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DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #26

 

    ◆ ◆

 

ダリオ達は17階に到着した。辺りは暗く、一つの明かりも付いていない。

監視カメラによると、やつらはオフィスビルの一室にたてこもっているらしい。

「半分は西から、もう半分はオレと東から目的地に回るぞ、GO!

二手に三回し、クリアリングを行いながら徐々に其の部屋近づいていく。

―ふと、後ろで明かりが付いた。

兵士の、一人が咄嗟にそこに銃を向けるとそこには人形があった。

罠の可能性もあったがクリアリングの為、少しだけその部屋に入る。

だが、それが良くなかった。其の瞬間に突然扉が閉まり、しかも開かなくなる。

「今開けてやる」とダリオが銃を扉に向けて構えた時には既に遅かった。

彼がライトを当てた時、見えてしまったからだ。彼の部下がクレイモアの線にいままさに引っかかってしまったのを。

すぐさまダリオは引き換えし、他の兵士も陰に隠れた。

 

爆発音が、なった後は見るも無惨な状態だった。

 

四肢も、腑も、千々に、バラバラにされ、真っ赤に当たりを染め上げていた。

「隊長、今の爆発音は?」

分かれた西チームから無線が入る。

「ブービートラップに一人やられた。警戒しろ」

そう言った瞬間、突然防火シャッターがものすごい勢いでしまり始める。

「な!?」

気がつけば、完全に西側と分断されていた。

「た、隊長!分断されました!」

「わかっている。おい、電気室、及びモニター室。残した半分も、こちらに来い。奴はたてこもった状態で防火扉をしめた。もう、袋のネズミだ」

「た、隊長、それは出来ません!」

「何を言ってる?」

「出来ませんーな、なぜなら、半分残してきた奴らだったらみんな死んじまってるからなぁ~??」

突然、部下の口調が変わる。

「お前、何物だ?」

「敵だよ。お前らの仇だ。わかるか?ブラック(黒人)の方だよ。何慌ててる。これは『ただの通信ジャック』だろう?なぁ~革命戦士」

口調どころか、声質も変わった。あっけにとられて言葉も出ない。

「いやぁ、良くないなぁ。ブローニングM2なんて持ってきちゃあ。ありゃ、多人数を一気に相手にするものだ。たった2人につかうにゃ、もったいなさ過ぎる代物さ。まぁ、おかげで殲滅は容易だったぜ?コロンビアン。お仲間は革命と言う暑い夢の中、花火の様に弾けながら薙ぎ払われたよ。この世に虐殺なんてする奴の気が知れないね。アレは地獄の蓋だ。中途半端に生き残っていた奴なんか叫んでたぞ?たいちょー、たいちょー、我らが革命の火を~とかなんとか?あわれすぎてあい方が鉛のお駄賃を贈呈した程だ。ああ、なんて泣けるシナリオだ」

「嘘だな。監視室のモニタールームに送ったアルベルトは10年来の戦友だ。オレの最も信頼出来る男だ。其の声を聞き間違えるはずは無い。第一、エレベータールームに置いてきた部下が一切の報告無しにやられるなんて事があるはずは無い。」

OK、南米の田舎者に教えてやろう。声何ぞ、今の時代いくらでも作る事が出来る。今のボイスチェンジャーはなかなかだぞ。いちど、相手の会話記録を解析しちまうと其の音程に合わせて俺の声を変えてくれると言うわけさ。そして、お前らが一番勘違いしている事の一つとしてこの通信機がいつからジャックされているかと言う事さ。答えは8階に君たちが到着した当たりだ。あのあたりから、お前はず~~~っと、オレとおしゃべりしてたのさ。わかるかい?君たちの部隊は其の時点で情報的に孤立していたのさ。なかなかに傑作だったぜぇ?あんたが其の罠に突っ込むときの覚悟は、なかなかに決まってた。カッコいい隊長の決断の声をあんたの部下にも聞かしてやりたかったぜ」

だが、それが真実と言う証拠も無い―と、ダリオが言う。

「信じられないかい?なら、窓から見下ろしな。さっきのブローニング付きの車両が消えてねぇか?もっというなら、お前の携帯電話を開きな。動画を添付して送ってやるよ、仲間達の最後の瞬間だ。見送ってやれ」

其の瞬間ポケットで携帯電話が震えた。

おそるおそるダリオはそれを開く。

そこから流れてきたのは、重機関銃で蹂躙される部下達の惨劇だった。

惨劇はわずか10分にも満たないもの。

その間に、オフィスビルの磨かれた床が血に染まり、だんだんと静かになっていく。

そして、やや大きめの音声が流れる。

―隊長…、応答願えますか…隊長。わ、我らが革命の火を、あなたと、共にーBANG!BANG!BANG!

