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DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #14

 

    ◆ ◆

 

 

「大丈夫そうかい?」

暗闇にぽこりと丸い穴があいた。

穴の向こうにはシャンデリアと天井が。

明るい日射しもそこを通して差し込んでくる。

「ちょっと待ってくれよ。姉御。」

穴の縁からにょきっと一人顔をのぞかせた。

女は一応指差し確認して何かを確かめた。

「大丈夫っぽい」

それに会わせて追加3人ほどが顔をのぞかせた。

「止まってるね。」

「止まってますね」

「…嬉々一発」

「その四文字熟語意味深すぎだろJK

ひと際大きい影が穴の前に立つ。

「くだらない事言ってるんじゃないわよ。」

「旦那まだいたのかよ。」

「無銭飲食はさすがにねぇ」

「義理立てする基準…意味不明」

「今日はC(しーね)良くしゃべるわ」

「そんな事よりよく液体窒素なんか持ってたね」

「うちら、死体処理(スイーパー)もやってるから、コレあると便利なんだよ。」

「遺体を剥いてコレのプールに纏めてどぼん」

「後はトンカチでカチ割るだけで骨も含めてバラバラって寸法よ」

「今時、ノコギリでバラしてる奴の方が少ないさ。血も出るし、臭いも最悪。時間もかかるしねぇ。ま、こんな用途に使うなんざおもっちゃい無かったけどね」

 

さて、この穴を真上から見下ろしてみるとそこには金属製のバケツとそれを覗く4人のメイドと一匹の豚の姿があった。

 

DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #13

FDは磁性体による記憶媒体で要は磁気を読み込んでいるんだが、FDは今の記録媒体と違って読み込む際に磁気ヘッドに直接接触し必ず摩耗する造りに成っている。実は、この磁気ヘッドに接触する最初の部分、必ず摩耗する表面の部分にウイルスが仕込まれているのさ。磁気ヘッドが読み取りを行えばそこにはもう既に何もない。空の無害なFDが出来上がる。そしてそのウイルスも単独ではウイルスと成り得ない。特定条件下で一つウイルスプログラムを編んではその都度解体する様なコマンドが入力されている。後はパソコンが勝手にステルスウイルスをその身に作ると言う寸法さ。だから、なにも出て来ない。俺の様にこの未使用のウイルス付きFDを直接手に入れて、なおかつ非接触型の磁性体読み取りをしなければな。」

と、そのFDを彼は適当にそこら辺のボックスに放り込んだ。

「優れているのは磁性体部分の表面だけにデータを入れる物理的な加工技術にある。コレ自体はどうやったか?それこそ俺じゃわからないが、明らかに当時としてはオーバーテクノロジーだろう。また、中のウイルスも秀逸だ。その大きさはわずかワンセクタ分くらいしか無い。つまり、500バイトか、そこらだ。凄まじく芸術的なプログラミングだ。ま、手品としてはそこそこ常識的だったしもはや興味も無いが、コレを作った奴には興味があるかな。もう、飽きてきたとはいえこの世界の創世に多大な貢献をしたって話だろう?そいつぁ、中々にCOOLだ。実に変態なNEEK(キモオタ)に違いない」

 

その数ヶ月後、彼は運命の出会いをする。

かれは、そのFDの出所を追いもとめ、この電子世界の深層。マリアナウェブの最下層に行き着いた。

 

Deep webでさえ庭にしていた彼でもほぼ接触の無い世界。

量子コンピューターの世界とまでいわれるその深層で彼の人生は変革してしまう。

 

そこで、この現象の真の意味と、その目的を目にした時、彼の目の前に電子の女神が降臨した。

 

結果、彼は没落する。

その謎に取り付かれこんな極東の地にまで謎追いかけるはめになり、その上世界中からその命を狙われることに成るのである。

 

◆ ◆ ◆

 

骨の様な男が薄暗い室内で複数のモニターを眺めていた。

黒色人種と一般的に呼ばれる彼はそんな室内でもサングラスを外さなかった。

デスクに靴をはいたまま足をどかりとのせて、彼は煙草に火をつけた。ジッポの光が少し彼の面差しの明暗を濃くするとゆったりとその先端から紫煙がたゆたう。

「ああ、本当にとんだ下げマンだったぜ、糞ビッチ」

自分を魅了したその存在をそのように下げすんだのは理由がある。

ここが秋葉原で、彼がギークで、今の秋葉原が彼の趣味に合わないからである。

 

また、彼の現在の稼業にも不満があった。電子世界最強とまで言われたハッカーである自分がよりにもよって『便利屋』などと曖昧でかつ自分の能力をフルに使える職でもなく、他人の小間使いの要な事をするはめに成っているからだ。

雑魚を相手にしないなんてポリシーもどこ吹く風。今は雑魚の相手ばかりをしている。

あまりにも退屈、あまりにも惰性、あまりにも窮屈。この日本の伝統的兎小屋レベル居住環境にスーパーコンピューターといっても差し支えない程のスペックのPCと、あまたある関連機器を詰め込むと、彼の居場所などたたみ一畳分の作業スペースに、客間代わりの2対のソファーと小さなラウンドテーブル。後は共同生活社をしているどこぞファッキンラーダス(糞デブ野郎)の萌え豚オタクスペースがあるのみだ。

