DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1 #32
トニーはペドロのハンマーブロウを躱すと脇をすり抜け背中合わせに背後に回る。
そのまま銃口を背骨に押し当てると少し柔らかい所でぐっと上に銃口を押し上げた。
BANK!!BANK!!BANK!!
一発の弾丸が脊椎と脊椎の間を縫って叩き込まれる。
瞬間、ペドロはブチンという何かがキレた感覚がしたかと思うと、突然宙に浮かんだかのような感覚に見舞われた。
直後訪れる激痛!
「ぎいいいいいだああああああああああああああああ!!」
だが、そこで暴れようにも、足はピクリとも動かなかった。
もはや、何も感じない、自分の足ではない様な感覚。
「よう、アレも勃たない体になった気分はどうだい?」
トニーが売ったのは下半身の椎骨と椎骨の間の関節、椎間関節である。ここは関節であるが故に分厚い筋肉は無く。薄い繊維質の靭帯のみがあり、其の奥の脊柱管には無数の神経の束が集まる脊髄がある。今回彼が撃った場所には場所は下半身ほぼすべての感覚、運動、神経が集まる場所である。
気がつけば、丸い悪魔がペドロの背中を踏みつけにしていた。
「ぢぐじょおおおおおおお!」
腕を動かしてなんとか、状況を打破しようとするが、今度は右脇に体温計のように拳銃が差し込まれた。
BANK!!BANK!!
「さて、ココからは何分持つかな?」
腋下から恐ろしい両の出血が始まる。。
「ぐがあああああああああ!」
またも絶叫が木霊する。
これはもはや拷問だった。頭に一発撃てばすむものをトニーはわざといたぶって遊んでいる。
「待ちな!」
と、カミロが叫んだ。
其の腕には捕まった古沢がナイフを首にあてがわれている。
「よくもやってくれたな」
と、紙袋を逆さにしてみせる。
そこには、新聞紙を丸めたものが入っているだけで何も入ってはいなかった。
「ずっと、空っぽの紙袋を追いかけてたって事か。さぁ、本物を渡せ!さもなければ、この女を殺すぞ!」
「なら、お前の弟と交換ってのはどうだ?」と、トニーはペドロの頭に銃口を向ける。
「にいぢゃん、ごめん」
「いらねえよ、そんな奴」
カミロは即答でいった。
瞬間、ペドロは何を言われたかわからなかった。
「どうせ、この仕事が終われば殺す予定だった奴だ。」
ペドロがどんなミスをしても最後まで見捨てなかった兄だ。
「その足手纏いを始末してくれるんなら手間が省けてちょうどいい」
ペドロにはわけがわからなかった。
「もう、そうなっちまったら、オレの武器として、道具としての価値すら無い」
わからなかった。
「せいせいするさ。さぁ、交渉材料にはならねいぞ。さっさと渡せ」
と、ボブは頭をかきながら。
「まぁ、俺たちとしても其の女殺してくれた方がいろいろすっきりする所なんだが」
「おい!コラ!」
「―一応、仕事は其の女の確保だからな。ベイカー、仕方がねぇ。渡してやれ」
「豚は銃も捨てろ!」
しかし、トニーは其の銃をカミロに向ける。
「ベイカー!!報酬を忘れたか!?」
トニーはつばを吐き捨て大人しく銃を全てマフィアの方に投げてよこした。
最後に紙袋の中身『包装紙』に雑につつんだそれをテーブルに置く。
「よーし、いい子だ。へへ、FARCを全滅させた野郎だからどんなものかと思ったが、以外と結末はあっけなかったな。デブ、さがれ。そこの黒いのもそこの窓ガラス越しにだ!」
こんどは、トニー達に近づく愚をおこさなかったカミロは、そのまま銃を拾う様に部下に言う。
ペドロは失血のため意識を失ったのか、さきほどから静かだった。
部下達は銃を構え、ボブとトニーは窓越しに立たされる。窓と言ってもガラスの壁と言ったそれは、其の向こうがよく見える。22階―約地上100mから見下ろす地上は仮に足を踏み外せば死ぬのに容易い。
「よし、返してやるよ」
と、カミロは古沢を突き飛ばしデブ達の足下へ私を転がした。
わたしは、すぐに立ちあがりつつ二人に小声で文句を言う。
「あんたら、何考えてんのよ。ブツを渡したらあとは、私達殺されるだけじゃない!?」
「五月蝿い、そろそろ時間なんだよ。ジャップ。ハンズアップでガラスに背中を付けてろ。」
「さぁて、てめえら良くやってくれた。なぁ、最後に最高にむかつかせてくれたお前らの名前を聞かせてくれよ。ま、後のオレの武勇伝として名無しってんじゃしまらねぇからな」