―おい、ボンバヘッド。こいつ最後にカッコいい台詞はいてたか?スペイン語よくわからねぇんだよ―

―ああ、中々泣ける遺言だったぜ?―

―おいおいまるでこっちが悪者じゃねえか。お、いいな。演出的にそっちのほうがイカスか?ベイダー卿みたいにフィーチャリングされてみるか?―

―おえええええええ!―

―おい、ジャップ吐いてんじゃねぇよ。そんなに、このカッコいい事言った奴のナニがグロかったのか?―

―これがジャパニーズ処女って奴の反応なのか?ベイカーー

―いいや、もうちょっと恥じらいながらどきマギしてみるものさー

―あんたら、イカレテルわ!人じゃないわよー

―またまた、ほらもうチョイ良く見ろー

―ちょっと、やめてよ。近づけないで、おええええええええ!—

―ああ、もうゲロまみれじゃないか、こいつ。格好良さ半減だな―

 

「あああああああああああああ!!!!!!」

 

DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #25

 

◆ ◆ ◆

 

「隊長。やつらはオフィスフロアに向かっています。」

「エレベーター組は22階まで一気に上がれこっちは各階の下方階行きのボタンを押しつつ上に上がる。挟み撃ちにするぞ。」

そして、駆け上がる。

確かに、この作戦、普通のエレベーターなら積みである。

だが、かれらは最新式の電子制御かに置かれたエレベーターを知らないのである。

 

そして、8階まで来た頃だろうか。さすがFARCは問題なかったが、はっきり言ってカミロ達はばてていた。ヘビィスモーカーで、肺を病んだ彼らの心肺機能ではこのスピードで駆け上がれば心肺機能が限界になるのも当然だ。

「今何階だ?」「8階です」

(やってられねぇ)

そもそも、上に行った2チームしか言っていない。ならば、上の数を増やすべきだ。

「やつら17階で降りてますね」

と、部下の一人が言う。

「お、俺たちはエレベーターで上からつめる」

「勝手にしろ」「そうするさ、5人ついてこい」

と、いそいでカミロはエレベーターに乗る。

そして最後にペドロがのった瞬間。

BOOO(ブー)と、ブザーが鳴った。

「兄ちゃん」

「ん、お前階段から一番上で合流な」

売られていく子牛の様な瞳をする弟を置き去りにしてカミロは、22階を押した。ゆっくりと、動き出す。

カミロはふぅ、とため息をつき、煙草に火をつけた。

漸くゆっくり出来る、と思った矢先ゆっくり動いていたはずのエレベーターは

CLUNK!(ガコン)と、突然動きを止める。

「お、おい!なんだ!?」

さらに電源も落ちいきなり暗くなった。

 

◆ ◆ ◆

 

一方、その異変はダリオ達にも起こっていた。

 

突然エレベーター組からエレベーターが止まった。出られなくなった。との連絡を受けると同時に、もう一つ無線から流れてくる声。

「隊長、こちら電源室」

「なんだ?」

「人っこ一人いません。」

「じゃあ、逃げたんだろ?状況は聞いてるはずだエレベーターの電源を入れていやれ」

「いえ、それが―こちらのコントロールは一切受け付けない状態で」

「壊れているのか?」

「いえ、全てがスタンドアローンの独自の回線で一括コントロールされていると、マニュアルには書いてあるのですが―その、全てコンピューターがひとりでに動いてます。」

「はぁ?」

「スタンドアローンのコンピューターが乗っ取られています。何を押しても無理ですね」

今、矛盾した事を当然の様に報告されたが「隊長、エレベーター表示がむちゃくちゃに点滅してます。あ、全てのエレベーターが17階に到着した事に。」

と、こんな話を聞かされれば、認めるほか無い。

「誘ってやがる。おい、お前ら。相手は電子戦のプロがいる。おそらくこのビルの電源及びセキュリティーシステムを乗っ取っている。気を抜くな!」

「隊長、どうします?」

「17階で待ってるって意味だろ?いいさ、挑発に乗ってやろう。」

 