(まさか、兎小屋ならぬ豚小屋暮らしに成るとはな。)

あまりの人生糞展開に、さすがに飽きがどうとかの次元を通り越した彼は、何を血迷ったかSNSサイトにまで出入りする様になってしまった。

俗物化とでも言うか、過去の栄光からすれば零落著しい状態なのである。

 

(まぁ、このSNS自体の異常性に興味が無いといえば嘘に成るがな。どうやったらこんなイカレタ連中(バケモノ)ばかり集まるサイトを作れるんだか。)

と、いつも通り参加者のデータを漁っていると電話が鳴る。といっても固定電話回線ではない。PCを使っての電話だ。

ID kirimiya と表示されている。

仕事の電話だ。相手としてはとびきり最悪の類いだが、これ以上無いくらい報酬も保証されている。

 

というより、この文字が表示されて仕事を断れる人間などいない。

 

彼は諦めて通話ボタンを押した。

 

「ごきげんよう。便利屋さん」

Sound only と表示された画面から鈴の鳴る様な声がする。

幼い―が不釣り合いな程落ち着いた声が囁く様に流れる。

この騒音ばかりの街ではついぞ聞かない異世界の言葉のようだった。

「情報屋、何のようだ」

「あら、あなたに対して情報をお金に変える愚は起こさないわ。だってあなたは犯罪者(何でも知れる)でしょう?」

「仕事の依頼だろう?用件を聞いてから引き受けられる類いか?」

「そうね、話が分かる人間でとても助かるわ。依頼内容は―」

 

 

さて、この一連の事件でなにが最大の惨事かといえば、とある女が白いデブと出会ってしまい、とある女が黒いガリに仕事を依頼してしまった事だ。

それ以上でもそれ以下でもなく、後はいつも通り『自動的に』被害は拡大するのである。

『レタス抜きには手を出すな』

この街の鉄則(ルール)に抵触してしまった瞬間である。

 

DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #12

「な、なに!?何が起こってるの?」

「バカ野郎!爆弾だ!さっさと逃げねえか!」

C(シーネ)は厨房に駆け出す。のあも同時に駆け出すが、その後ろから眼帯メイドの激が飛ぶ。「のあ!あんたは私の机の上の絶縁シートと、鉄製のバケツを持ってきな。旦那、お願いだ。応急後の処理に手を貸してくれー「無理だよぉ。僕は軍事オタクじゃなくてただのアニオタなのだぜ?」―いい年してすねないでおくれよ。頭いたくなってきた。」

と、頭を抱える眼帯に「代わりに、私に―」手伝える事は?と、寄稿とした瞬間。

「あんたはさっさと出て行きな!疫病神!」

と、怒鳴られる。まぁ、確かに役には立たない。というか、あんな奴らを助ける義理も無い。私は、そのまま爆弾から逃げようと外へ駆け出した。

外へ出て走り出した。いくらか時間が経って

なにかの爆発音と共に例のメイド喫茶から煙が上がったのがちらりと見えた気がする。

 

けれど、私は引き返す事は無かった。

走って、逃げて生き残る。

 

私のやる事は実に単純だったのだ。

 

 

Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!

 

 

    ◆ ◆

 

ちょっとした噂がある。

噂があると言っても随分昔の話で、もはやその業界の人間からは伝説とよばれるほどの与太話だ。

まぁ、伝説というか都市伝説である。

それは一部のハッカーやクラッカーがみる白昼夢のようなものだというが、当時のプログラマー連中は度々その現象に遭遇していたらしい。

それが初めて確認されたのはインターネットの前身であるARPANETでのことである。この時期ARPANETに限らずまさに電子世界の創世記であった。あらゆる革新的な技術やプログラムが、BBNにかぎらずあらゆる所か振って湧いた様に投下される。開発されたプログラムはそのほとんどが完璧に近いできであったが、その中にバグの様な―構築した事の無いプログラムがいつの間にか紛れ込むのだと言う。だが、そのバグはことごとく良いバグなのだ。それ単体では働かなくとも、何か新しいシステムに馴染みやすくしたり、ソフトウェアとの互換性をよくしたり、次々と投入される技術の橋渡しをする様な、それでも結局は、バグの改善に追われる事に成るのだが、『どうしてもどうにもならない』と言った時にも、その謎のプログラムが突然入り問題を解決する。最初は同僚がいつのまにかプログラムを最適化させたり、加筆修正したりしているのだと見過ごしていた開発者達も、昼休み辺りに同様な体験をした同僚に『お前か?』と、聞かれるのだそうだ。

「俺たちの仕事にもブラウニーがついているのかね?」

などと冗談めかして言う事があったそうだ。

NSFNETでも同じく似た様な現象は時々あったが、プログラミングソフト自体の仕様や誤作動として片付けられた。

しかし、これがwww(ワールドワイドウェブ)及びサーバーとプラウザの発明、インターネット創世記になると、開発者間でこの現象が気味悪がられる事に成るのだ。

それはCERNの中で起こった。

最初にこの現象が確認された時、CERNの中ではプログラムの書き換えはスパイによる者可能性が疑われたのだ。

その為、CERN内部で徹底した調査が行われた。

だが、結局ここにいたり誰もプログラムに触れていない事がわかった。

では、最初から開発者の狂言だったのかと言うとそう言う訳でもない。

プログラム更新履歴履歴が物語っている。

 

