喫茶で出会った白デブートニー・ベイカーである。

トニーはおどけた調子で言う。「困ったなぁ、お腹がすいて仕方が無い。おやおや、ああ、そうか。今日は皆さんの貸し切りだったのか?OH!Party!?

DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #18

 

Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!

 

 

「なんでよおおおおおおおおおおおおお!」

トニーの予測とは裏腹に古沢美加子は未だ捕まっていなかった。

突然鳴り出したアラームと共に大量の悪漢どもがわらわらと集まってくる。

古沢は、東京本社と言う事でかなり気合いを入れて買った6万のブランドスカートをびりびりとやぶき、パンプスを脱ぎ捨て陸上選手もかくやというレベルのスプリントフォームで走り出す。もはや、女性らしさとか、なんだとかそういうのはどうでもいい。命がかかった問題だ。

走りながらアラームの出所を探すが、走りながらだと上手く探せない。仕方が無く、携帯電話と、財布だけを手にサイドバックを放り捨てるが、さすがに靴が無ければいくら全力疾走しようとそこまで速度は出ない。

しかしながら表通りまで出れば、平日とはいえ人も多いし秋葉原は巡回警察官が多い街だ。なんとか逃げ切れる。

そんな淡い期待を抱き大通りに駆け込む。

 

「ええ、秋葉原一帯で大量の不発弾が多数見つかったため付近の住人は退避をお願いします。」

 

大通りには人っ子一人いなかった。

「なんで!?なんでこのタイミングぅっ!?登場人物にエディーマーフィーはいないわよ!ジャンル間違えんな!」

ガチャリと、こめかみに固いものがあたった。

「わかるぜ、ジャパニーズ。こいつぁ、リアルに血が飛び出るモノホンのスプラッタだよなぁ?」

と、どこかで見た事がある髭面の男。

「あはははは、ですよねぇ」

私は大人しく捕まった。

 

◆ ◆ ◆

 

「いやぁ、都合がいいぜ。お嬢さん。こりゃ、幸運の女神でも舞い降りちまったか?無事、メイド喫茶で爆発が確認されたって報告だ。その上いまや、街は不発弾で人がいねぇ。女が犯されようが死のうが目撃者はいない。どうどうと気楽に出来るってもんだ。なぁ、ペドロ」

「そうだね、兄ちゃん」

気がつけばもうすでに日はおちかけ、あと半時もしないうちに夜が来る。そのような頃合いになってしまった。

古沢はもぬけの殻になったレストランに連れて来られていた。

扉は拳銃で強引に壊され侵入され、いまや公開処刑を待つだけ状態だ。

正直、コメディ映画のタイミングで不発弾による一斉退去が起こった時にはあまりの自分の不運さにこれも運命かと諦めの一つもついてしまった。

(私の人生のエンディングは、バッドエンディングだ。これから乱暴されて殺される。単純明快な末路。シナリオ書いた奴は3流ね。結局私、なんで死ななきゃならなかったのかしら)

ふと、そんな事を疑問に思った。気がついてみれば自分はあの袋の中身が何かすら知らない事に。

「いやに嬢ちゃん大人しいな。さき男のタマ金潰した女とは思えないぜ」

だから、ふと言ってしまったのだ。

「ねぇ、どうせ殺されるんだからさ。その袋の中身教えてよ。結局それは何なわけ?」

「ああ、それかぁ?教えてやる訳にはって、おい!」

気がつけば、弟が紙袋から包装紙にくるまった荷を取り出している。

「なにやってんだ、ペドロ!」

「だって、兄ちゃん。確かに気になる。美味しい者かもしれないし」

「やめろ!おめえ何でもぶっ壊すから―」

ペドロは好奇心に打ち勝てなかったのか、そのままびりびりと包装紙を破る。

その中から出てきたのは。

「おお!兄ちゃん!これ凄く可愛いよ!」

 

―フィギュアだった。