 

    ◆ ◆

 

 

ダリオ達が家具後を決め17階に向かった頃。カミロ達は、エレベーターの天井部分を無理矢理こじ開け、其の上にのっていた。

「くっそ、中から開けれないな。」

エレベーターの各フロアの壁は厚く。しかも重い。しかも、わりと高い位置にある性で、跳んだり跳ねたりして、そこに飛び移っても、一人で開けるしか無く、一人で開けるにはやはり重たすぎるのである。

「しかたねぇ」と、形態を取り出すとペドロに連絡を取る。

「兄ちゃん、今どこ?」

「そりゃ、こっちの台詞だ。って、風の音?今外か?」

「うん、オレ屋上。誰もいない」

「上に行き過ぎだ。ボケ!下だ!下にこい!いや、10階のエレベーターのドアをお前の馬鹿力で開けろ!いいな!」

「わかったよ、兄ちゃん」

と、それだけ聞くと電話を切った。

部下もほっとする。ペドロのあの怪力ならばこの扉くらい余裕で開く事がわかっているからだ。

だが、長年連れ添った彼らであってもペドロを侮っていたのだろう。

10階どころか、もっと上の方でガコン!と、扉が開き、間延びした声で「今いくよ~」という声がした後―それが降ってくる頃に血を分けた兄ですら気づけなかったのだから。

 

DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #24

 

◆ ◆ ◆

 

車は横転する事無く、オフィスフロントの壁を側面に向けてかろうじて車体の原型を保っていた。穴だらけではあるが。

 

「いやぁ、わかっちゃいたが、カルテルがいくら国家予算並みに金があって、本物の兵隊や雇えるっていっても、あれ(ブローニング)は普通通せないだろ?」

「ああ、言ってなかったか?あいつらの所のBOSSは、アメリカ経済界でも顔のホアキン・グッドマンだ。最近、どこぞのブロンド女とファックしてるんだが、こいつがブロンド(馬鹿)どころか、もうちょい南方にある革命軍のダブルスパイで、今の地位がなんとラングレーの情報担当次官様だ。革命軍もカルテルも両方対国家戦争の真っ最中だ。気が会うんだろうよ。」

「おいおい、そりゃメイドの裏スポンサーも黙ってないだろ。じゃあ何か?あいつら自国のアレを無視して俺たちにほうりなげたってのか?」

「参戦して欲しいか?」

「いいや、他はともかくシー…いや、シャム猫の相手だけ二度と御免だ。それにしても、米高官の陽性とはいえアレラを素通しってこの国の自治は終わってんなぁ」

「人の言う事聞くのは楽なのさ。ずっと、そういう生き方してきた連中だ」

デブが応戦していると、後部座席が、ぎぃ、とひらく。

「あんた達、楽しそうね。」

と古沢が後部座席から這いずって顔を出す。

「寝坊しすぎなんだよ」

「ああ、最悪。生きた心地しないわ」

「何言ってるんだ、全て予定通りだ、いいから、紙袋持ってでてきな。」

「あんたら、保護対象をちょっとは優しくする気ないの?」

「わかった、手をかそう」

と、言って、トニーが古沢を雑に引き摺り下ろした。古沢は頭から床にぶつかり、一回転して体制を立て直す。

「コラ!」

「期待し過ぎなんだよ。おい、またあのバケモノ(ブローニング)が出てくる前に行くぞ」

「30秒で電源を回復させる」

OK、明るくなったら走れ」

と、トニーは車から自分のリュックを取り出す。

「さぁてFARC、東京の市街戦は、ひと味違うぜ?」

 

    ◆ ◆

 

(ちくしょう)

一度、馬鹿な部下が命令に反してRPGをぶっ放そうとするアクシデントが一つあったが、なんとかあのジャップとデブ、それに部下の報告で明らかになったガリガリの黒人を追いつめる事に成功した。

追いつめはしたが、カミロは焦っていた。

(やべぇ、この追いかけっこで何人の兵隊がやられた?たった2人をしとめる為にどれだけの被害が出た?)