と、笑いながら言う。
「ボブ・ボンバヘッドだ。」
「トニー・ベイカー」
「結局何者だったんだ、お前ら」
「さぁな、ただの便利屋なんだが、この街の連中はBTとかBJとか呼ぶが、特に自分たちで何か名乗った覚えは無いさ。」
「そうかい、まぁちっと肩書きが残念だが、ボブとトニー、そしてジャップもお別れだ。」
マフィア全員がこちらに向かって発砲する。
トニー達は一瞬伏せるだが、一発目を外したとて関係がない唯の的を打ちたい放題するだけだ。だが、二初女が中る事は無かった。連射する弾丸が追いつく前に三人あわせてひび割れた窓に向かって飛び出しビルから真っ逆さまに落ちたのだ。
「あいつら、自分から落ちていきましたよ。兄貴」
「殺されるくらい習って奴だろ。それにしても『BT』ね。コーサ・ノストラの連中もなんであんな奴らを恐れていたんだか。まぁ、あの革命軍の連中がやられたんだ。まぐれだとは思うが」
―と、ふと目の前の大きな看板を見た。
ワクドナルドの看板に書かれたそれは『新発売、BLTバーガー』と言う文字だ。
BLT―ベーコン、レタス、トマト。レタスを抜いたら『BT』―『レタス抜き』。
ふと、カミロはあのクソメイドの言葉を思い出した。
『レタス抜きには手を出すな』
『この街の鉄則(ルール)みたいなもんなんだ破れば必ず死ぬ。絶対死ぬ』
この街に入ってからみみにたこが出来るくらいに聞いた其の言葉に嫌な予感がしたカミロは包装紙につつまれたブツを開けた。
Pi Pi Pi―
カウントダウンはまさに2から1、1から0へと。
「兄ちゃん!!」
今、まさに時限爆弾は予定通りの時刻に爆発し(配達され)た。
DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1 #31
◆ ◆ ◆
カミロ達はやはり8階についた頃には息が上がろうとしていた。
「兄貴」
「いいから、急げ。またエレベーターで一階まで垂直落下するのはごめんなんだよ」
どういうわけか、嬢ちゃんは一階ではなく上に向かった。なら、とことん時間を稼ごうと思えば一番上までいく可能性が高い。
(疲れた俺たちならなんとかできるってか?甘く見られたもんだぜ。?))
「兄貴、後ろからなんか聞こえるんですが?」
「あん?」と、後ろを見るとしたの階からものすごい勢いで上へと上がってくる影があった。2つはスプリントフォームで全力疾走する白人のデブと黒人のガリ。二人とも陸上選手もかくやという腕の振り、腿上げ、足の回転でこの階段を駆け上がってくる。
そして其の奥にはもっと恐ろしいものが―。
「やべえ!お前らも走れ!」
とメキシカン達も、やはり全力疾走で階段を上り始めた。
そう、其の後ろには完全に割れを失い「ごろずごろずごろずごろず」と唱えながら暴走機関車の勢いで階段ごと打撃で破壊しながら例の二人を追うペドロの姿だ。
「あいつ完全に暴走してやがる!お前らでも巻き添えでミンチにしかねぇぞ!」
だが、全速をだしつつもどんどんと後続がおいつき、ついには白デブが階段の横を走る。
「おいおい、オタクの弟だろ!あれ、なんとかしろ!」
「ああなっちまったら、どうにもならねえよ!」
一同は呉越同舟、目下の災害にも似た破壊の嵐から逃げる為、もはやエレベーターがどうとか、銃がどうとかを忘れ全力で駆け上がった。
もはや、止まれない。途中どこかの階で降りようとドアに手をかけようものなら其の時間ですり身になる。
「ごろずごろずごろずうううううううううううううう!」
◆ ◆ ◆
古沢美加子は22階に付いていた。その理由は交渉の機会を持つ為である。
仮に一階にでて逃げたとしても、相手は男の足だすぐに追いつかれて簡単に捕まってしまう。そのくらいならば、この階にたてこもり、とある細工をして銃を無効化した上で、この紙袋の中身を人質にすればいい。
そうすれば、まだ、生き残る可能性が生まれるというものだ。
22階をえらんだのは単純に最上階であり階段で上ってくるまで最も時間が稼げるから。
それと、○○○があるからだ。
彼女は、ある細工をおえるとそのまま彼らを待とうと―。
と、そこで何やら轟音が聞こえる。しかも、それはどんどんと近づき、頻度を増して!
