蒸れないブログ -13ページ目

DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #5

私は、テーブルの真ん中に紙袋をゆっくりおいた。

「おい」

声をかけられ、私は思わずビクリと震えてしまう。

「そういや、君は中身を知っているのかな?」

「い、いえ。わた、わたしは会社のヒトに言われて、ただ、持ってきただけ―」

「あっそ」

それだけ聞いて髭の男はすぐに興味を無くしたのか話を切ってしまった。

私は無事紙袋をおいた。

「そ、それじゃ、私帰りますんで―」

「ぼぼぼぼっぼ、僕もいいだろう!?わ、私を早く解放してくれ!!!」

優男は私の言葉にかぶせる様に叫ぶ。

しかし、そのやり取りに興味は無い。私は即座に帰るだけだ。私は振り向き出口に走ろうとした瞬間。髭の男が。

「メイド、600だ。」―「あいよ、まいどあり」―パン

一つ乾いた音がしたと思ったら静かになった。

私はおそるおそる、さっきまで騒いでいた優男を見た。

血を流して倒れている、

血が流れている場所は頭だ。

頭頂部から血を流している。

鼻をくすぐるこの臭いー夏の花火の後の焦げた様な硫黄の臭気。それが髭面の隣に付いていた男の手元から流れてくる。この煙草の臭気に包まれた部屋でさえ如実にわかる『人殺しの臭い』だ。

「あ」

小さな声が出た。

―死んだ。あっさり殺された。

目の前で死んだ。ヒトが殺された。

「言っとくが、店の清掃代は別料金だよ。ノアちゃん、床に血がこぼれないうちにもってって」

「は~い」ずりずりと引き摺られていく田島。

私には解らなかった。さっきから酷く寒い。冷や汗が出過ぎた性だろうか。心臓も止まっているんじゃないだろうか?ただただただただ、わからない。

この部屋に入ってから、時間にして15分もたっていないだろう。でもいったい『何時間』たったのだろうか?なんで、こんな目に遭っているんだろうか。あの田島も何故殺されたのだろうか。特に意味なんてないのだろうか。わからないわからないわからない。なんで自分がここにいるのか解らない。ただ、次は私なんだと、それだけは解る。

「悪いが女。あんたも死ななきゃならない。この荷の存在とココで何があったを知る人間は『一人だって少ない方がいい』」

当たり前に死んだ、当たり前に殺されるイカレタ世界。

『古沢美加子』―じゃ、どうにもならない。

だから私は『古沢美加子』の殻をかぶったまま『古沢美加子』を止めてしまった。

 

ああ、なんと言う事だろう。―『演技不足』だ。

 

しかたがない。

「女の方はどうせだから遊んでから殺(バラ)すか。まぁ、アレホの奴もお気に入りだしな。」

「た、助けて」

と、私を案内したメイドに声を掛けたが、彼女はニコニコしたままで『ごめんね~、コレも私達の商売なもので。どうせなら楽しみなよ~ばいば~い』などと、手を振りのたまう。

(本当に、本当にこのクッソメイド!)

さきほど、私のお尻をさわったであろう、アレホと呼ばれた後ろの男が私の手首をがっちり掴み、身体ごと小脇に抱えられたかと思うと、そのままピンクのカーテンの向こうへと私を連れて行こうとする。

「嘘っ!やだ!嫌だってば!このレイパああ!!誰か助けて!」

私が無駄に暴れるのを見てどっと笑いが起こる。

メイド達も何故かニコニコしながら「楽しんでくれば?」と手を振っている。

(クッソ!私の初めてこんなとこで終わって、それが人生最後の思い出だっての!?冗談じゃない!)

嘲笑された性だろうか?助けてくれとの言葉に冷やかな対応を取った糞メイドの性だろうか?この時の『私』は、逆に怒りの様な物に支配され、徐々に体の熱が戻ってきていた。小脇に抱えられ、無情にも手を振るその先にちょうどテーブルにサーブされつつあるトレイの上の『ウィスキーボトルと、アイスピック』が目の前を通り過ぎ―「こんのぉおおおお!」私はそれをひっつかみアイスピックを『相手の股間』に突き刺した!

「がああああああああ」

と、のたうち回る男にテキーラボトルの中身をぶちまける。

「あんらぁ~それレイソルよん。お高いんだからぁ」

と、笑いながらタバコに火をつけようとするそのメイドのジッポを奪い取る。

『私は何の躊躇も無く火をつけた』

「この馬鹿女!」

C(シーネ)ちゃん、火消しよろしく~」

すると、消化器を持ってきたメイドが火のついた男に消化剤を放射した。

「おい!ちょっと待て!オウワッ!?」

放射の憩いで霧散する消化剤でたちまち閉め切った室内は一瞬で視界ゼロの世界に変わる。元からタバコの煙でガスっていた室内だ。

(しめた!)

