DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1 #8
◆ ◆ ◆
デブはカミロ達が出て行った後も何喰わぬ顔で食事を続けていた。左手のフォークは次の得物に向かって弛まず伸びる。
メイド達は相変わらずデブから拳銃を下ろさない。
『その右手がテーブルの下から出て来ないからだ』。
「いやだなぁ、皆で僕にかかり切りだなんてどうしたんだい?」
「ああ、『旦那』いいから、その手を挙げておくれよ。ゆっくり、そうゆっくりとだ」
「ん、わかったよ」
デブは何も持ってない右手をテーブル下からゆっくりと抜き、HANDS UPして舌をぺろりと出した。
「僕は何ももってないよ」
それを見て漸くメイド達は大きな安堵のため息とともに武器を下ろす。
それと、同時にデブはまた食事を再開した。
「本当に、冗談がきついぜ。『トニーの旦那』。あたしにタマがあったら縮み上がる所だった。ま、そんな事よりいつまでそんな所にいるんだい?フ○ラしこまれてる女じゃないんだ。さっさと出てきな」
「ふぁれがフ○ラしこまれているふぉんな(女)ですか!?痛(い)っつッ!」
と、反射的に飛び上がろうとして『私』はテーブルに頭を打った。
「おっと」
デブがあわてて皿を抑えたおかげでなんとか食べ物は無事だ。
私はテーブルの下から大人しく這い出てる。私は口に銜えたカミロのマガジンを吐き出し口を拭った。
「生還おめでとう。」
どういたしましてだ、糞やろうども。
DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1 #7
「てんめぇ、わかってんじゃねえか!だったら殺されても文句ねぇよな、このデブやろう!」
と、カミロは拳銃をデブの頭蓋にあわせ―「処理は600!」拳銃のスライドを引き「払うつってんだろ!ゼニゲバメイド!」ついに、引き金を引こうとしたとき、異変に気がついた。
トリガーを弾いた瞬間ガチリと、音が鳴る。
そこには、セーフティバーが引かれ、マガジンがなく、バレルとスライドの間の僅かな間隙にテーブルナイフが突き刺さったそれは、『どうあがいても』銃としては機能していなかった。
「なんじゃ、こりゃあッ!?」
だが、それだけではなかった。
いつのまにか3人のメイドが一斉に駆け寄りカミロと例のデブの首の両方をかっ切りに着ていた。
「そこまでだ、アミーゴ。それ以上は小指一本動かすな。いいな?」
メイドの一人―みーしゃはナイフの刃先をたてながら言う。
「兄ちゃんんん!!」と拳を握りメイドに振りかぶろうとするぺドロを「ステイだ!ペドロ!」と、カミロが止める。
「おいおい、何のつもりだ。クソメイド。公平中立はどうしたぁ?俺の愛銃までこんなにしやがって」
「さてね、あんたの銃に関しちゃ『あたしらは知ったこっちゃない』が。少なくともあたしらは『中立公平』のままさ。それにな、メキシカン。あんたは、本当に運が良かったんだ。あんたの拳銃が本日2発目なら、その時点で『あんたは終わりだったんだ』。このデブを撃っちまってたらこの場全員終わってた。」
「意味がわからねぇな。この糞デブ殺して何が問題だってんだ。つーか…」
それよりもカミロに理解が出来なかった最も大きな事は『自分』ではなく、その撃ったら『終わる』というそのデブを、こちらに駆け寄ったメイドのうち3人中2人が全力で『殺しにかかっている』という事実である。
(しかも、『あの血相のかきかた』はなんだ?震えてるじゃねえか)
「いいかい、メキシカン。あんたら余所者過ぎて『いろいろと空気読めてねぇのさ』。ここまでは、わかるかい?『レタス抜きには手を出すな』つってもわからないだろうが―とにかく、悪いがそのデブに手を出せないのは『この街の鉄則(ルール)みたいなもんなんだ破れば必ず死ぬ。絶対死ぬ』。お願いだ、『旦那。』冗談が過ぎるぜ。修めてくれ。」
もう、何の事だかわからない。
カミロはなんだか馬鹿馬鹿しくなり、早く例の女を追わなければ行けない事もあり、その糞の役にも立たなくなった拳銃をおろした。
「旦那、修めてくれ。C(シーネ)のご奉仕にpizzaも無料さ。この間仕入れたsu○uのアスカを付ける。こんな所で『抜く』のは笑い話にもならねぇんだよ。」
「いらねぇよ。んな、サービス。」
と、カミロはどうでも良くなった―しらけたと言った方がいいかもしれない。デブは相も変わらず、自分に何が起きているかもわかっていないのかニコニコとしている。その表情を見ていると、こんな一般人(パンピー)に必死ぶっこいているコーサノストラの連中が滑稽で仕方なくなってしまったのだ。