BOOOOM!!!
非常階段の入り口が破裂したと思った瞬間、何故かあの白人と黒人コンビと一緒にメキシコマフィアの連中も仲良く飛び出してくる!
「おい、落ち着け!ペドロ!」
「ごっぢははらもへっでるんだああああああ!はやぐじねええええええええ!!!!!」
怒り狂ったペドロはもはや、兄も白デブも区別がつかず吠えた。
「広い場所に出たぞ!ベイカー!!」
「わかってる!」
と、その両手にはいつの間にか銃が握られていた。
あわててメキシコマフィアの連中も銃を構えようとするが、腰には何も無い。
「あいつ、俺たちの銃を盗んだのか!?」
どうやら、並走しているうちにマフィア全員から抜いていたらしい。
「本当に手癖の悪い奴だぜ、ベイカー」
「育ちが悪くてね、さてこっからはワンサイドゲームだ。Mr.HULK」
「んがああああああああ!」
その鉄さえ破壊する筋肉と拳とはいえ、拳銃の火力を得たトニーには勝てない。
相手が人間である以上、間接もあれば血管も神経もある。
トニーはペドロのハンマーブロウを躱すと脇をすり抜け背中合わせに背後に回る。
そのまま銃口を背骨に押し当てると少し柔らかい所でぐっと上に銃口を押し上げた。
BANK!!BANK!!BANK!!
DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1 #30
「てめぇら、無視すんなぁ!もう、めんどくせぇ、よく考えればデブさえ殺せば勝ちのゲームだ!死ねぇ!」
と、カミロはサブマシンガンを構えて連射する。
BARATATATATATATATATATA!!!!!!!!
1発。
この時、すでに照準の向こうにはデブはいなかった。
6発。
古沢は反射的に紙袋を確保していた。
10発。
ガリはパソコンを閉じてカウンターの下に隠れていた。
14発。
ガキンッ!と、連続する火花と割れるガラスの音の中で異質な固い音が。
瞬間、ガチ、と、サブマシンガンが、動かなくなる。
なにごとか!―と、思って見ると先ほどまでデブがステーキを切るときに使っていたテーブルナイフがサブマシンガンのシアーの動きを阻害する様に突き刺さっている。
―完全なデジャブ
「あの時のは、お前だったのか!デブ!!!!」
兄の動きが止まった頃には、弟はすでに動いていた。
その暴力的なまでの一撃が暴風のように空気を薙いでトニーに迫る!
トニーは不意に直撃を受け、後ろへと吹っ飛ばされ、背を壁に撃つ。
カミロの部下達は即座に古沢を捕まえようと駆けた。
それを、ボブが横から足を伸ばして引っかける。
転んだ野郎共に小さく舌を出して古沢が駆け出すと後ろから拳銃を撃つ。
威嚇のせいか、場慣れしすぎた古沢の動きが止まらない性か弾丸はまったく中らない。
カミロが部下の銃を一つ奪ってボブに撃とうとするが、其の手にまたもテーブルナイフが突き刺さった。
動きを止めていたトニーが既に回復していたのだ。
ペドロが拳を振り上げトニーに追撃する。
其の拳を低い姿勢で躱したトニーの体が突然宙に舞い上がる、独楽の様に高速回転するさまは、其の体型もあってスーパーボールの様だ。
しかしながら、100kg以上空手で言えばおそらく胴回し回転蹴りに位置するその蹴りは、トニーが吐いた安全靴の硬度も相まってフレイルに近い殺人に至る鈍器と化している。それをペドロはマトモに受けるが
「いっってえええええええなあああああああああああああああ!」
と、直撃した直後に、ひるむことなくトニーをはたき落とす。
「マジかよ」
飛ばされたトニーは信じられないと言った様子で、しかし今度はしっかりと受け身を取って即座に身構えた。
「オタクの弟、親戚にゴライアスでもいんのかい?」
「あいにく、オレだけだ」
と、ボブの軽口にカミロが返す。
先ほどから、カミロはボブを取り押さえようとするが、妙にリズムに乗ったステップで躱される。
巨体に似合わない速度で動く二人の怪物だが、トニーの方がやや劣勢だ。