ガチャリと誰かが換気の為だろう出口の扉を開けた。

 

私はそこに向かって駆け出した!

 

DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #4

気づけば、あまりの自体に、顔から血の気はさっと退き、汗がだらだらと滝の様に流れ、その上口は「アババババ」と分けの解らない奇声を発しつつ戦慄いている。

と、その中に明らかに場違いなスーツ姿で73分けの優男が今にも泣きそうな顔をしながらチワワよろしく震えていた。

―まぁ、無理も無い。明らかにアレは人生最大の危機、地雷原の中の、いや、もう踏んじゃって足を上げれなくなった人間の顔だ。

ちょっとでも動けば―容赦なく死。

いえ、ヒトの事言えないけれど。

と、その優男と目が合った。

(お願いです、私関係ないヒトです。きびすを返して今すぐ帰ります。声をかけない―

 

「やぁ!待っていたよ!コルソ・メディカルの子だね」

 

―クソォおおおおおお!!)

その声かけと同時に、辺りは一気に静まり返り男達の視線が一気にこちらに集まる。

そのどの眼光一つとっても明らかにヒトを殺している眼だ。普通じゃない。

正直、この年になってもクラブにさえ言った事も無ければ、基本高学歴で私立の温室栽培だった私は、『これら』より数倍可愛げのある『不良』とすら関わった事は無く、免疫も無い。

ただただ怖い。

そしてその実感は正しい。蛇に睨まれたカエルみたいに思考自体が恐怖に縛り付けられている。私に取っては、『彼らに睨まれる』ただそれだけで十分に暴力的なのだ。

「その、頼まれている物あるだろ!はや、早く出してくれないか!?はは、ははは」

「あの、吉川支店長は?」

「あ、あああ、そ、そうか、よ、吉川は2日程前から行方をくらましていてね。今日知ったんだが、他界されたそうなんだよ。い、いんやぁ~、惜しいヒトを無くした。ほ、本当に惜しいヒトだったよ、いい上司だった。仲が良かったんだ、頼りにもされた。つい最近まで本当に感謝してたんだぜ?おかげでこんな眼にあってるけどなッ!ふざけんなッ!糞ッ!あのくそ野郎!」

と、ダンダンと地団駄を踏む様に男は床を蹴る。その瞬間刃物がピトリと、男の首元にそれがくっついた。

「ヒィ!!」

情けない声と同時に後ろにのけぞる男。

「お客さん、うるさくしちゃあ、お店のヒトに迷惑だ。あと…」

と、ナイフを優男にあてがった男は今度はこちらに目線を移した。

気がつけばごつい男が三人程私を取り囲む。

わたしはおののき後ろに退いたが、背に「どん」と、堅い感触。

「ごめんなさい」と、反射的に謝ってしまう典型的日本人である自分が憎らしい。振り返ると、後ろにはよりごつい男がいた。

「ひぃ」と、変な声が出てしまった。

誰かが、私のお尻を触ったのだ。

私は反射的に体勢を崩しながらも前に出てしまう。

そこで、周りからクスクスと笑いが起こる。青白い顔した私のうぶな反応を楽しんでいるのか。

(なにがおかしいのよ!)と、思いつつも、引きつった愛想笑いをする。生存本能と言う奴だろうか、こんな状態に成っても自分は媚びへつらいの笑いが出来る物なのかと今となっては呆れもするが、この当時の私の頭の中は

―なにこれ、こわいこわいこわいこわい。

それだけだったのだ。

と、そこに男のうちの一人ががっしりと私に肩を回して完全に逃げられなくした。最悪ー。

「本当に待ってたぜ。状況は解るかな?」

「あ、あなた達は、なにものなんですか?」

「おいおい、どうでもいいんじゃないか、そんな事は。なぁ」

まったく、その通りだった。むしろ知らない方がいいに違いない。

「君に取って重要な事は、

逆らったら『アブナイ』。

怪しい行動をしても『アブナイ』。

大声をだしても『アブナイ』。

それだけさ、さぁ、さっさとその紙袋をおきな」

ナイフをあてがって髭もじゃの男が薄気味悪く笑いながら言う。

大声って、絶賛後ろのほうでピンクカーテン越しに動いている二つの影は、なんかケモノみたいな声上げているが、そっちはスルーなんだろうか。

いや、あまりの出来事に混乱しているのだろうか、全く現実味のないこの空間で、わたしはそんなくだらない事を考えている。

どうやら、この自体の原因は『あの糞上司から渡されたこの紙袋』にあるらしい。いままで気にしなかったが、一体私の紙袋に入っている物は何だって言うんだ。ダイヤモンド?金?麻薬?政府の裏資料?いやいやいや、なんでもいい。何であろうと厄介な物に違いない。