(奴が、このメイド達とどのような関係であるにしろ、『こんな店』に来ると言う事は『関係者』なのだろう。とはいえ、目撃者はそれが例えコーサノストラの連中であろうと殺す様に言われている。まぁ、遅かれはやかれ『鏖殺(皆殺し)』さ)
「おい、ペドロ!行くぞ!」
「うん、兄ちゃん。わかったよ。」
と、カミロの動きに会わせて残っていた部下達もゾロゾロと動き出す。
馬鹿みたいな事に時間をロスしてしまった。
「ところで、兄ちゃん。ココおれのお気に入りの店にしていいかな」
「いいや、弟。この店は、今日コレ限りさ」
(メイドカフェ店内でガス爆発、今日の夕方のニュースはこんなものだろう)
今生の別としては派手な方が好みだ。
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
と、扉を出る時メイドの一人が頭を垂れたがだれ一人それに反応する物はいなかった。
DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1 #6
◆ ◆ ◆
ガチャリと、扉が開け放たれたと同時に誰かが駆け込む足音。
「あの女!逃げやがったぞぉ!!!」
(ちぃ)
カミロ・グラシア―髭面の男は予想外の出来事に当惑していた。
今回の一件において『カルテル』が彼をリーダーに推したのはひとえに慎重さと臆病さ故だ。『一番失敗しない』人間であり、『一番失敗してはいけない』案件だったのである。それがまさか…。
(なんだこりゃあ、エディマーフィーの映画じゃねぇンだ。こんな三流コントあり得るのか?)
予想外の自体に、予想外の行動があいまった。資料から読み取る限り古沢美加子という人間はごくごく一般的な堅気の人間だ。典型的な日本人女性で、臆病で協調性という名の空気に怯え、行動力に欠如した生き物だ―少なくともそう考えていたはずなのに。
そうこうしている内に漸く消化器の煙から視界が開けてきた。
そこには、もちろん女はいない。
げほげほと、咳き込む部下達はだれ一人としてまだ動き出していない。
(つかえねぇ)
「おい!なにやってんだ!?お前ら!さっさと追っかけろ!このマチにスーツ姿の女が全力疾走してんだ!探すまでもねえだろ!すぐに捕まえにいけ!この鈍屑ども!」
カミロの叱咤に男達はあわてて店の外に走り出す。
(やばいな、人間一人ばらしといて、女一人も捕まえられなかったなんて知れりゃあ、俺の―いや、『俺たちの』命はねぇ。第一アレがどこかの手に渡りゃその時点で俺たちみてぇなのは全員用詰みだ。)
カミロも男達の陣頭指揮を執らなければ成らない。彼はあわてて出て行こうとするが―そこに例の眼帯の女の腕がカミロの首と股間に蛇の様にまとわりついた。その臭いはタバコの臭いと混じっているが、女のいいにおいを香している。
「待ちな、アミーゴ。お会計がまだだよ。」
「あん!?んなもん、後から―」
「金が先さ」
「うるせぇよ、そもそも、てめえらが消化器を持ち出すからこんな事にな!」
「おいおいツレないなぁ、タコス野郎。それは、なにか?店が燃えちまってもいいってのかい?」
「そのくらいの金、いくらでも」
「『そういうこと』じゃあないんだよ。カミロ。私らは、あんたを助けたんだ。あのままぼや騒ぎで火消し(消防車)でも来てみろ。ポリ公が乗り込んできて、あたしらが終わるだけならまだいいが、あんたらが逃げたとしても、あの『タカヤナギ』に目を付けられる事になる。嫌だろう?」
「それは、確かに笑えねえ話だ。で、いくらなんだよ」
「600で負けといてやる。やさしぃだろう?」
「クソメイドめ。おい、お前ら!ここには用はねぇ!行くぞ!」
と、引き上げる前に。
カミロは奥に一人この自体になってもピンクのカーテンでうごめいているアホに用事があった。
「おいこら!ペドロてめぇ!いつまで盛ってやがる!さっさと!」
カーテンを明けた瞬間に、うっ―と、カミロはそのつばを飲み込んだ。
「―へ?」
驚くメイドを尻目に
「ふご!ふごごご!ふごおおおおお!ふごっふ!(いい!いいよ!もっと叩いてください!もっと激しく!)」
と、屈強なガタイをしたペドロと呼ばれた黒い肌の大男はメイドに踏みつけられながらよがっていた。口にはギャグボールをかまされヨダレがだらだらと流れている。両腕は背中で拘束され、目隠しまでされていた。
「おい、ペドロ。お前、そんな趣味があったのか?」