ペドロの攻撃は鈍重でトニーの動きに対応出来ていないが中らないわけではない。だが、携行火器を持たない今のトニーは明らかに火力不足だ。ペドロにまったくダメージが通っていない。その上、ペドロの動きが遅いとは言っても勢いはあるのだ。狂戦士(バーサカー)のような猛攻の連続は周辺の破壊しながらなお勢いが止まる事は無い。
「なんであだらないいいいいいいいい!」
しかし、ペドロがトニーを追いつめつつも攻めきれない理由は、其の障害物の多さが原因だった。トニーは物陰を利用し、視線を外し、時に人間を超越した立体的な動きでペドロの動きを躱していく。
ペドロがトニーに手をこまねいている時、いよいよ、古沢が囲まれた。
そこで、古沢の取った行動は。
「黒人、パスよ!」
と、ボブに向かって放り投げた。
宙を舞ってそれをペドロ以外の誰もが目で追った。
カミロが跳んで阻止しようとするが、テーブルを踏み台にしたボブが其の上を行きキャッチする。
「こっちにまわしてんじゃねぇよ、たく。」
CLOMP!(ドシン)と、着地するとボブは紙袋をまとめ、まるでラグビーボールの様にするとくるりと回した。
「懐かしいな、これでもガキの頃の夢はNBAだぜ?」
すると、低い姿勢でボブは右へ左へ股下をくぐらせ紙袋を移動させながら、手を伸ばすカミロの腕を躱していく。
「言っとくが、黒人、スポーツじゃねぇからな!」
と、カミロはタックルを決め込む。
ボブは軽々と吹っ飛ばされた押されるが其の腕には既に紙袋はなかった。
「なっ」
「抱きつく相手が違うんじゃねぇか?」
再び、宙を舞う紙袋。
ペドロの爆撃の様な攻撃の中で、彼はテーブルの上の胡椒をとり、ふたを開けてそれをペドロの顔面めがけてぶちかました。
さすがのペドロも粘膜に入った胡椒の刺激には勝てず動きを止める。そのペドロを踏み台にしてトニーが今度は宙にある紙袋を掴んだ。
「ごんにゃろおおおおおおお!」
「やめろ!ペドロぉ!ブツごとぶっ壊すつもりか!」
と、カミロが叫ぶが、しかし、トニーとの戦闘で興奮したペドロは止まらない。
トニーはペドロの攻撃を間一髪避け、すぐさま紙袋を投げた。
すると、其の先には2階に到着したエレベーターに向かって走る古沢がいた。古沢はトニーのパスを受け止めすぐさまエレベーターに入る。
「ノリな、ジャップ」
ボブの言葉に「わかってるわよニガー」とだけ呟いた。
「クソ、俺たちはジャップを追う。ペドロお前はそのデブとガリ殺しとけ!」
「わがっだよ!にいぢゃんんんんんん!」
カミロ達は今度はエレベーターで向かう事はしなかった。階段をあわてて駆け上がっていく。
「おい、ボンバヘッド、一服付いてないで、てめぇもなんか仕事しろ」
「オレはデスクワークはなんだよ。肉体労働はお前の仕事だ。」
と、悠然と煙草を吸っていたボブはそれを床に捨てて消した。
「なら、てめぇの悪知恵を貸しやがれ」
「火力が足らないんだったら調達すりゃいいだろう?一階の死体がいくらでも持ってる。」
「名案だ」
と、トニー達も遅ればせながらペドロの攻撃をかわしつつ階段に向かう。そのまま一階に向かおうとするが、ふと、後ろから殺気がしたのだ。
ボブとトニーは反射的に横に避けた。鉄製の大きな看板がいままでトニー達がいた所を勢いよく通過する。
おそらく、一瞬おくれていればアレにトマトみたいに潰されていただろう。そうしているあいだに、扉からペドロ顔がぬっとでてくる。
「ごろずごろずごろずごろずごろずごろずごろずごろずごろずううううう!」
「やばいな、実家のボイラーでもあんなに湯気出しておこりゃしねえぞ」
「ヘイトあつめ過ぎなんだよ嫌われ者。そんな事よりもっとやべえぞ。こっちはのぼり階段だ。」
もはや下りは、看板とペドロが邪魔で通行不可能だ。
「こんな狭いところじゃすぐに捕まっちまう。ジューサーに駆けられたみたくなりたくなかったら走れ!ボンバヘッド!」
「だから、肉体労働は苦手だつってんだろベイカー」
「てめぇ、それでもアフリカ系だろ!」
二人は階段を破壊しながら追ってくる怪物に追われながら階段を全力疾走するはめになったのだ。