「おい、そこのタコス。うちでヒトかっ捌くときは有料だって忘れたのかい?死体処理に600、マグロにしてからなら400で請け負うよ。マグロにするなら奥の『洗い場』でやんな」

そこに髭面に気怠そうにカウンターの女が声を掛けた。胸も身長も大きく異様に髪が赤く長い事も目立つが、なにより片目の眼帯が目立つ。明らかにかわいいを意識した他のメイドとは違う奇妙なメイド。他のメイドにも外人の血がまじっていそうだが、このデカ物は本物の白人だろう。

「もうちっと安くならねぇのか。故国(くに)じゃ一桁違うぞ。」

「日本はゴミの分別には厳しいのさ。アメリカドルで前払い。耳を揃えて出しな。一銭もまけやしないよ。アミーゴ。」

当たり前の様に殺人計画の会話を日常会話の延長で語るイカレタ世界。

私は入り口付近の例のメイドに呟く様に語りかける。

「あ、あんな事言っちゃってますけど。お、お金払えば許可するんですか?」

「当たり前さ、メイドの本懐はハウスキーパー。家の中のゴミが例え死体だって業務範囲内だよ。こちとら、プロだからね」

と、いつの間にかその口に煙草をくわえながら言う。

「は、早くその紙袋おけよ!ぼぼぼ、僕が、こ、この田島浩平が死んだらどうする!」

(知るか!)

とはいえ、田島とか言ったか―吉川の代理(かわり)の言う通りココは素直に渡した方が身の為か。

「わ、わかりました」

わたしは、おっかなびっくりではあるが紙袋を差し出しにゆっくり歩き出す。もちろん両手はハンズアップ。

(とりあえず帰ろう。とにかく帰ろう。早く帰ろう。私は何も見なかった。メイド喫茶にも行かなかった。秋葉原にも来なかった。拳銃、麻薬、売春、賭博全部知りません。多分殺されちゃった吉川さんも含めて何も知りません。きっとすべて夢で、みちゃいけないなにかで、だから兎に角ココから一刻も早く逃げなきゃ。コレさえ渡せば、コレさえ、渡してしまえば―)

私は、テーブルの真ん中に紙袋をゆっくりおいた。

DADA ~KuRU/kurU RE; SS~ Episode1  #3

『メイド喫茶 のすとらぶChuChu♥』―そこは、地下一階上に四階のビルの3Fにあった。

「メイド喫茶って、どうしてこんな所で」

いや、取引先にそう言った趣味のヒトがいて…というのも変な話か。

或はここで別の商談が?そういえば、先月新しくオフィスビルできたのよね?UDXだっったか。先ほど親に手を引かれた子供が、その前で行われる戦隊ヒーローのイベントバルーンへとお面をつけて歩いていくのをみかけたところだ。

―何故か、同じ表情、同じ格好の『大人』のもいたが。

けれどUDXには第一銀行はオフィスに入っていないし、出資先ってことかもしれない。

(だとしてもメイド喫茶ってチョイスはないわよね。)

無理矢理何か納得のいく理由をつけようとしたが無理な話だった。

とりあえず、入店してみる事にする。

正直、この手の店に入るのは初めてだ。多少ドキドキしながらもコレから会う人物に対して不安を抱かずにはいられない。

「お帰りなさいませ、お嬢様!」

と、やたらフリフリとしたフリルを翻しながら可愛らしい少女が出迎えた。

自然で陰りのない笑顔を覗かす彼女は、その服装とも相まって実年齢より幼くみえる。

(―かわいらしい)というのが正直な発想だ。

異常だとも思うし、奇妙だとも思うが、それらしくあつらえてそれらしく振る舞うかたちのものに単純にそう感じてしまう。

(あと10才若かったらやってみたかったかもね。)

などと、少女趣味とはほど遠い、ぱっちりとしたスーツで武装した今の自分を顧みて思う。

「それではお嬢様、合い言葉はなんでしたかにゃん?」

(にゃん?・・ああ、そう言えばネコミミをつけているから)

しかし、合い言葉とは何だろう?少なくともメモにそのような物は無かった。京都にありそうな一見様お断りの店で、合い言葉が無ければ入店できないのだろうか?