その声を聞いたペドロが、ギャグボールをくわえたままのそりと立ち上がった。メイドが体勢を崩して床にどんと尻餅をつく頃には、その身長220cmの巨体は天井に頭を擦り付けながら
「ふごっ!(ぬんっ!)」
と力むと両腕の拘束具をひきちぎり、自由になった手で目隠しを持ち上げ鋭い視線をカミロに向ける。
「ふごっ、ふごごごごっ(何か、あったかのか、兄ちゃん)」
「まず口の中のもんを外してから言え!この糞弟!」
大男は、カミロの弟だ。血こそ半分しか分けてはいないが父親は同じだった。常に狡猾で知恵のまわる臆病な兄に対し、弟は体こそ屈強だが底抜けの馬鹿だった。もとはと言えば、カミロがこんなあこぎな商売に手を付け始める結果と成ったのだってこのペドロのおもりをしていたのが原因だ―と、カミロは思っている。
ペドロはギャグボールを噛み砕くと、そのベルトごとぺっと吐き出した。
「てんめぇ、兄ちゃん悲しいぞ!?昔から性欲と本能の塊みてぇなお前に、なんど女あてがっても、でかすぎるイチモツで女ぶっ壊しちまうし、だからといって、他の遊びを覚えようにも不器用過ぎてゲーム機渡せばゲームを壊す、ボールを渡せばボールを割るしか能のねぇ破壊衝動の塊ミテェなお前だったが、兄ちゃん逆にそこだけは信頼してたんだぞ!?それが、なんだ、ありゃ!変態の上情けない!」
まくしたてる兄の話の半分近くーいや、おそらく半分以上もわかっていないペドロは、耳の穴をかっ穿じりつつ、「ああでも」と言い訳をする。
どうやら、批難されている事だけは解るらしい。
「ああ、でも、そこの人がそのほうが楽しめるって」
と、弟が指差した方向には、猛烈な勢いで飯を食い。空の皿でタワーを何棟もおっ建てている豚の様な男が一人いた。傍らにメイドが『ケチャップお絵描きサービス』をオムライスに行っているが―そこはどうでもいいか。
男は弟とは違った意味でかなりの巨漢だ。120kgはありそうな脂肪のかたまり。
頭の上にスポーツ用のサングラスをつけ、一心不乱に喰っている。
「おいそこのデブ!」
しかし、その男はまるでその声が聞こえていないかの様にひたすら食べつつけていた。
「みーしゃ、のあ、C(シーネ)、場合によっちゃあんた達が止めな」
「・・・」
眼帯のメイドがシーネと呼ばれた消化器の粉末を掃除する為に今まさにモップがけしているメイド達にそう告げる。
「おい、聞いてんのか、この糞デブ!」
バンとそのデブの座る椅子を蹴り上げたカミロだったが、120kg以上に押し付けられた椅子はびくともしない。むしろ蹴り上げた足の方が痛い。
「つぅ!?」
すると、漸く自分の事だと気がついたのか、男はスパゲティをほおばりながら、きょろきょろと辺りを見回した。
「お前だ、お前!人の弟になにを吹き込んでんだ!この糞やろう!」
振り返った男は、青い目の金髪の外人だった。デブで骨格は解り難いがおそらくイギリス系ゲルマン人。着ているキャラクタープリントのTシャツにはカミロの知らないなんらかの萌えキャラが画かれその体型に引き延ばされていた。床に雑におかれたリュックからには丸めたポスターが二本はえている。これがあまりにも『型嵌りすぎた』日本のクラシカルジャパニーズオタク像だなんて知らないカミロでもその男がいわゆる『オタク』である事は理解出来た。
馬鹿みたいに無垢な瞳でキョトンとしているその顔に、怒りさえ覚える。
「どうかしました?」
と、そのデブは暢気に告げた。
「どうかしたかじゃねえよ!何、うちの弟を変態の道に引き込んでんだ!このファッキンデブ!」
「でも、兄ちゃん。結構気持ち良かったよ」
「お前は黙ってろ!」
と、弟を黙らせて振り返るとデブはすでにこちらに興味を失ったのか喰い始めている。
「お前はちいとは喰うのを止めろ!おい!?わかってんのか?この状況?ん?お前もここにいたんなら、俺たちがどういう類いの人間か解るだろう?」
「ああ、わかった。オタクでしょ?」「なんでそうなるよ!あん!?」
「兄ちゃん、俺ちょっと嵌っちゃったんだけど」
「いける口だね」
「お前は(変態)なってんじゃねーよ!」
「ついでに、僕達の用語ではこれを布教っていう。コレマメな」
「兄ちゃん、どうしよう。この人凄く頭がいいよ。おれの知らない事たくさんしってる」
「お前の知らない事の方が世の中に多いだろうがッ!」
「ついでに君たちみたいなのはDQNというぜ」
「すごいよ!この人天才だ!」
「ペドロ!つか、DQNってなんだよ!?」
「HAHAHA!不良とかヤクザだよ」
「どうしよう!おれ達DQNだよ!兄ちゃん!」
「てんめぇ、わかってんじゃねえか!だったら殺されても文句ねぇよな、このデブやろう!」