『そのプログラム更新履歴の日付―その日の開発室には誰も出入りしていなかった事が監視カメラにて証明されたのである。』

 

そう、本当にひとりでにプログラムの書き換えは行われていた。

それが、完全にスタンドアローンなパソコンだったと言う事もあり、当時ハッキングの可能性も否定されていた。

 

ありえないのである。

 

この逸話を持っていよいよ、お伽噺の美談ではなくこの現象は怪談となった。

我々が電子通信網のプログラミングをする際謎の技術で監視されており誰かの手が加えられている。東西冷戦が明けアメリカはソ連を疑ったし、ソ連はアメリカを疑った。その後、www及びサーバー、プラウザの完成してまもなくソ連崩壊。そこから数年間この現象は度々確認されたが、インターネットの基本プログラムやシステムが完全に構築されると、途端この現象はなりを潜め始めた。

この事から、現在この現象は当時のソビエト連邦の仕業であったと推定されている。

 

しかしながら、未だにその手口は明らかになっておらず

 

この話はコレで終わりではない。

 

ボブと呼ばれた少年は、一つの天才であった。

アメリカのアリゾナで産まれた彼は小学生の時点でハッカーとしての才能に開花した。

ARPAネットにおけるハッカーの概念では、プログラムの穴をつき、それを知らしめ啓蒙しプログラムの改善を加速させるものであり、比較的悪意のないものであった彼らもボブが電子世界に突入する時期には、もはや過去のもの。ヤクザが自警の為の組織から経済的ナ暴力団への変質した様に、ハッカーは他者の利益を盗む為の悪質なサイバー攻撃の代名詞となっていた。

 彼らは、よりプロテクトの固いなおかつ機密保全が必要な相手にアタックを描ける事よりも、マヌケな一般市民から個人情報を抜き取り大三者に売りつける事にやっきになっていた。

 

だが。ボブはプロテクトの固い所ばかりを狙っていた。

別に大昔のハッカー魂などがあった訳ではない。

彼の場合、これは『ゲーム』だったのだ。

『ゲームだったので低レベルの雑魚を相手にするなど作業感がひどくてやっていられなかったのである』。

当時、幼かった少年も30も半ばになるとこのゲームに『飽き』始めていた。

ありとあらゆる政府、企業、軍の防壁を突破し、電子世界に隠されたあまたの暗号を解読し偽りと隠し事の無い世界に到達した彼には、遊び相手(強敵)がいなくなってしまったのだ。

雑魚ー今では CISも軍事NETも彼がアクセスした事にすら気がつかない。

もはやハッカーの世界で彼の噂は伝説であったが、その伝説ですら彼の偉業の1割もあてていない。そもそも発覚しないのだから、彼の偉業を誰かが知ることすらできない。彼の伝説など、彼がまだ未熟だったときの恥の塊なのだ。

そんな彼に取っては例の現象に付いても謎ですら無かった。

ちょうどその現象について話していた会話記録が残っている。

「あんなもの簡単だぜ。少なくとも最近あったCERNの手口なんて明白だ。スタンドアローンっつっても当時だって外部記憶媒体にたよっていたんだぜ?今ならもっと簡単にできたかもしれないが、当時の手口としてはFD(フロッピーディスク)に仕込みがあったんだよ。」

と、彼は退屈そうに言う。

「今で言う所の潜伏するタイプのウイルスをフロッピーディスクに仕込んでおいたのさ。あとは勝手に感染拡大。1990年以降あまり発生しなくなったのはCD-ROMや他の媒体に切り替わったからだろう」

しかし、そんな安直な罠に気がつかないだろうか?フロッピーディスクなどまず初めに調べられたはずだ。

「調べる奴がヘボかったっていえばそれまでだけどな。実はそうじゃない。ここにその例のフロッピーディスクがある。」

ボブはそれを取り出しみせる。

そんなものどこで?

「真のハッカーて言うのはハードをおろそかにしないものさ。スタンドアローンのパソコンから情報を盗むのに最も簡単な方法は、単純にそれに接触出来る人間に成る事だ。回線が密かに引いてしまうっていうのもありかな。今なら電磁波傍受でもすればもっと簡単だが、それだって近くにいく必要がある。まぁ、俺くらいに成るとそれも使わないがな。」

物理現象にまさる方法はないなどと嘯く。

「問題はこの中身だが当時の人間がウイルスとして認識しなかったのも無理は無いって話さ。これはステルスウイルスの一種だがちょっと特殊でな、もちろんポリでもメタでもない。FDの中身はどうやっても空だ。あらゆるソフト使っても解析不可能。なぜならば、そもそも中にウイルスは入っていない。しかけがあるのは皮の方さ。」

そういってかれはフロッピーディスクのシャッターを開いてみせる。