「ごめんなさい、初めてで、その、合い言葉は知らないのだけれど」

「ええぇ~、でしたらうちのお店は入れませんニャン。ごめんなさ~い」

甘ったるい声で断られる。が、そうにも行かない。何しろ、何かの間違いだとは思いたいが、ここに取引先の人物が既に待っているかもしれないのだ。

「あの、東京第一銀行の吉川支店長って方来てませんか?預かり物もあるし、なんとかならないかしら」

と、例の紙袋を見せると途端目の前の少女の目つきが変わった…ような気がした。

「ありゃりゃりゃ、このみーしゃにゃんにプレゼントかにゃ?」

と、中身を覗いて

 

「・・・・」

いよいよ苦虫をかみつぶした様な顔を隠さなくなった。

あれほどまでに可愛らしい仕草をしていた少女が痰を床に吐きかけて毒付いた。

「っち、そういうことか。どうりで、今日の客層は腐ったジャガイモみたいな面だと思ったぜ」

そのあまりの変わりようにただただ圧倒されつつも、なにかしら進展があるらしい。

「あの、ええっと結局吉川さんは」

「あぁ~、確かにそいつぁうちの常連なんだが…。まぁ、そろそろ『ウジ』のたかってる頃合いか。安心しな、後任の優男がちょうどいるぜ。タコス野郎としっとりしちまったもんだから生まれたての子鹿程度にも足腰立ってないが、まだしゃべれる状態さ」

「はぁ」

正直なにかのたとえ話なんだろうが、さっぱり何の事やらわからないので生返事を打つしか無い。

「で、それで?」

「それで、とは?」

「入るのか、入らないのか」

「え!入っていいんですか!?」

「・・・・あんた、ヒトの話聞いてた?」

私は首肯する。

聞いていたは、聞いていた。何を言っているかは解らなかったが、少なくともこれは私の栄転後初の仕事なのだ。何も得ず帰るわけにはいかない。

「わかったよ。ったく、日本人の社畜精神は自分のタマまで捧げちまう物だとは恐れ入ったよ。」

と、大きなため息をつくメイド。

それにしても、今更ながら、このメイド態度悪過ぎじゃないでしょうか?あと、もしかして日本人じゃないの?

「さ、入りな」

と、ようやく扉が開かれ招かれる。

「始めにいっておくが、ウチの店は『真っ当な』萌え産業さ。鉛玉の押し付け合いはお断りしている。それでも玉転がしが好きな馬鹿にはあたしらからじきじきに体重が5キロ増えるまで御奉仕(喰らわ)してやる『ことになっている』。そのつもりでいな。けど、それ以外なら基本的に中立さ。中立って意味は解るか?邪魔もしないが助けもしないってことさ。基本的に店の損害に成らなければ『あんたの生き死ににも相手の生き死ににも』全く興味はない。生者万人に平等Hallelujah(主を讃えよ)ってやつね。」

突然語り出したメイド。内容は入店説明みたいな物だろうか?相変わらず、鉛玉がどうとかたとえ話がおおいが・・・気のせいだろうか、私の『生死』について語ってはいなかったか?

「だが、あんたがいくら螺子の飛んじまったイカレトンチキだろうと、メキシカン・マフィアのカルテルの中に放り込むとなると」

え?今マフィアっていいませんでしたか?

「男をまたぐらに迎えたかも怪しい様なウブがレ○プされて死ぬってのも面白くない。いいかい、中立ギリギリだがオメルタの誓に基づきアドバイスは一つ。」

扉が開く。

その瞬間、一気に肺臓が腐食るかと思うほどの煙草の煙に嗚咽まじりに咳き込んだ。

「『ガリは触れるな、デブにはとことん優しく。食事の邪魔は絶対しない。そしてなにより『レタス抜き』には手を出すな』それさえ心得ればこの街ではワンチャンあるかもよ。」

にやりと分けの解らないことを言う。

ヤニの匂いになみだで歪む視界が漸く煙の向こうを捉え出す。

そこで、ようやく私は先ほどまでの不穏な言葉数の意味を理解した。

 

(いや、だけど、まさか…ここ、絶対メイド喫茶じゃない。ていうか、ここ日本ですよね!?)

 

室内には、明らかに外国人と解る彫りも深ければ図体もでかい入れ墨姿の男達が紫煙をまき散らしながら、メイドを侍らせ、あまつさえ見せつける様に自分の拳銃(えもの)を腰にぶら下げて、酒と賭博にふけっている。なんか、奥の方ではピンク色のカーテンの向こうでやたら躍動的に動いている人影と嬌声。

―売春

―賭博

―風営

―銃刀法

奥で吸ってるパイプみたいな物は絶対水煙草なんて生易しい物じゃない。

もう、何処から突っ込めばいいか解らないが

(これのどこが真っ当な萌え産業よ!)