そう、事実カミロは手持ちの兵隊のほとんどを無くしてしまっていた。

(こりゃ、マジで成功しても殺されるかもな)

だからこそついには、虎の子のFARCの連中を呼び出すはめになったのである。

本物の戦争をやっている本物の兵隊。革命という熱に当てられた野獣。

並ではない。実際こうしてあっとういう間にあのデブとガリを追いつめてしまった―例の新たに来た40台がこの兵隊たちである。

もちろん、そんな腕前の連中をゴロツキくずれのカミロが指揮出来るはずも無い。彼らを指揮しているのは今カミロの隣にいる男だ。

銃創と火傷、そして刀創を、その筋肉に無数に刻み込ませた男―ダリオ・ロドリゲスである。

「後は、任せておけ。不良ども」

「ああ、わかってる。あんたらの好きにやってくれ」

今は好きに言わしてやる。

そんなことより―

(それにしてもマジであいつら何者だ?コーサ・ノストゥラの奴らのあのおびえ方にしても、どうにもげせねぇ。コメディみてぇな図体の癖に対戦車ライフルまで出しやがる。あんなもん、この日本でヤクザやそこらが持てるはずねぇ。吉川の事を考えるとアメリカ関係?アンクルサムかぁ?マジか?あれでぇ?いやいや、ないだろ。それなら情報が降りてくるはずだーまぁ、誰が相手でも今更ひけねぇってのは確かだ。)

「兄ちゃん、俺、暇だ。」

「もうちょい、我慢しろ。兄弟」

誰の性でこんな人生送っていると思ってるんだーと、カミロは心の中で毒を吐く。

だが、それも今日限りだ。コレが成功すれば晴れて俺もカルテルの中で上り詰める事が出来る。今までは邪魔でしかなかったこの弟だったがこの暴力だけはカードとして使えたからこそ手放して来なかった。

(まぁ、それもコレで終わりか)

カルテルの幹部になりさえすれば兵隊なんぞいくらでも使える。こうしたプロを雇う事も出来る。

『わざわざ、このノロマで知恵足らずな生き物をいつまでも飼っておく必要などない』。、

(いっそのこと・・・こいつ(弟)も殺しちまうかぁ。其の方が足引っ張られる事も無いし、オレの人生安泰だ。)

そんな事を考えていると、突然オフィスビルの明かりが付いた。突然付いた明かりに、一同の反応が一瞬おくれると例の3人が飛び出した。駆け抜けたそこには、既に待機したエレベータが一揆降りてきている。そこに飛び込んだ。

「あいつら、エレベーターに乗りやがった」

「どうやら、もう一人機械室にも仲間がいるようだな。隊を半分に分ける。半分はここで待機。もし、こちらが撃ち洩らす様な事があれば確実にしとめろ。もう半分は追跡部隊だ。チームをつくるぞ。3名で1チームを造り1チームは電源室、監視室の確保。2(ふた)チームは、それぞれ他のエレベーターで追う。後は全て階段だ、一人あまりが出るはずだが。そいつは、エレベーターホールで逐一あいつらが何階でおりたか報告しろ。なお、階段ルートは私も隊に加わる。以上」

兵隊は、流れる様に分隊し、それぞれの作業に付く。

(まぁ、こいつらの言う通りにしていれば間違いは無いのだろうが。)

これだけの被害を出したのである。もしかしたら、その責任を問われる可能性はある。

(上手い事、横からかっさらって、自分の手柄にするか)

「いくぞ、ペドロ」

「うん、兄ちゃん!」

生き残ったカルテルのゴロツキどもも、一緒に動く。

「お前ら、なんのつもりだ?」

階段の扉前でダリオと

「邪魔はシネェよ。ちょっと散歩だ。それとも、この程度でてめぇらのあんよはもたついちまうのかい?」

「ふん、好きにしろ。GO!!!

そしてケモノ達ノ夜が始まった。